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JA全農畜産事業部特集

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【JA全農畜産事業部特集】 JA全農飼料畜産中央研究所 人材育成にも役割果たす

・高まる技術者の役割
・飼料研究の重要性
・後継者を支援するスリーセブンシステム
・「味」の数値化研究にも着手

 かつてにくらべて各畜種の性能は非常に向上しているものの、配合飼料価格が高騰し高止まりするなかでいかに[1]コストを下げるか、[2]高付加価値な畜産物を作るか、という技術もますます必要になっている。
 JA全農の飼料畜産中央研究所(茨城県つくば市)は「守り」と「攻め」の研究で畜産経営を支援している。

「守り」と「攻め」の研究で
畜産経営を支援

◆高まる技術者の役割


 飼料畜産中央研究所の林洋一所長は「全農職員として畜産農家のみなさんと一緒に技術的な課題の解決に取り組み、安定した畜産経営を行っていただくことが私たち技術者の仕事です」と語る。
 そのための飼料畜産中央研究所としての具体的な取り組みには「守り」と「攻め」の両面があるという。


◆飼料研究の重要性

 「守り」とは畜産農家の経営が継続できるようにするための技術の開発と提供。畜産に限らず日本農業全体に求められる課題はやはりコストダウンだ。畜産の場合、それは飼料コストを引き下げることで「中央研究所でもいちばん大きな仕事」だという。
 とくに最近は穀物の高騰にともなっていち早くその時々の有利原料の採用が求められるようになっているが、良質な畜産物を効率的に生産し続けるためには、配合飼料に求められるエネルギーとタンパク質をどこから持ってくるか、しかもその時々でコストの安い有利原料を視野に入れて配合飼料を考える必要がある。
 その代表例がトウモロコシ高騰の原因でもあるバイオエタノール製造の副産物、DDGSである。JA全農はこのDDGSにもっとも早く着目し、日本で最大量の取り扱いをしているが、それが実現したのは中央研究所でいち早く試験に取りかかり有利飼料として活用できることを給与試験を通じて実証したからである。DDGSは微生物による発酵の副産物でもある。そのため微生物が発育を阻害するような物質を生成していないかどうかなども確認された。
 そのほか、飼料用米や小麦なども含めて、どの程度、トウモロコシに代替できるのかなどが研究されている。


◆後継者を支援するスリーセブンシステム

JA全農畜産生産部推進商品開発課が製作している冊子。生産性向上の取り組みのうち有料事例を畜種別にまとめている そのほか研究所が日本の実態に合わせた方法を開発し、現場で注目されている代表例には次のような技術がある。
 養豚農家を支援する「スリーセブンシステム」は、疾病事故防止はもちろんだが、「土日もなく働く」現状を変えるために開発された。これは土曜と日曜には飼料の給与作業だけで済ませることができる仕組みであり、病気への対応もしやすく、生産成績も向上するというメリットもある。 具体的には7つのグループに分けた稼働母豚を3週間隔で交配・分娩・離乳するシステム。この方法によって3週に1回の分娩と離乳というサイクルにすると、土日にこれらの作業がないという生産サイクルを実現した。作業を集中させることで少人数でも効率的な飼育が可能。まとまった休日がとれない連続飼育方式から脱却するもので、後継者の生産意欲を向上させることにもなる。
 このシステムの背景にあるのが繁殖技術。豚の繁殖周期はおおむね3週間だが、交配が成功しないと次の交配時期までずれてしまうが、こうなると群ごとのアンバランスが生まれてしまう。
 「養豚経営を高速道路にたとえるなら、渋滞を起こさないことがいちばん重要です。渋滞を起こせば病気が広がりやすくなり、発育も遅れてしまう。しかも渋滞でもガソリンが使われているのと同じで飼料は給与しなければなりません。つまり、常に同じ量の車を走らせていれば燃費もよくなるばかりか、高速道路全体を走る車の台数も増える。養豚も同じでいかに計画的に繁殖させ肉豚として出荷させていくかが大事です」という。
 また、採卵部門ではMサイズの割合を増やし農家手取りを「卵重コントロール」する飼料がある。タンパク質とアミノ酸のバランスを最適にすることによって平均的にM卵を増やすことができるという技術だ。
 養豚部門では上士幌種豚育種研究室が豚の品種改良を行っており、多産系の種雌豚開発が平成26年2月に発売される見通しとなっている。また、乳牛部門では「コンポストバーン」という飼養法が現場で注目されている。
 この方法は家畜の行動の自由を保証するものでストレスを低減させるカウコンフォートと呼ばれる考え方に基づくもので、乳量が向上することが明らかになっている。


(写真はJA全農畜産生産部推進商品開発課が製作している冊子。生産性向上の取り組みのうち優良事例を畜種別にまとめている)


◆「味」の数値化研究にも着手

 畜産農家やJAが元気になるためにはやはり販売が重要になる。そこで中央研究所が取り組もうとしているのが「攻め」の研究としての畜産物の「味」の数値化である。
 やはり消費者はおいしい畜産物を求める。こうしたニーズに応えるために味覚センサーなどを使って味を数値化、差別化商品としての販売を支援する考えだ。甘さ、酸っぱさ、苦さなどの味の組み合わせのなかで何が良食味なのかを数字として示すことをめざす研究だという。
 また、同時に人材育成も重要で、畜産農家を技術面で支援する人材供給も行い、飼料会社やJAなどと連携して畜産農家を支援するような取り組みは今後重要になるという。
 「畜産農家が何を必要としているかをキャッチすることも大切ですし、そのための新しい技術を解説して普及する人材も必要です。そうした人材の育成も中央研究所の重要な仕事だと考えています」。


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