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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2016.06.06 
農協攻撃で民主主義を踏みにじるマスコミ一覧へ

 権力を批判すべきマスコミが、権力にゴマをすっている。これは、権力の背後にいる財界へのゴマスリである。日本の民主主義の危機は、ここまできた。
 先週の初め、ほとんど全てのTVと新聞が、口をそろえて、高知県の「土佐あき農協」が独禁法違反を犯しているかのように書き立てた。
 これは、権力をカサにきた公取委の、経済的弱者である農業者に対する卑劣な攻撃である。法律で認められている農協共販を妨害する悪質な行為である。
 それに、多くのマスコミが加担している。農協批判どころではない。悪辣な農協攻撃である。

 公取委の社会的責務は、日本を戦争に追いつめた財閥を解体し、経済を民主化することで軍国主義を根元から断つことではなかったか。マスコミの社会的責務は、不当な権力を批判し、平和憲法のもとで、日本の民主主義を守ることではなかったか。
 公取委とマスコミは、その責務をかなぐり捨て、経済的弱者である農業者と、その協同組織である農協を攻撃し、経済民主主義を踏みにじっている。そうして、財界とそれを代弁する権力に媚び諂っている。まことに見苦しいことである。

 マスコミの報道の内容は、「公取委は『土佐あき農協』の共販に独禁法違反の疑いがあり、排除命令を出すもようだ」という憶測であり、伝聞である。朝日新聞なぞは、第1面に大きな活字でデカデカと、根拠のない農協攻撃を書き立てている。土佐あき農協がそれを否定している記事の部分は、数行にすぎない。
 戦時中のマスコミは、大本営の発表をそのまま報道し、戦意を高揚させ、戦争に加担していたが、それと変わらない。
 公取委は、制度として、農協を「監視」し、「取り締まる」ための専門チームを作った。また、農協についての「密告」の専門窓口を作った。こんなことは、戦時中にもなかったことだ。まるで農協を犯罪者扱いしている。
 このままでは、日本は「監視社会」や「密告社会」という、戦中・戦前以上に暗い社会へ向かって、突き進んでいくだろう。
 マスコミは、そのことに危機感を持っていないし、批判さえしていない。秘密保護法が、どうこう、と批判しているが、それは、うわべだけの批判のようだ。また、格差社会に批判的のように見せかけているが、実際の主張は、経済的弱者である農業者とその協同運動を白眼視する冷淡で軽薄なものだ。そうして、格差社会の深化に加担している。

 さて、本題へ戻ろう。
 同じようなことを、ちょうど10年前に北海道などで起こした。
 公取委は、士幌町農協の肉牛の共販に独禁法違反の疑いがある、として現地調査に入った。この農協の肉牛共販は、100%共販だった。公取委は、農協が組合員を違法に強制して農協へ肉牛を出荷させている、と疑ったのである。強制がなければ全量共販などあり得ない、と考えたのだろう。
 公取委の現地調査の結果、独禁法違反の事実は認められなかった。公取委は、独禁法違反の「おそれ」がある、として「警告」をしただけで終わった。そうして、シッポを巻いてスゴスゴと帰って行った。
 公取委は恥をかいたのだが、一時、農協は信頼を失いかけた。公取委は、農協の信用失墜を狙ったのかもしれない。その目的は、一時的ではあるが達成された。
 しかし、公取委の信用は失墜し、農業者の公取委に対する怒りは、いまだに消えていない。マスコミは、いままた性懲りもなく、そうした公取委に追従している。

 いったい、マスコミは、農協の共同販売についての知識を、少しでも持っているのか。無知のままで農協を攻撃しているのではないか。
 近代民主主義は、経済的弱者である農業者や中小企業者の協同組合が、経済的強者である大企業と対等に競争するために、共同して販売し、購買することを独禁法の例外として、法律で保証している。大企業どうしの共同は、独禁法に違反する「談合」だが、農協の共販は違う。
 このことを、民主主義を守るべきマスコミは知らないのではないか。無知のままで大企業に媚を売っているのではないか。そうして、民主主義を踏みにじる報道をしている。
 承知のうえで農協を攻撃しているのなら悪質である。それは、経済的弱者への攻撃であり、近代民主主義の否定である。民主主義を守るべきマスコミが、民主主義を踏みにじることになる。そうして強者の宣伝機関に成り下がる。

 労働者や非資本主義部門・地域など経済的弱者への攻撃は、資本主義の出生以来、DNAに深く組み込まれている。そうして、隙があれば牙をむき出す。
 資本主義は、弱者を攻撃して、市場を広げ、搾取のフロンティアを押し広げる。つまり、農業などの非資本主義部門を資本主義化し、市場を広げ、搾取の場を広げ、強化する。また、開発途上の国を侵略して資本主義化し、市場を広げ、搾取の場を広げる。さらに、労働者を低賃金に抑えつけ、いつでも解雇できる非正規労働者に追いやって搾取を強化する。それが資本主義の本性であり、市場原理主義の政策であり、その尖兵がTPPである。
 こうして、搾取を深化するために、弱者への攻撃を強める。これは、近代民主主義とは両立しない。このことを民主主義の守護神であるべきマスコミは、どう考えているのか。それが、こんどの農協攻撃で試されるだろう。農業者は、怒りを込めて監視している。
(2016.06.06)

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