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自著を語る 「米の価格・需給と水田農業の課題――『減反』廃止への対応」

  • ●著者:北出 俊昭
  • ●発行所:筑波書房 
  • ●発行日:(2016年8月31日発行)
  • ●定価:定価1200円+税
  • ◎評者:

 政府は2018年産を目途に「減反」廃止を決定している。これはわが国の米政策の在り方の根本的な転換を意味し、今後の米生産だけでなく国民食料の安定的確保にも大きな影響を及ぼすものである。本書はこうした状況に対応し、米生産と水田農業の健全な発展を期待して、生産調整と米価問題に直接携わった体験も含め、執筆したものである。
 本書は4章で構成されている。
「第1章 米価動向と米生産の所得問題」では、最近の米価動向と今後の米の所得補償制度について検討している。近年、生産者の米販売価格の下落は著しく、とくに2014年産は前年対比で16%以上下落した。このため全規模平均の所得は3093円から732円に低下し、純収益は全規模でマイナスとなった(60kg当たり)。1戸当たりでは当然作付規模が大きいほど減少額は大きく、15ha以上層では粗収益で360万円以上、所得で380万円以上の減少となっている。これは育成が最も期待されている大規模経営が米価下落の影響を最も強く受けていることを示しており、わが国の稲作は存亡の危機に直面している実態を重視する。
 その後米価は若干上昇しているが、TPP合意と「減反」廃止により米価のさらなる下落が懸念されるので、今後米生産を維持・発展するためには所得補償制度の充実が必要で、本書では生産費を基準とした不足払い方式の確立を提示している。
 「第2章 米の流通・消費構造の変化と輸出入問題」では、食管制度下とは異なり近年米流通が多様化し、消費形態の変化に応じ消費者・実需者の米選択も多様化している。この章ではその実態を検討し、消費動向に応じた米生産として、これまでの「良食味・高価格」だけでなく、「普通食味・低価格」を今後の課題として強調している。これは消費者が米購入の際に最も重視しているのは「価格」であり、米消費形態の多様化が進むとカレー、チャーハンなど「普通食味」の米需要が増大するからである。
 また米輸入ではとくにMA米について検討し、その財政負担は「食管赤字」と批判された当時以上に達していることを明らかにする。政府はTPP交渉でアメリカ、オーストラリアから7.8万トンの米輸入に合意したが、これは米価下落を促進することは明らかで、最近指摘されているSBS米価格の偽装問題とともに、改めてMA米の在り方に注目する。
 「第3章 水田利用の多様化と米需給政策の課題」では、水田利用の実態について述べ、主食用米の過剰基調を改善するために進められている水田フル活用の課題について検討する。ここでは麦、大豆の生産振興対策について検討すると同時に、飼料用米については以前農政審議会で政策が提示されながら、ほとんど実施されてこなかった要因の究明が重要なことを指摘する。
 さらに生産調整の経過と特徴について検討し、現行法でも米需給政策は「国の責務」と規定されていることに鑑み、「米政策の見直し」でもその趣旨にしたがった新たな推進方策の確立が必要とする。
 最後の「第4章 米需給政策の推進と農協組織」では、生産調整にはいろいろ問題があったが、農協組織がその推進上重要な役割を果たしてきた。それは生産者組織として当然なことであった。今後米需給に対する政府権限の縮小が予測されるので、全中もすでに方針を決定しているが、組合員・地域本位の政策を実施していくためにも、農協組織は協同組合の理念と原則に基づいた取り組みが必要なことを強調する。
 本書の概略は以上の通りであるが、米政策の根本的な転換期において改めて強調したいことは、新自由主義的な「国際的画一化」ではなく、日本農業の風土的歴史的特徴に基づいた対策が不可欠なことである。水田農業ではそれがとくに重要で、本書で「日本的特徴」を強調したのもそのためである。読者の皆さんの率直なご意見をお聞かせいただければ幸いである。

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