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協同組合研究の成果と課題 1980〜2012

  • ●著者:堀越芳昭/JC総研 編
  • ●発行所:家の光協会
  • ●発行日:2014年5月1日
  • ●定価:本体4200円+税
  • ●電話:03-3266-9029
  • ◎評者:北川太一 / 福井県立大学教授

 当該の研究領域において、これまでの研究蓄積をサーベイすることによって、自らの立ち位置を明らかにしながら学問的な枠組みの中で研究を相対化させることは、研究者にとって必要不可欠な作業である。ところがこうした作業は、少なからぬ労力を要し、しかもそれが必ずしも正当に評価されるとは限らない。近年の学会誌等において、いわゆる研究サーベイ論文があまり見られなくなったことは由々しき事態であると思うが、研究活動の効率化、業績の本数が求められる傾向にあっては致し方ないのかもしれない。

「自己改革」も視野に
期待される研究の深化

 

 

 こうした中にあって本書は、多様な領域にわたってこれまでの協同組合研究をサーベイし、1冊の書として取りまとめられた労作である。主に980年以降から今日に至るまでの研究成果が対象であるが、それは本書でも紹介されているように、『新版 協同組合事典』(家の光協会、1986年刊)において、伊東勇夫氏が、1980年代初頭までの協同組合研究史の整理を行っていることが理由である。本書で取り上げられる協同組合の対象は、国際協同組合、協同組合の理論と歴史、協同組合法制、農業協同組合、漁業協同組合、森林組合、生活協同組合、中小企業協同組合、ワーカーズ協同組合、協同組合金融、共済理論の11であり、さらに補章として社会的企業が付加されている。
 総勢12名の執筆者からなるが、いずれの章においても論述の方法として、[1]該当期間の経済・社会的な背景との関連で研究動向を把握すること、[2]重要な研究テーマ(主要論点)について研究成果を取り上げながら論評すること、[3]これらをふまえた上で今後の研究課題を提示すること、が貫かれている。もちろん、各章末には著書を中心とした膨大な研究成果が掲載されており、文献目録としての役割も果たしている。研究サーベイ論文を書く際の難しさ、腕の見せ所は、研究成果が生まれた時代的な背景をふまえるとともに、時代の変化に関わらず重要な論点を析出し、それらを時には批判的に検討しながら到達点を明らかにすることである。
 この点において本書は、上記の執筆スタンスを徹底することによって実現しており、読者は当該の領域に関して協同組合の展開史と研究史という縦横の軸を理解することができる。
 現在、農協に対する強い改革要請(農協批判)が噴出し、「自己改革」が厳しく求められている。このことはもちろん、農協の問題にとどまらず協同組合としての存続のあり方に関わることでもある。本書の農業協同組合研究において石田正昭氏が取り上げているように、「経済事業分離を前提とした」信農連構想は早くから提起されてきたし、「2割の農業者が8割の農業生産高を持つ」農業の実態と「組合員にフラットに配分された投票力」との乖離の中で、農協の自己決定力をどのように高めるのかという問題提起も行われてきた。
 しかし残念ながら、こうした問題提起に対して私たちは理論武装が十分にできていないことも事実である。同時に、協同組合ごとの対象アプローチから、社会的企業も視野に入れた協同組合間の関係アプローチ、いわば既存の協同組合という枠組みから開放された研究の深化も求められている。いろいろな意味で、協同組合研究自体も正念場を迎えていることを痛感させられる書物である。実践家も含めて、多くの方々が手に取られることを期待したい。

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