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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2016.04.18 
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 衆議院のTPP特別委員会が始まった。しかし実質2日目の8日に早くも中断した。その後、ようやく15日に再開したが、熊本地震のため休会になり、18日の今日から再開する予定である。
 大地震のための休会は当然のことだが、それまでの1週間の中断は、いったい何だったのだろうか。
 ここには、国民を無視した政府の、秘密外交に対する野党の抗議がある。また、TPPの国会批准を阻止する、という戦略目的のための戦術という理解もできる。

 秘密外交のことだが、たしかに外交交渉には、当分の間、秘密にすべきことがあるだろう。しかし、国民を全く無視した秘密外交は、抗議すべきものである。
 だから、抗議されないように、政府はときどき交渉内容を非公式にリーク(秘密漏洩)して、国民の顔色を見ながら交渉を進めてきた。たとえば、アメリカが17万5000トンの米の輸入枠を要求したこと、それに対して日本は5万トンを提示したこと、などをマスコミが非公式に伝えていた。(資料は本文の下)
 このようにリークしたのに、政府は、交渉のメモさえも残していないといって、野党の要求を突っぱねている。野党が怒るのは当然である。それに加えて、西川公也委員長の政府寄りの議事運営に対して怒っている。それも当然である。

 ここで言いたいことは、こうした混迷を招いた理由である。なぜ、もっと早く野党は、TPPの妥結内容の審議に入ろうとしないのか。
 それが、TPPの国会批准案を廃案にする戦略目的のための戦術なら、多くの農業者も賛成する。しかし、TPPの廃案という戦略目的が今のところ見えてこない。いったい、野党第1党の民進党は、何を考えているのか。

 民進党の中央執行部の、TPPに対する公式見解は、山尾志桜里政調会長が、今月5日に行った衆議院本会議での、次の発言で示されている。
 「TPPを含む高いレベルの経済連携を進めていくことは、日本の成長をさらに押し進めるため、必要な枠組みであることは否定いたしません。」
 この発言は、昨年10月5日に、民進党の前身の一部である旧民主党の、当時の政調会長だった細野豪志氏が発表した、次の公式談話を、そのまま引き継いだものである。
 「わが国が...活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域内において高いレベルの経済連携を推進する...必要がある。」ここでいう経済連携はTPPを指している。
 以上のように、TPPは必要だ、とする民進党の中央執行部の見解は、頑迷に一貫している。これは、決してほめられることではない。

 いっぽう、地方の、ことに農村部の実情を熟知している民進党の党員の多くは、TPPに反対している。しかも、明確に反対している。いったい、民進党の党内民主主義は、どうなっているのだろうか。
 もしも、このままで夏の参院選になれば、農村部の民進党の党員は、TPPは反対という支持者と、TPPは必要とする中央執行部との間で、板ばさみになってしまう。これでは選挙戦を戦えない。風だのみにするしかない。しかし、風も吹かないだろう。
 それでは、野党は農村部に多い1人区では勝てない。その結果、参院選は惨敗してしまう。政権交代の足がかりにしたい、と考えているようだが、とうてい無理だろう。

 民進党の支持者だけでなく、多くの国民が望んでいるのは、民進党の地方党員と、中央執行部との意思疎通による党内民主主義の復活である。それは、民進党を活性化するだろう。そして、それは日本の政治の活性化に続くだろう。
 夏の参院選で、多くの国民が民進党に期待することは、直接に国民の声を聞いている党員に応えて、党中央が、TPPに対し明確に反対する公約を、高く掲げることである。
 そうすれば、参院選で圧勝できるし、TPPを廃案にできるだろう。そして、政権奪還に近づけるだろう。
(2016.04.18)


日本経済新聞の2015.07.24日のリーク記事はこちらから

(前回 民進党の綱領が泣いている

(前々回 民進党のあいまいなTPP政策

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