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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2014.11.25 
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 先週、安倍晋三首相が、とつぜん衆議院を解散した。来月の14日が総選挙になる。
 誰もが予想しなかったようだ。しかし、野中広務元自民党幹事長は、10月5日のテレビ(TBS)で、11月中の解散を予言していた。「全ての問題を先送りにして、11月解散」という予言だった。トッピな予言に思えて印象に残ったが、的中した。
 問題を議論しだすと、次々にボロを出し、次第に支持率が下がり、ついに解散に追い込まれて政権を失う、という予想なのだろう。そのように筆者は推測した。
 別の見方をすると、安倍政権は、いま解散しないと延命できない、という危機的な状況に追い込まれている、ともいえよう。

 選挙後に先送りされた政治課題は多い。農政分野では、TPPと、いわゆる農業・農協改革が先送りされる。
 TPPは、アメリカといっしょになって、アジアの経済発展の果実を狙おう、というものである。そのために、農業を犠牲にしようとしている。選挙後に事態は急展開するかもしれない。
 農業改革は、農業者から土地を取り上げて、農外資本に売り渡すことを狙っている。まさに市場原理主義農政である。
 農協改革は、TPPに反対し、また、農地を狙う農外資本にとって不都合な農協に、ドリルで穴をあけて破壊しよう、というものである。当面は、全中と県中に攻撃を集中している。
 3つともアベノミクスの成長政策の中で最も重要な政策である。だから政府は、TPPも農業・農協改革も後には引けない、と考えているだろう。だが、引いてもらわねばならぬ。
 3つとも経済的弱者を痛めつける市場原理主義に基づく農政、つまり市場型農政である。だから、ほとんど全ての農業者は激しく反対している。そうして、経済的弱者が協同して強者に立ち向かう協同型農政に転換することを要求している。

 協同型農政と市場型農政の対立は、以前から続いている。そうして、選挙が近づくと協同型農政が勢いを増し、選挙が終わると市場型農政が勢いを盛り返す。それをくり返している。
 今度もそうなるだろう。選挙前は、各候補者は、自分こそが協同型農政の守護神だ、と言いふらすだろう。農業者にとって、冬晴れのような心地よい公約を掲げるだろう。さっそく、米価対策を言い出してきた。
 だが、選挙が終わると一転して市場型農政の推進者に豹変するだろう。農業者に市場型農政の嵐が荒れ狂う。この嵐は、来年4月の統一地方選挙まで、しばらくの間つづくだろう。
 どれほど強烈な嵐が吹き荒れるか。それは、選挙結果しだいである。つまり、農業・農村の窮状に危機感をもち、協同型農政に転換するという候補者が、どれほど多く当選するか、にかかっている。

 こんどの総選挙で、与党の自公が議員数を減らすと予想する人は多い。しかし、半数割れになると予想する人は、ほとんどいない。つまり、安倍政権が倒れると予想する人は、ほとんどいない。
 与党が半数割れになり、安倍政権が倒れるまで、いまの市場型農政が、選挙後もそのまま続くのか。そうではない。与党の中にも協同型農政への転換派が多い。その人たちが、どれほど多く当選するか、に選挙後の農政はかかっている。
 また、仮に与党が半数割れになったとしても安心できない。野党の中にも市場型農政の推進派は少なくない。
 だから、今度の選挙を農政面でみると、政党を選ぶのではなく、政治家を選ぶ選挙になる。どの政党が過半数になるか、が問題ではなく、協同型農政派の候補者がどれほど多く当選するか、が問題である。

 政党は、同じ政治信条をもつ政治家の集まりだが、今はそうではない。与野党ともに協同型農政派と市場型農政派が入り混じっている。協同型農政派の候補者がいない選挙区では、農業者の投票先がない。つまり、政党政治は、深刻な機能不全に陥っているといえよう。小選挙区制だからである。
 小選挙区制は2大政党による切磋琢磨ではなく、民意を汲み取りにくくし、また、政党の官僚制を強化し、独裁的な1強多弱制をもたらした。その結果、政党政治は危機的状況に陥っている。
 こうした中では、市場型農政派の党幹部からの圧力に屈しない、骨太な協同型農政派の議員が、増えることを期待するしかない。そうなれば、市場型農政の嵐は吹き止み、穏やかな農政になり、農業者に支持される協同型農政に近づくだろう。
 だから、どの候補者が真正の協同型農政派か、それを見極めることが重要になる。
 総選挙まで、あと20日しかない。それまでに、TPPと、農業・農協改革に対する候補者の政見を、しっかりと見定めることが肝心だろう。

 


(前回 規制改革会議の支離滅裂な中央会攻撃

(前々回 政府の強権的な農協改革

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