特集

地域と命とくらしを守るために 次代へつなぐ協同を
出席者
林正照氏(愛媛県農協中央会会長、全国農協中央会監事、第26回JA全国大会議案審議会委員)
金子光夫氏
(周南農協経営管理委員会会長、山口県農協中央会副会長、第26回JA全国大会議案審議会委員)

司会
白石正彦氏
(東京農業大学名誉教授、2012国際協同組合年全国実行委員)

一覧に戻る

第26回JA全国大会に向けて―【座談会】大会議案の意義を考える  林正照氏・金子光夫氏・白石正彦氏

・10年後を見据えた戦略と実践課題を明示
・地域内の広報活動強化で消費者の理解促進を
・多様な担い手や地域住民を中心に農業戦略を
・行政とも一緒になってブランド化・6次産業化を
・JAが農業経営することも視野に入れて
・拠点を充実し一歩先をいく指導を

 第26回JA全国大会の議案は現在、全国で組織討議が進められているが、今回の議案の特徴は「次代へつなぐ協同」をメインテーマにすえ、10年後の「めざす姿」を提示し、それに向かってどのような戦略をたて何を実践していくのかを明示したことだといえる。この大会議案の作成にもかかわった林正照JA愛媛中央会会長と山口県・JA周南の金子光夫経営管理委員会会長に、JAでの実践を踏まえながら、大会議案の意義について語り合っていただいた。司会は白石正彦東京農大名誉教授。

 地域で存在感のあるJAを築く出発点に
いま何もしなければ10年後には何もない


くらしを中心に現場から考えることが大事

出席者
林 正照 氏

(愛媛県農協中央会会長、全国農協中央会監事、第26回JA全国大会議案審議会委員)
金子光夫 氏
(周南農協経営管理委員会会長、山口県農協中央会副会長、第26回JA全国大会議案審議会委員)

司会
白石正彦 氏

(東京農業大学名誉教授、2012国際協同組合年全国実行委員)

◆10年後を見据えた戦略と実践課題を明示

 白石 今回の大会議案は「次代へつなぐ協同」をメインテーマに、10年くらい先を展望した形で提起されているのが特徴ではないかと思いますが、林会長から議案への評価を…。
  大会議案や資料をみると情勢課題がよく整理され、さらに第25回全国大会と東日本大震災の教訓を踏まえた農業の復権に向けたJAグループの課題、農家組合員の次世代への対応、JAグループとしての提言を提起しています。
林正照氏 25回大会のキーワードは「新たな協同の創造」、秋の26回大会は「次代へつなぐ協同の実践」と方向は一緒ですが、前回の大会がイメージした「新たな協同の創造」の具体的な実践方策を明示したのが今回の議案だと思います。とくに次世代をターゲットに明確な方針を打ち出していることが素晴らしいと思います。
 その中でも私が評価しているのは、まず、東日本大震災や原発事故による放射能汚染によって日本全体に重い影響を及ぼしましたが、そのなかで、協同組合の原点である「一人は万人のため、万人は一人のため」という助け合い活動、絆の協同に対する認識を新たにしたことです。そして、生死を共にした「戦友の結合力」、目標を一つにして活動していくことで組織がまとまっていく、そうした人とのつながりが表現され、10年後をとらえた戦略が明示されていることです。
 もう一点は、いままではJAの経営収支が悪いので支所を統合・撤退したりしてきました。そのことで、「組合員が逃げる」のではなく、「JAが逃げて」きました。それが今回の議案では「拠点を重視」して生産者や組合員に対応しなければならないと打ち出しています。従来の経営主義から現場主義にたち、組合員の目線で実践していこうというわけで、この点を私は一番評価しています。
 金子 第25回大会の実践では、取組みの格差があったことを前提に大会議案が作成されたと思います。
 組織の一番の命題は永続性ですから「次代へつなぐ協同」ということで、ようやく具体的な取り組みができるようになったと思いますし、将来を見据えた方向性がでてくるのではないかという評価をしています。
 議案では地域農業戦略、くらし戦略、経営基盤戦略が3本柱になっています。とくに農業では、多様な担い手そして地域住民の役割をどう活かしていくかが随所に書かれています。林会長が指摘された「現場主義」もそうです。そういう意味で今回の議案のメインテーマはいいと思います。もともと農協は事業エリア制限がありますから、原点に返ったという気もしています。


