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地方消滅 東京一極集中が招く人口急減

  • ●著者:増田寛也 編著 / 元岩手県知事、元総務大臣、日本創生会議座長
  • ●発行所:中公新書
  • ●発行日:2014年8月25日
  • ●定価:本体820円+税
  • ●電話:03-3563-1431
  • ◎評者:北出俊昭 / 元明治大学教授

 2012年1月、国立社会保障・人口問題研究所(以下「社人研」)が「日本の将来推計人口」を公表した。そこでは今後わが国は長期の人口減少過程に入り、2048年の総人口は1億人を下回るとされているが、とくに65歳以上の高齢者人口が増加し、15〜64歳の生産年齢人口が減少するとしている。

消滅論に立ち向かう
地域づくり戦略こそ大切

 

 『地方消滅』はこの報告を受け、増田寛也氏が座長の日本創成会議が「中央公論」2013年12月号、2014年6月号および同7月号に発表した論文を再構成し加筆したものである。
 同書では社人研の推計を基に、2010年から40年までの間に「20〜39歳の女性人口」が5割以下に減少する自治体が896、全体の49.8%に達するとし、これらの自治体を「消滅可能性都市」と規定した。
 そのうえこの「地方消滅」は人口の「自然減」だけでなく、若年層の人口流出による「社会減」により加速されるので、東京都区部、大阪市、名古屋市、福岡市などは「社会増」を示すが、それ以外では大幅な「社会減」がみられ、地域により大きなバラつきがあるとする。
 こうした動向を踏まえ著者は、「拠点社会」による大都市集中は集積効果のある経済構造ともいえるが、逆に大きな経済変動に弱い「単一的構造」であり、大規模災害リスクへの対応でも問題があるので、「東京一極集中」に歯止めをかける対策として「選択と集中」を強調する。具体的には全国の各地域で広域ブロック単位の資源や政策を集中的に投入した「地方中核都市」の形成を提起する。
 その理由は、「地方中核都市」が発展すると若者の定住化が進み出生率も上がるので、人口流出を食い止める「ダム機能」も果たすからである。そして本書の最後では、全国の全市町村の将来推定人口による「消滅可能性都市」も具体的に示されている。
 この地方中核都市構想では周辺市町村からの人口流出が一層促進され過疎化が進むことになるとして、「消滅可能性都市」とされた自治体は大きなショックを受けている。また、国民の60%以上が「住み慣れた土地を離れたくない」と思っている実態(内閣府調査)とも矛盾しているので、この提言に「地方創生に名をかりた地方切り捨て」とする批判があるのも当然である。
 一方の『移住者の地域起業による農山村再生』は、本年4月に発刊がはじまった一連の「JC総研ブックレット」の「No.5」として出版されたもので、前者とは全く異なった地方活性化対策を示している。
 同書の特徴は農山村への移住者の志向は、1990年代後半の農林漁業中心から2000年代後半では、「田舎暮らし」や「ライフスタイルの転換」も強くなっていることに注目する。このため定年退職者などの高齢者だけでなく若者も多くなり、移住後に希望する仕事も「なりわい」として「起業」も含め多様化していることを強調する。このため市町村の移住者の受け入れ対策でも多様な「なりわい」への対応が必要で、「就業」だけでなく「起業」や地域資源を活用した従来事業の「継業」までの取り組みを強調する。
 そのうえでこれまでとは異なる移住者を取り入れた新しいコミュニティ(地域運営組織)形成が重要な課題であるとする。当然、自治体はこうした観点に基づいた「地域づくり戦略」をもつ必要があるが、これは注目すべき新しい見解であるといえる。
 いずれにしても、11月末までの臨時国会に「まち・ひと・しごと創生法案」が提案され、政府も「同創生本部」(本部長安倍首相)を設置し「同会議」も初会合を開くなど、地方再生問題は国政上の重要な課題となっている。政府は当然「地方消滅」の論理による対策を進めるが、それに対応するうえでも地域課題への正しい認識が求められている現在、両書とも一読の意義があるといえよう。


【JC総研ブックレット『移住者の地域起業による農山村再生』】

JC総研ブックレット『移住者の地域起業による農山村再生』筒井一伸・嵩和夫・佐久間康富 著 小田切徳美 監修
筑波書房(本体750円+税)

 

 

 

 

 

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