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TPPは南北戦争を招く2013年6月3日

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【森島 賢】

 TPPは、北海道と都府県の間で、農業をめぐる深刻な紛争を招くだろう。
 米や酪農やテンサイなどで生きてきた北海道の農業者にとって、TPPに加盟するか否かは、死活問題である。
 TPPに加盟すれば、北海道の農業者は、酪農やテンサイなどに生きる場を失うので、懸命になって、その他の農産物に生き残る場を求めるだろう。それは、米であり、飲用牛乳であり、野菜だろう。それらを大量に生産して、都府県に売り込むに違いない。そこに争いが生まれる。経済的弱者どうしの争いになる。これは、協同組合運動が目指すところではない。その対極にある。
 それを避けるには、TPP加盟を断念するしかない。

 かつて、日本には北海道と都府県の間で、南北戦争といわれる牛乳の紛争があった。アメリカの南北戦争と違って、銃弾や砲弾が飛び交うことはなかったが、深刻な紛争だった。
 つまり、バターやチーズなど、乳製品の輸入自由化により、大量の乳製品が輸入され、北海道の乳製品が売り先を失った。そこで、北海道の農業者は、牛乳を安い乳製品に加工するのではなく、飲用乳として都府県へ売り込もうとした。そして、都府県の農業者との間で紛争になりかけた。
 そのときは、加工乳に対する不足払い制度を作り、この制度のもとで、北海道の牛乳の多くを加工して乳製品にし、飲用乳として都府県に売る量を制限した。つまり、北海道の農業者も、都府県の農業者も、ともに大きな犠牲を払って紛争を収めた。
 今度はどうなるか。

 米からみてみよう。
 北海道の米のコストが安いことは周知のことである。大規模経営だからである。農水省の資料によれば、北海道は1万2194円(玄米60kg当たり)だから、都府県の1万6408円の74%である。
 食味をみよう。穀検によれば特Aランクの米は、全国で29地区・品種あるが、そのうちの2つが北海道産米で占められている。いまや道産米は、魚沼コシヒカリと並んで最高の位置にあって、ササニシキやアキタコマチよりも、また、他の多くの産地のコシヒカリよりも上位にある(日本穀物検定協会の資料は、ココをクリック)。
 だから、かりに、TPPに加盟したと仮定して、米が聖域になったとしても、輸入関税が小さくなれば、また、規制緩和などといって減反をやめれば、このように、旨くて、しかも安い道産米が、ドッと都府県になだれ込むだろう。そして、コメ版の南北戦争を招くだろう。
 米を聖域にできなければ、それも束の間の出来事で、やがて日本の米は全滅するだろう。

 牛乳はどうか。
 北海道の牛乳のコストは、農水省の資料によれば、100kg当たり7357円で、都府県の8844円の83%と安い。だから、北海道の牛乳は、今までは不足払い制度のもとで、加工用に仕向け、乳製品にしてもらい、都府県の飲用乳生産に影響しないようにしてきた。
 だが、TPPで輸入関税が下がれば、輸入品が入ってきて北海道産の乳製品は売れなくなる。そうなれば、北海道の農業者は牛乳を安い乳製品に加工するのではなく、飲用乳として都府県に売り込むしかない。
 牛乳の品質は、どこで生産しても同じだから、コストだけで競うことになる。都府県の産地は太刀打ちできるだろうか。
 TPPで乳製品が聖域でなくなれば、その影響は乳製品の産地の北海道だけでなく、全国の酪農地帯に及ぶだろう。酪農版の南北戦争である。

 野菜を見よう。
 TPPでテンサイなど北海道の畑作物が聖域でなくなったら、どうなるか。
 北海道畑作の輪作体系は、テンサイ・バレイショ・コムギ・マメの4作の輪作体系になっている。TPPに加盟して関税がゼロになれば、この4作はすべて壊滅的な打撃を受ける。壊滅的というより全滅というほうが近い。つまり、北海道の畑は野菜しか作るものがなくなる。
 北海道には広大な農地がある。連作しなくてよい。ここに都府県の野菜との大きな違いがある。
 都府県の野菜は連作が多い。だから連作障害を免れない。それを軽減するために、品種改良を重ね、食味を犠牲にしている。農薬も大量に使っている。
 これに対して、北海道の野菜は、連作障害がなく、その上、気候が冷涼なので病虫害の発生が少ない。だから、北海道の露地野菜農家の農薬費は、農水省の資料によれば、反当たり1.62万円で、全国平均の2.07万円の78%と少ない。
 このように、北海道産の旨くて、しかも安全な野菜は、都府県の需要者に歓迎されるだろう。
 テンサイなどがTPPで聖域でなくなったら、被害を受けるのは北海道の畑作農家だけではない。都府県の野菜農家にも被害が及ぶ。野菜版の南北戦争である。

 こうした事態に対して、市場競争に最高の価値をおく市場原理主義者たちは、喝采を浴びせるだろう。そうして、経済的弱者への搾取の強化をもくろむだろう。
 しかし、経済的弱者どうしの協同に崇高な価値をおく協同組合主義者たちは、その対極に位置して、それを拒否する。
 こうした事態を避けるには、TPP加盟をやめるしかない。
 そのために、何より重要なことは、北海道も都府県も一体になって、TPP加盟に反対する運動を貫き通すことである。


(前回 アベノミクスのさえない成果 民間投資の不活発

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