◆地域内の広報活動強化で消費者の理解促進を

 白石 今回の大会議案では「10年後のめざす姿」という長期の展望からフィードバックして、いま何をすべきかを提起しています。
 そして大会議案をみると、次頁の図のように3つの戦略とその実践事項とは別に「将来的な脱原発に向けた循環型社会への取組みの実践」と「国民理解の醸成」が提起されていますが、これについてはどういう議論があったのですか。
金子光夫氏 金子 TPP問題で明らかになったことは、協同組合や農家に対する国民の理解が薄いことがいまの状況をつくっていることです。私たちの運動をもっと知ってもらうために、全国的な広報活動だけではなく、地域内の広報活動をしていくことが重要です。JA周南では年3回発行している広報誌を新聞折込で地域に配布しています。そうすると地域の人たちの反応がよく見えるようになりました。
  原発問題については、近い将来に「脱原発」にすることだと思います。家庭向けには太陽光発電が一気に伸びる可能性を秘めていますが、代替エネルギーの開発には時間がかかるでしょうね。


◆多様な担い手や地域住民を中心に農業戦略を

白石正彦氏 白石 「地域農業戦略」についてですが、金子会長は現場での取り組みでどのようにお考えですか。
 金子 JAごとに地域性とかもっている特性が違います。同じ県内でもいろいろなJAがあります。そしてある程度大規模、中規模農業ができるJA、JA周南のように小規模農家ばかりだけど、実は山口県で一番の消費地を抱えています。各JAがそうした地域特性をどう理解して取組むかが一番重要だといえます。
 私は基本的に農業だけではなく、くらしを中心に考えたいです。くらしの一部が農業であり、信用・共済事業であり、経済事業だと思っています。そういう観点から考えると、円高を反映して自動車産業が海外に生産拠点をおく。そうすると下請けや関連する中小企業が成り立たなくなり、雇用がなくなり、地域が疲弊するという悪循環になる。これと同じようなことを農業でもやったらまったく一緒のことになります。そういう悪循環を断てればくらしはよくなると思います。
 JA周南でいえば、多様な担い手や地域住民を中心とした農業戦略を立てていく。とくに販売では基本的には地域内流通することで、経費を落とし農家の所得を上げていく。そのことで新しい地域農業をつくっていく、それが基本的な考え方です。
 白石 農家は小規模ですが県内一の消費地でもあるわけで、そうした地元にある潜在的需要に応える農業のあり方をどう考えるかということですね。そのときにどのような担い手づくりを考えていますか。
 金子 基本的に山口県も就農人口の平均年齢が70.3歳で、耕地も中山間地が70%占めているので、集落営農に取組んでいますし、法人も100超あります。ところがすべてのJAがそれで成り立つかといえば、私のところは成り立ちません。多様な担い手の所得をあげるためには、直売所とか地域のスーパーとの連携による産直あるいは学校給食など地域で販売していく。その販売を強化し農業生産意欲をあげていくというやり方を考えています。


◆行政とも一緒になってブランド化・6次産業化を

 白石 JAえひめ南という地域を考えたときには、どうですか。
  JAえひめ南は中山間地が多く、柑橘類が80%、畜産、野菜、米という順番です。そうしたなかで、愛媛県全体でも最近は耕作放棄地が増えていることが課題なのですが、中山間地での柑橘栽培は急傾斜での営農作業となり、高齢者には困難であることが第一の原因です。
 その中で議案に掲げられた3つの戦略をどう実践していくのかというと、柑橘類中心に進めていますが、担い手という位置づけはありますが、実際には後継者がいない、これが課題です。そして県や行政などとも一緒になってブランド化とか6次産業化に取組んでいます。県知事には農産物PRのトップセールスで香港や台湾、シンガポールへ飛び回ってもらったり、JAグループの陳情に応え、ブランド牛の導入にも取り組んでもらっています。
 柑橘類は共販が強いわけですが、消費者は「顔が見える関係」を望みますから、そうしたニーズに応えるような販売をもっとやっていく必要があると思います。
 それから規模的にはまだ小さいですがファーマーズマーケットが順調にいっています。JAで「よかったね」といわれるのはファーマーズマーケットで、高齢化のなかでこうしたものが要望されているのだといえます。
 組合員の幸せの実現には、JA役職員が常に組合員の目線で考え、行動することが大事だと思います。


