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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2015.04.27 
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 統一地方選挙で、自民党は現有勢力を維持した。1強多弱の政治体制は、今後もつづくだろう。これから来年の参議院選までの1年間は、大きな選挙の予定はない。
 だから、安倍晋三首相は、思う存分な政治を行うだろう。当面は、念願の「戦後レジームからの脱却」のための法整備をしようとしている。それは、安保法制であり、新農協法である。それに、労働法制が続くだろう。
 農政の狙いは、TPPによる財界の農業の支配であり、農協つぶしのための新農協法による、財界の農村社会の支配である。

 安保法制を整備するというが、その狙いは、戦後に全国民が誓った平和主義からの「脱却」であり、否定である。つまり、戦前の軍国主義の復活である。
 新農協法の狙いは、戦後に打ち立てた農村での経済民主主義からの「脱却」であり、否定である。それは、農村の経済民主主義の基礎にある協同活動の否定である。その中核にある農協をつぶそうとしている。

 そしてそれは、戦前に軍国主義の温床になった、農村の草の根軍国主義の復活を狙っている。
 戦前に農村で軍国主義を盛り立てたのは、地主体制下の知識人たちだった。つまり、大地主、農協と役場の役職員、教師、神官、僧侶たちだった。
 村の人たちは、知識人のあの人が「今度の戦争は正しい」というのだから正しいのだろう、と考えた。そうして、農村は軍国主義の一色に染まった。それは、都市へ伝播した。農村の民主主義の砦だった農協は押しつぶされ、食糧の単なる供出機関になってしまった。
 そうして、多くの青年が戦争の犠牲になった。

 当時、農村の知識人の主な情報源は、新聞とラジオだった。新聞やラジオを聞くのは知識人だけだった。
 その新聞とラジオは、言論が統制される以前から、戦争を煽っていた。戦争が拡大するたびに、新聞の発行部数が増え、ラジオの聴取率が上がった。その結果、利益を増やし経営状態を改善できた。増えた利益を麻薬のように使って、特派員を戦地に派遣して戦地の状況を生々しく報道し、戦争をますます煽り、利益をさらに増やした。つまり、こうした経済的強制によって戦争を賛美し続けた。
 その後、大本営の情報操作が加わり、さらに検閲という政治的強制によって戦争批判を封じられた。

 いまのマスコミの多くは、政府の安保法制に賛同し、農協攻撃に加担している。そうしないと、財界からの広告が打ち切られ、経営基盤である広告収入が減らされる。
 検閲という直接的な政治的強制ではなく、経営基盤を揺るがす、という経済的強制によって、政府批判を封じられている。
 この点では、昔も今も変わらない。

 TPPをみると、多くのマスコミは、政府の秘密交渉を暴露しようとしない。そして、情報がないままにTPP加盟を主張している。その一方で、反TPP運動は全て無視している。そうして、財界に秋波を送っている。
 また、農協批判をみると、農村の現場の実態に目をつむって、農協攻撃を繰り返している。そうして、農協側からの反撃を一切報道しない。このようにして、財界に媚態を示している。

 統一地方選が終わったいま、多くのマスコミは財界と政府の顔色を窺がいながら、こうした潮流を加速しようとしている。その先に何が待っているか。
 それは、戦後の農村民主化の否定であり、さらに、その先には平和主義の否定が待っている。
 この潮流は、早期に阻止しなければならない。

 戦前は、マスコミに接するのは、ごく一部の知識人だけだった。だが、今は違う。農村の大多数の人たちは、こうしたマスコミの堕落を不快に見据えている。
 戦前は、地主が農村を支配していたが、今は財界が支配しようとしている。
 首相は「戦後レジームからの脱却」を法制的に完成したいのだろう。戦後、農協が中心になって打ち立てた農村民主主義が首相にとって不愉快のようだ。いま、財界の横暴に抗して、農村で経済民主主義を守っている協同活動が不快なのだろう。だから当面は、マスコミといっしょになり、財界の代弁者になって、農協をつぶそうとしている。
 だが、そうはいかない。農協は、戦後民主主義が打ち立てた不滅の金字塔なのである。

(前回 農協の正念場

(前々回 争点ぼけの地方選

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