自民党公約の厚顔無恥2016年6月13日
参院選まで、あと1か月たらずになった。だが、各政党の公約は、まだ出揃っていない。
ここでは、先週に発表された自民党の公約を見てみよう。「政策パンフレット2016」という名前の文書である。
参院が閉会する直前に、安倍晋三首相は、消費増税の延期を決めた。そして、その賛否を参院選で国民に問う、と言った。それを聞いて、みんなは呆気にとられたようだ。
ほとんど全ての野党は、消費増税の延期を主張していた中での発言である。だから参院選の争点になるはずがない。いったい、首相の思考は、どうなっているのか。正常な思考からは想像もできない。
同じようなことが、公約の中に多い。
多くの野党の主張は、消費増税の延期は、アベノミクスの失敗の結果だ、というものである。だから、アベノミクスを止めよ、と主張している。
それに対して、与党は失敗を否定している。だから、アベノミクスを続けることを主張している。
正常な思考で言えば、参院選の主な争点は、ここにある。アベノミクスを止めるか、それとも続けるか、という点である。このことが分からなかったようだ。いったい、どうしたことか。
◇
さて、アベノミクスは、成長戦略でつまずいている、と言われている。野党系の論者も、与党系の論者も、この点では一致している。
与党の成長戦略は、東アジアの発展途上国で、今後も増え続ける膨大な需要を日本が取り込む、というものだ。しかし、そこで、つまずいている。だから、TPPでそこを突破するのだ、と言う。
だが、民進、共産の両党だけでなく、ほとんど全ての野党は、TPPに反対している。農業者だけでなく、国民の全てに甚大な悪影響を及ぼすからである。だから、国会批准に反対している。
それに加えて、アメリカの大統領選で、民主、共和両党の候補者になることが確実なクリントンとトランプの両氏は、ともにTPPに反対している。
成長戦略の尖兵といわれるTPPの前途には、茨の道が続いている。
◇
農業分野ではどうか。
公約では「農林水産物の『2020年輸出額1兆円』を前倒し、『輸出』を農林水産物の新たな稼ぎの柱とします。」といっている。それが、公約の大きな目玉だ。
しかし、農水省の最新の資料によれば、4月の輸出額は、前年4月と比べて僅か3.2%しか増えていない。図で示したように、今年になってから、ほとんど増えていない。前年同月と比べると、1月は4.7%減、2月は2.2%増、3月は0.7%減だった。つまり、今年になってから、横ばい、と言っていい。
ここで強調したいのは、こうした事実を無視して、公約が書かれていることである。これでは厚顔無恥としか言いようがない。
事実を無視して自分勝手なことを言う、という点で厚顔である。また、無恥のおお元に、無知があるようだ。無知と言っても、事実についての知識がないだけでなく、知的能力の欠如、つまり論理的思考ができないことを疑わせる。そういう人物が、党の中枢を牛耳っている。
◇
自民党は、なぜ、ここまで劣化したのか。
それは、安倍総裁に権力が集中し過ぎているからだろう。その結果、裸の王様になってしまっている。不都合な事実を注進する人もいないし、政策に諫言する人もいない。いても遠ざけられる。そうして、格差を拡大し、平和主義を放棄する。
こうした政党は、国民に多大な犠牲を払わせるだけだ。だから、やがて崩壊するに違いない。こんどの参院選は、その第1歩になるかも知れない。
(2016.06.13)
(前回 農協攻撃で民主主義を踏みにじるマスコミ)
(前々回 野党は小異を残して大同につけ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
農基法改正案は廃案に 全国食健連が緊急行動 衆院農水委は18日採決へ2024年4月17日
-
「JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会」各地区代表計16チームが決定2024年4月17日
-
食料確保 リスク高まる 生産や備蓄強化と情報の信頼性 農中総研フォーラム2024年4月17日
-
サッカーJ2ベガルタ仙台開催試合でみやぎ米をPR JAグループみやぎ2024年4月17日
-
マルヤナギとJAみのり協働栽培「北播磨のもち麦キラリモチ」おむすび 関西のセブンイレブンで発売2024年4月17日
-
【能登半島地震から100日】現場踏まぬ復興プラン 投入資金"バブル"の恐れ 「榊」出荷の企業家北本政行氏に聞く2024年4月17日
-
YOUはどうして嬉しいの? はて?【小松泰信・地方の眼力】2024年4月17日
-
茨城県JA常陸が子ども食堂を開設 食農教育にも一役「農協の存在を身近に」2024年4月17日
-
【JA人事】JAるもい(北海道)補選で監事に上小倉匤剛氏(4月11日)2024年4月17日
-
農薬出荷数量は5.9%減、農薬出荷金額は2.4%減 2024年農薬年度出荷実績 農薬工業会2024年4月17日
-
業界唯一の加圧式IH炊飯設備の認知拡大目指し「SILK」の専用ウェブサイトを公開 サタケ2024年4月17日
-
畜産DXオンラインセミナー「イノベーターズラウンジ」18日開催2024年4月17日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」ASMRに初挑戦 ご当地煎餅を試食2024年4月17日
-
ジェイエーアメニティーハウス 高速インターネットサービス「NURO 光 Connect」導入2024年4月17日
-
Bリーグ「千葉ジェッツ」第八回食育活動表彰で「農林水産大臣賞」受賞2024年4月17日
-
「第2回 パンのおとも選手権」エントリー受付開始 日本野菜ソムリエ協会2024年4月17日
-
【人事異動】デンカ(5月1日、6月1日付)2024年4月17日
-
富士工業と実証実験 資源循環と環境負荷低減効果を可視化できる数理モデル開発 アクポニ2024年4月17日
-
鳥インフル 米カンザス州からの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年4月17日
-
総合農業パーク「TAKAMIYA AGRIBUSINESS PARK」設立 タカミヤ2024年4月17日