◆JAが農業経営することも視野に入れて

 白石 大会議案では、現場主義といいますか、支店あるいは地域の営農センターを拠点にしながら取組んでいくことが明示されていますが、地域農業戦略におけるJAの内部機構に対する工夫をどのようにしていますか。
 金子 販売面では営農指導員の力が大きいわけですが、この4月から営農指導員を本所に3人集め、全地域を広域的に対応させます。そして、営農センターには「担い手プランナー」といいますが、作付誘導とか担い手の問題に専門的に取組んでもらうように機能分担しています。
 白石 新しい担い手としては、UターンとかIターンの人もいるのでしょうか。
 金子 ある地区では40歳以下の人が40数名定住しています。定住できるような地域をつくらないと、いくら集落営農を推進しても、5年後にはその後の担い手がいないということになります。そういう意味も含めて経営体といえるところには専門的に広域的に農業経営を指導していかないと、成り立たないといえます。
 白石 これからの担い手論は抽象論ではなく、40歳以下のこの人の場合は、こういう特性をもっているからこう支援すれば持続的に農業をやっていけるというように、人に焦点をあてた営農指導が必要になっているような感じがします。
 金子 農業法人に入る人も、独立していく人もいますが、最終的にはJA出資法人かJAが農業経営をすることまで研究していきたいと私は考えています。
  愛媛も山口と同じで、すでに担い手への集積とか集落営農の法人化、JA出資型農業法人の設立をすすめています。しかし、水稲はいいのですが、柑橘類は非常に難しいです。柑橘類は1年休んだら荒れてどうにもならないので、耕作放棄地をJAが借受けて、みかんづくりをやってくれないかといってきました。やっとこの間の農地法改正等でそれができるようになりましたが、その場合、大事なことは、JAが農業経営するだけでなく、研修事業などを通じ、若い農業者を確保・育成する役割も担わなければならないということです。
 そうした取り組みで、放棄地を増やさないようにすることが大事だと考えます。


◆拠点を充実し一歩先をいく指導を

 白石 支店を拠点といっていますが、農畜連携とかコストを引き下げてできる小さい営農のネットワークはできませんか。
  地域のなかでということを考えていかなければいけないのかということも、議案作成のなかでは議論をされています。
 JAえひめ南の場合は、拠点に営農センターを置いていますが、今後、それが非常に大事になってきます。地域の中心にJAがいなくて、集落とか法人だけになれば競争原理だけになるからです。
 地域のことすべてにJAが絡むためには、拠点を充実して、専業農家よりも一歩上に出た技術指導や経営指導をできるようにしないといけない。人がついてくるのは、その人より一歩ぬきんでているから頼ってくるわけです。そうした人的なレベルと同時に、組合長などJAトップの先見性と決断力が一段と求められることになります。
 白石 どうすればコストが下がるのか、どうすれば有利に販売できるのかを判断するのに必要なことはまずデータです。そういう意味ではJAも具体的なデータで指導していくことが必要だと思いますね。それを個々の職員に求めるのは難しいでしょうから、営農指導員や融資担当などチームで対応することではないでしょうか。
  集落が法人になれば会計もきちんとしてデータに基づく考え方をつくると思いますが、個人の農家でも今年の方針とか重点策や収支をきちんと計画し家族にそれを知らせていくことでしょうね。そしてミカン農家なら、夫婦の場合はどれだけつくれば採算が取れ生活ができるという具体的な基準を示して指導していく必要があると思います。今、青色申告の税務知識を職員教育していますが、白色を含め農家に入り込んで指導していくことが今回の大会議案の提起していることですから、JAは本気で取り組まないといけません。
 金子 林会長がいわれるように、JAが農家の経営にまで入っていかないといけないと思います。
 白石 宮崎では農業経営管理支援ネットワークを基軸に市場出荷でも輸出でも県域JAのブランド力を高め成果を上げています。
 金子 JA合併でスケールメリットは出ていますが、組織力が弱くなってる面があります。JA周南では、地域内流通を進める中で、食の安全については、JA職員と直売所の部会員がエリアを決めて一緒に点検・指導をしています。安全の問題は農家がミスしても最終的にはJAの責任になりますから…。
 林 JAえひめ南では、すでに営農面で行政と提携して地域農業マネジメントセンターを立ち上げています。そこでは農業技術や農業経営の相談とか、戦略的農業の展開とか販売・流通情報の提供、事業企画の立案・推進など、多様な担い手に対する人・農地・資金の受発信計画を織り込んでいます。いまは農地集積円滑化事業を実践しています。
 県と地域行政とJAが一つになって、金も知恵も出してやっていかないと、地域農業の振興はできません。


