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(007)世界で10億人が関わる協同組合の経済活動2016年11月18日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 協同組合組織に関わる者は、若手や中堅のうちに、是非、協同組合という組織が現在の社会でどのような領域にまで拡大した活動をしているのか、そしてどのようなポジションを占めているのかという点に関し、幅広く国際的な視野を備えてほしい。

 筆者は現在のJA全農に約22年勤務したが、在職中に会内の研修等で世界の協同組合について包括的に学ぶ機会があったかどうか、今では余り記憶にない。幸い、仕事を通じてアルゼンチンやオーストラリアとの協同組合間貿易の実践に携わることが出来た。また、米国中西部の穀物生産農協などとは、トウモロコシの産地調査で何度も訪問し、お世話になった。ただし、これらは全ての人が経験出来るわけではなく、たまたまそのような仕事に配属されたからであり、全体から見れば極めて稀なことであると深く感謝している。
 インターネットの普及は、こうした経験のかなりの部分をパソコンや携帯から各自が確認できることを可能にしている。かつては、限られた仕事でしか世界の協同組合と接することが出来なかったが、今では目の前のディスプレイからいくらでも資料が手に入る。その気になれば筆者が20年かけて見てきたことを1日で見ることも可能になったと言えるからである。

  ※  ※  ※

 実例を示してみよう。Dave Grace and Associatesという会社が2014年4月に国連に提出した協同組合経済に関する英文8頁の簡潔な報告書がある(注1)。 そこには、世界の協同組合の概要が、非常にわかりやすく、興味深い形でまとめられている。かつては入手までに複雑な手続きと多大な時間やコストがかかったこうした報告書を、通勤中の携帯から即座に検索し、無料で読める時代になったということである。
 彼等の調査によると、世界145か国には、約250万の協同組合があり、組合員/顧客数で10億人が関わっているという。個々人が複数の協同組合の組合員ということもあるため、フランスなどのように1人平均2.25の協同組合の組合員ということもある。日本でも生協と農協の組合員になることがあるのと同様である。それにしても協同組合を活用する人は結構な数ではないか。

  ※  ※  ※

 これらの協同組合の職員数は、約1300万人、事業所数77万であるが、これでも中国における農協に相当する組織数約98万はデータが入手できず含まれていないという。
 また、これらの協同組合の総資産は約20兆ドル(約2000兆円)であり、年間の粗収益は約3兆ドル(約300兆円)に達するとされている。
 これはどの程度の規模か。世界銀行による2015年の世界のGDPは約73.5兆ドル(注2)であることを考えれば、協同組合の経済活動は少なくとも世界のGDPの4~5%に相当していることがわかる。もちろん、これを大きいと見るか小さいと見るかは人により異なるとしても、世界で10億人が関わる組織形態という見方ははずれてはいないと思う。むしろ、こうした話が表座敷で余り話されないことの方が問題であろう。

  ※  ※  ※

 さて、現代社会には農協や生協だけでなく様々な形の協同組合があり、いずれも確固たる協同組合原理に基づいて構築・運営されている。その意味では株式会社という原理に基づく組織も同様であるが、これら2つを運営する原理は大きく異なる。
 どちらが優越しているかではなく、考え方の根本が異なると理解した方が良い。組織が、組合員のために仕事をするのか、株主のために仕事をするのか、であり、出資額に関係なく一人一票という原則に基づき運営するのか、あるいは持ち株の大小に応じて意思決定がなされるか、などである。
 冷めた見方をすれば、人間が作ったものである以上、どちらの組織も完璧なものではなく、現実の事業遂行においては様々な障害や調整コストが発生する。
 だからこそ、組織で働く人間は、「そもそも論」や「根本原理」を常に問い続ける必要がある。また、組織を引き継ぐ次の世代には、わかりやすい言葉でその本質を伝え続けていかなければならない。組合員のために仕事をするという、その理念と原理に基づいた活動をしている限り、組合員は組織を支持し続けるはずであり、組織には協同組合であることの社会的な意義が残るからである。
 当たり前の話だが、世の中で一番難しいことは、その「当たり前」のことを普通に実践することに尽きる点を忘れてはならない。

(注1)Dave Grace and Associates, "Measuring the Size and Scope of the Cooperative Economy: Results of the 2014 Global Census on Co-operatives", April 2014, http://www.un.org/esa/socdev/documents/2014/coopsegm/grace.pdf#search='world+cooperative+economy' (2016年11月7日アクセス)
(注2)World Bank"Gross domestic product 2015"World Development Indicators Database, October 2016.
http://databank.worldbank.org/data/download/GDP.pdf#search='World+GDP+in+2014' (2016年11月7日アクセス)

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