新しい労働貴族の誕生2016年12月5日
新しい労働貴族が生まれている。一部の労働組合の幹部が、労働者の上にあぐらをかいて、王侯貴族のように振舞っている。そうして、労働者や農業者や中小資本家など、経済的弱者の怨嗟の的になっている。
大資本家と対峙し、搾取に対して抵抗すべき労働組合の一部が、労働貴族に乗っ取られ、その社会的責任を果たしていない。
それどころか、彼らは、労働組合の幹部の威力をちらつかせて、民進党をそそのかし、経済的強者の大資本家の側に立って、労働者に対する搾取の強化に加担している。労働者の代表のような顔をして、大資本家の下僕になり下がっている。そうして、日本の政治の劣化と、社会の崩壊を招いている。
日本の政治と社会を、こうした状態に陥れた最も深刻な原因は、そこから脱出する主体の不在にある。
今年も、国政を揺るがすような政治決戦が、いくつかあった。そのなかで、多くの地域で野党協力が実現した。参院選では、全ての1人区で野党の統一候補を立てることができた。反安保、反TPP、反原発でまとまったからである。
それらの中には、大成功したところが多かったが、いくつかの課題を残したところもあった。それは、民進党と労働組合の連合との関係である。課題が残ったところを、やや詳しくみよう。
◇
野党統一候補の選挙事務所の光景をみてみよう。そこでは、部屋の中央の大きな机に、連合の幹部がデンと座り、封建領主のような顔をして、あたりを睥睨している。
そして、ときおり、候補者の演説原稿を点検している。TPPと原発についての発言の部分は、特に入念に点検し、赤鉛筆で修正したり、削除したりする。その結果、候補がTPPに反対なのか、原発に反対なのか、分からないようにしてしまう。
新潟の知事選をみてみよう。ここでは、民進党は野党統一候補を推薦しないで、自主投票にした。この候補は、反TPPで反原発の候補だったからである。選挙の結果は、それでも、この候補が勝った。
マスコミの出口調査では、民進党支持者の大半が、この候補に投票した。つまり、民進党は自党の支持者の意志に反し、原発、TPPに反対するな、という連合の要求に答えて、この候補の推薦を拒否したのである。
◇
連合はTPPや原発に反対していない。だからといって、弱者の反発をおそれて賛成とはいえない。だから、それらに触れたくない。それが本音だろう。
民進党は、それを、そっくりそのまま党是にしている。それほどまでに、民進党に対する連合の政治的な影響力は強い。
◇
以上の例は、民進党が連合に牛耳られている実例である。民進党が国民の支持を増やせない原因は、ここにある。
日本の政治が閉塞状態になっているのは、自民党に1党多弱を許しているからである。この状態を打破するには、野党第1党の民進党が先頭に立ち、国民の多数の支持を得て、自民党を国会で少数派に追い込まねばならない。しかし、民進党は、こうした、ていたらくである。
民進党の背後には連合がいて、陰で民進党を操っている。つまり、日本の政治を閉塞状況にした元凶は連合である。
この状況を打破しないかぎり、自民党の1党独裁的な状況は、これからも続くだろう。
連合の労働貴族たちによって、塗炭の苦しみにあえぐのは、労働者だけではない。農業者も中小資本家も、同じ苦しみを味わされている。
民進党が立ち直るには、連合の労働貴族のくびきを断ち切らねばならない。くびきにはまっていたのでは、いつまで経っても民進党に未来はない。
◇
民進党は、連合におびえているが、しかし、連合には、それほど強い政治力はない。いまや、やせ衰えて、傘下の組合員は686万人しかいない。全労働者は6495万人だから、その約1割でしかない。だから、労働者の代表ではない。また、全有権者は1億0620万人だから、その6.5%でしかない。
民進党は、全労働者を含む弱者のための政治をめざすのか、それとも、連合のなかの一部の、落ちぶれた労働貴族のための政治をめざすのか。そうして、強者に奉仕するのか。もちろん、すべての弱者のための政治だろう。
◇
この期待に応えれば、民進党に明るい未来が切り開けるだろう。反原発、反格差、親農協の野党協力の旗頭にもなれるだろう。
与党に対峙する野党の再生にとって、野党第1党である民進党の役割りは大きい。1027万人の農協組合員をはじめ、多くの弱者は、熱い期待をもって見守っている。
注目している当面の課題は、民進党が、日欧EPAと日米FTAに対して、また、安保体制の強化と原発の再稼働に対して、連合からの圧力を排除し、弱者の立場に立って明確に反対できるか、どうかである。
(2016.12.05)
(前回 規制会議が農協を管理)
(前々回 TPP特別委のだらけた議論)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
たまねぎべと病 近畿、中国、四国で多発のおそれ 令和6年度病害虫発生予報第1号 農水省2024年4月18日
-
春メロン4億円の販売を目指す JAくま2024年4月18日
-
安全性検査をクリアの農業機械 農用トラクターなど1機種25型式を公表 農研機構2024年4月18日
-
JAグループのガソリンスタンドに急速充電器「DMM EV CHARGE」導入2024年4月18日
-
【スマート農業の風】(3)データ駆動型農業へ転換しよう2024年4月18日
-
入会牧野【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第287回2024年4月18日
-
チューリップ切り花が復活の兆し【花づくりの現場から 宇田明】第33回2024年4月18日
-
4月1日新事務所移転 緑の安全推進協会2024年4月18日
-
東京農大と共同研究 良食味米「コシヒカリ」で低糖質米を実現 栽培手法を確立 ジェイフロンティア2024年4月18日
-
Oisix「おいしくアップサイクル ふぞろいキウイチップス」など3種発売2024年4月18日
-
「飯縄山」からの伏流水で育つ米と玄米の直売市開催 長野県飯綱町2024年4月18日
-
「食品製造現場におけるロボット等導入及び運用時の衛生管理ガイドライン」を策定 農水省2024年4月18日
-
「みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業」実施計画認定を取得 アイアグリ2024年4月18日
-
微粉砕加工で機能性を付与 北海道産小麦粉「CRONOS」発売 小田象製粉2024年4月18日
-
発色が早いわい性ハボタン「ローブ ホワイト」種子発売 サカタのタネ2024年4月18日
-
日本の原風景「棚田」の魅力を1枚に「棚田カード」第4弾を発行 農水省2024年4月18日
-
鳥インフル ブルガリアからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年4月18日
-
次世代へ繋がる循環型酪農・林業へ 三井住友フィナンシャルグループと協業 ホウライ2024年4月18日
-
国内最大級のドローン専門展示会「第9回JapanDrone2024」6月5日から開催2024年4月18日
-
吉田羊が情感たっぷりに 新CM「すごいよ パウダールウ」篇 エスビー食品2024年4月18日