◆地域のなかでJAの存在感を示す活動を

 白石 「地域のくらし戦略」でも支店を拠点にした地域コミュニティの活性化が提起されていますが、この点はいかがですか。
 林 くらしの活動には昔から力をいれてきました。それは、豊かな生活をするために農業者は農業をしてその収入で豊かになる。サラリーマンは働いてその給料で豊かになる。つまり農業は手段なんだということです。だからくらしの活動を疎かにしてはいけないといってきました。
 いまは行政も平成の合併で公民館活動の予算が少なくなって、活動が減少傾向にあるので、地域ではJAと行政が一緒になってやっていくことが大事です。そうなると支店の充実とかさまざまな相談に乗れるような人的な質の向上をしていかないといけないです。
 まず組織があることが大事です。そして女性の若い人は加工してファーマーズマーケットに持っていって収入を得て生活の足しにしたい。年配層は趣味的なものをつくるなど、階層によって活動の中身が若干違いますから、それに対応していくことだと思います。
 白石 JA周南では准組合員を含めた情報をどう整理し活動に活かされているのでしょうか。
 金子 合併時から、信用・共済・経済事業をすべて集約した組合員情報の一元化を進めてきて、その情報はすべて支所で法令遵守の上でみれるようになっています。この情報を活用して支所が個別対応力を発揮していこうとしています。
 そして、農業が主体の地域には営農センターを設置し、営農指導員を多く配置しています。そしてその地域では信用・共済事業は伸びないのでそのための人員は市街地に配置するというように、その地域の期待度が高い部分は厚くするという事業体制を構築してきました。
 そして平成22年度からの3カ年計画では明確に「地域協同組合」を打ち出しています。つまり地域の中でできるだけ存在感があるようにしようということです。


◆准組合員の意見を聞く場の設定も

 金子 准組合員が多いのですが、「地域協同組合」として支所ごとに利用者懇談会を開き、利用者や准組合員の意見を聞き、それをJAの運営に反映させていく仕組みをつくっているところです。最近は少し広がって、直売所の利用者懇談会も始まっています。
 地域の方のニーズとか、何を考えているのかは、現場で聞かないと分かりません。できれば現場で自己完結できることが理想です。
 議案の討議では「支店の統廃合をしてきていまさら支店を拠点にといっても」という意見がありましたが、現場で自己解決できることがいまの時代では一番必要なことだと考えています。
 私どもは「地域農業協同組合」として、くらしの活動では「くらしの活動課」をつくり、本所が集中的にコーディネートすることで、とくに食農と生活指導については、くらしの活動課が支所の要望に応えて活動しています。4名の女性経営管理委員の方がいますが、食農や生活関連ではリーダーシップを発揮しています。
 林 組合員が高齢化し、事業量も減っていくと思うので、これからは准組合員にどう目を向けていくのかです。宇和島農協時代には准組合員の会をつくり、決定権はありませんが年1回業務報告書に基づき説明会を開いたことや、厳しい時代には役職員の家族との意見交換会を催し、理解と協力を求めたこともあります。准組合員が正と逆転しているので、准組合員対策が必要です。


◆人づくりなくして経営は成り立たない

 白石 「経営基盤戦略」も3つの戦略の柱の一つとなっていますが…。
  経営は「組織」「事業」「財務」すべての分野が総合的に絡み合って実践することによって最終目的に達するものだと思っています。財務を無視しては事業は成り立ちませんから、経営は維持していかなければなりません。そして総合性と専門性を発揮できるような事業環境の取り組みが大事です。経営は人づくり・教育をやらずして成り立ちません。
 JAグループの最大の課題は、人づくりだと思います。役員をはじめJA職員が信念に基づき、勇気をもち、常にプラス思考で行動することが大事です。
 私は職場の原点は家庭にあって、家庭を守れないものは職場を守れない。職場を守れないものは組合員の指導はできないと考えています。
 そして事業管理がきちんとできないと経営は成り立ちません。JAえひめ南では事業本部制をとっているので、そこで完結していくことと、総合農協ですから主は縦でいきますが、総合的に協調・協力をしあうことが大事です。
 白石 金子会長は経営基盤戦略については…
 金子 私は、組合員から負託された以上はJAという組織を継続していくことが大前提だと考えています。そのために一番必要なことは、新たな利用者をつくっていく、そして取引きの複数化や進化を図り、そして何より利用者が満足しなければ収益はあがりません。
 そして林会長も指摘されたように人材がすべてですから、育成していくことが大事です。さらに先見性、10年先を考えることは大事なことで、大会議案の資料でも5年先の姿(事業利益が半減)も示されていますが、これを見てどう考えるのか、何をするかにつきると思います。
 なぜこういうことをいうかといえば、かつて大きな赤字をだしたことがありますが、そのときから危機感をもって経営基盤強化に取組んできました。その結果、昨年度は過去最高益をあげることができました。これは10年前から取組んできたことがようやく実を結んだということです。
 だからいま何もしなければ10年後はないということです。PDCAのC(検証)からはじめることです。実際にはここが一番弱くて、計画は立てるが検証がされない、これがなければ経営改善にはつながりません。
  その通りですね。


