特集

2011年を振り返って 2012年国際協同組合年に臨む
JA全中・萬歳章会長に聞く

一覧に戻る

【JA全中・萬歳章会長インタビュー】協同組合の行動力で時代を拓こう TPP参加断固阻止、来年がヤマ場

・正念場の1年に向けて
・震災で示した協同組合の行動力
・再生可能エネルギーを考える時代に
・地域から農業復権
・激動の時代こそ人づくり

 東日本大震災、原発事故、そしてTPP交渉問題と激動の1年だった2011年。それらが突きつけた課題は国際協同組合年の2012年に大きな課題となる。8月に就任した萬歳章JA全中会長に今年を振り返り、来年に臨む決意とJAグループ役職員が取り組むべき課題を聞いた。

◆正念場の1年に向けて

 ――今年の初め、TPP(環太平洋連携協定)は国のかたちに関わる大問題であり、最大の焦点になるとJAグループは捉えていました。しかし、大震災、原発事故が発生し、農村をはじめ国土そのものが大打撃を受けました。最初にこの1年を振り返っていただけますか。

JA全中・萬歳章会長 日本はWTO(世界貿易機関)という枠組みのなかで貿易ルールの交渉を続け、農業の多面的な機能や多様な農業の共存を主張し、しっかり関税で守る重要品目の十分な確保などの実現をめざしてきたわけです。
 ところが昨年10月、菅前総理が唐突にTPPを言い出した。これは例外なき関税撤廃というまさに過激な話であって、われわれとしては大変な驚きだった。国際競争力がないから、とくに重要品目には高い関税をかけているわけで、関税ゼロでは農業が壊滅してしまう。これこそ大変だ、とわれわれJAグループはTPP交渉参加断固阻止の運動を始めました。その後、今年になって3月11日、それこそ国難といえる東日本大震災が発生し、それに付随して原発事故と放射能汚染問題が発生しました。日本の食料を担っている東北が壊滅的な被害を受けたわけです。そこで一旦、TPP議論はストップする状況になり6月に結論を出すという政府の方針は先送りされました。しかし、米国をはじめとした外国との関係を考えてのことなのか、野田首相は11月に関係国との協議に入ることを表明した。8月に全中会長に就任したわけですが、こういった意味で大変な時代に就任したという思いです。


◆震災で示した協同組合の行動力

 ――大震災からの復旧・復興への取り組みはどう考えておられますか。

 被災地に対してはJAグループ一体となり協同組合として復旧・復興を支援することを最優先課題としてきました。
 たとえば各地の女性部がおにぎりをつくって直ちに救援活動をするなど、協同組合とは本当に助け合いの組織だなということをひしひしと感じました。全国から大変な支援が集まってありがたい思いです。
 今回の支援活動を見ると、行動力、これを国内の民間組織としていちばん持っているのが協同組合だと自負する思いがあります。
 震災の経験で社会に「助け合いが大事」だといった価値観の変化が起きていますが、これもJAグループの評価につながっていると思います。復興にはまだまだ時間を要すると思いますが、一生懸命支援をしていきたいと思います。


◆再生可能エネルギーを考える時代に

 一方、原発は安価な発電だと推進してきたのでしょうが、後始末もできない事態になってしまった。安全神話があったわけですが、地震列島でありながら太平洋側にあのような原発を作り上げた。大震災は想定外だったといいますが、想定あってしかるべし、だと思います。
 後始末がなかなかできない状況のなか、将来は徐々に原発をなくす方向にいかなければならないという国民的な考え方も出始めています。
 また、あわせて、地域の持っている資源を活用するという流れが出てきました。例えば、小水力にしても風力にしても地方にあるわけで、農村での再生可能エネルギーによる発電はさまざまな波及効果もある。これを考えていく時代になったのではないかと思います。


◆参加断固阻止へ運動力を

 ――TPP参加断固阻止に向けた運動では1000万人を超える署名が集まりました。にも関わらず政府は関係国との協議入りを表明。今後、さらに運動を強化していかなければなりませんが課題は何でしょうか。
 
 署名は1167万人集まりました。新潟県でも235万の県民のうち47万人が署名をしましたから、6人に1人の割合です。
 これはやはり農、食が大事なんだという理解が地方には十分にあるということを示していると思います。
 それからJAというのは役職員一体となって運動を進めるという組織ですし、地方ではいちばん信頼されている組織だと思います。改めて思うのは「信頼なくして協同組合なし」ということです。そのうえで食、農というものに対して理解が進んだということだとい思います。
 こういう運動に各地で取り組むなか、地方自治体の議会の8割がTPPに反対か慎重の決議を採択し、国会議員でも過半を超える議員がTPP参加反対請願の紹介議員となっています。衆参の農水委員会でもTPP交渉に関する決議をするなど、政治家をはじめとしてみなさんにがんばってもらっているところだと思っています。
 それから医療などの分野にも連携が広がり力強いかぎりです。TPP交渉の分野は24もあります。農業だけではなく、国のありようを変えてしまうような問題も多くありますから、今後もいろいろな業界のみなさんと連携し、本当に国民的な議論をしなければなりません。たとえばすでに輸入牛肉の月齢制限緩和の動きが出ていて、どうもTPP交渉の前座役をさせるような流れを感じます。まさに情報開示をし国民的な議論を十分しながら判断をしなくてはなりません。野田首相もそう発言されていますよね。そこに期待しますが、いずれにしてもわれわれはTPPによって日本農業が壊滅するという危機感を持っています。断固交渉参加阻止に向けて来年はまさに山場になると思います。


◆地域から農業復権

 ――TPP議論の一方で農業再生に向けた議論も政府で行われました。JAグループも農業復権に向けた提言を出しましたが、そのポイントを改めてお聞かせください。

 政府が決めた基本方針(「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」)の議論では、筒井農水副大臣や内閣府の古川国家戦略担当大臣もこれはTPPとは関係ないと明言されていることを改めて強調しておきたいと思います。そのうえでわれわれは農業復権の考え方を出しましたが、そこでは強い農業とは何かという考えを示しました。それは地域資源を最大限生かした農業であるということです。耕作放棄地が40万haもあるわけですから、それを解消しながら日本の持っている資源を最大限に活用するということが必要です。
 そして形態としては集落営農、法人、個別経営体とさまざまあっても、それぞれの地域のなかで責任を持った対応をしていこうと提言しました。第26回JA全国大会議案では、この農業復権の考え方に厚みを持たせなければならないと思います。


◆激動の時代こそ人づくり

 ――会長は就任以来、協同組合運動にとって人づくりの重要性を説かれてきました。国際協同組合年を迎えるにあたって役職員が取り組むべき課題は何でしょうか。
 

 今も優秀な人材が集まっていますが、社会を変えるためにも私は役職員一体となった人づくりがこれからの協同組合にとって大事な要素だと思っています。震災を経て社会の価値観に変化も見られますが、一方ではTPPのように市場原理、競争主義が強調されますし、また無縁社会といわれる状況もあります。
 そうではなく、お互いが共生する助け合いのなかで生きていくという考え方を広めていかなければなりません。来年は国際協同組合年ですが、これを機に協同組合の認知度を高める取り組みを行っていくことが大事です。その一環として、役職員一人ひとりが協同組合の素晴らしさを発信していくことが重要ですが、そのためには、われわれも協同組合の基本を改めて熟知しなければ理解を求めることはできません。まさに役職員が、協同組合とはこういうものだよ、ということを理解しながらPRをし、人づくりもしていく、これも来年の大きな仕事になると思います。

(2011.12.27)