◆分散している機能をつなぎ総合力を発揮する

 白石 利用者に満足してもらうためには、現場の職員さんが元気に利用者と接していかなければだめですね。そのためには、現場からのボトムアップができることが必要ではないですか。
 金子 支店を拠点にというのはそういうことだと思います。
 白石 生き生きと職員が働き、利用者も満足することができれば、国民理解も進むと思いますね。
 金子 JAの場合は内部だけでやっているように外からは見えます。だから、「見えないお客さん(未取引のお客様)にどう利用して頂くか」です。そのためには広報も大事ですが直売所です。JA周南では、直売所を基点に総合ポイントサービスを実施しています。なぜならJAとまったく取引きがない人が一番利用し易いのは直売所だから、これを活用してまず利用してもらい、直売所に相談窓口を設けるなど総合的な機能をもたせています。
 JAが素晴らしいのは専門部署があり、多様な窓口があります。だからくらしの活動で大事なことは、窓口にきた人をきちんと専門部署につなげるか、どう対応するかです。つないで問題解決ができれば、くらしの活動戦略は成功すると思います。
 営農指導員が金融の相談を受けたら金融につなぎ、きちんと回答することです。つまり、分散している機能をつなぐことで総合力を発揮することができます。このことが事業横断的或いは事業間に横串を刺すということではないでしょうか。
 白石 いまやっている活動が10年後のJAをつくっているのであり、なにもしなければ大変なことになるということですね。そのためには、PDCAのC(検証)からはじめなければならないわけです。
 そして林会長が指摘されたように、組合長がこういう方向で進むという理念を明示することで、リーダーシップを発揮することも大事だといえます。
 今日は、お二人からJA全国大会に向けての問題点や課題をお伺いしました。全体的には、現場主義で新しい方向をめざして取組む必要があるという評価だったと思います。そして、くらしを基点にして、地域で存在感のあるJAづくりをしていく出発点がこの大会ではないかという感じを強く受けました。

第26回JA全国大会 戦略と実践事項

 


座談会を終えて

 今年は、世界の協同組合が地域経済社会で果たす役割を国連が高く評価した国際協同組合年の年である。今回の大会では、“次代へつなぐ協同”を主題に東日本大震災と原発事故からの人びとの復興を最も重視し、協同組合としてのJAの底力を戦略的に発揮する10年後のJAグループのビジョンと、農の価値を地域循環型社会づくりに活かす実践方策を決定する重要な大会である。
 両会長は、大会組織協議案の“魂”ともいえるJA支店を拠点とした組合員の事業結集・協同活動重視の現場主義の方向付けを高く評価されている。その上で、金子会長は、“くらしを中心に考え、くらしの一部が農業であり、信用・共済事業であり、経済事業である。”と海外に自由に拠点を移す営利企業と根本的に異なる協同組合としての総合JAの存在意義を強調され、一方、林会長は、“職場の原点は家庭にあって 、家庭を守れないものは職場を守れない。職場を守れないものは組合員を指導できないと考えている。”と組合員に向き合う役職員の心構え、くらし方の根本を強調された点が印象的である。
第26回JA全国大会に向けて―【座談会】大会議案の意義を考える 今回の大会が成果を上げるためには、両会長のような協同組合としてのJAへの誇りに支えられ、経営主義に傾斜しがちなJAへの危機意識をもって、組合員の声を聞き、その目線から事業革新を図る現場重視のリーダーシップがきわめて重要だと感じた。この眼差しは、都道府県段階、全国段階の役職員に最も求められている点でもあろう。
白石正彦

(2012.07.26)