コラム 詳細

コラム:農協の現場から

【高山 拓郎 JA松本ハイランド 代表理事専務】

2016.12.20 
組合員が動き回る協同組合に一覧へ

 師走も10日過ぎたころ松本で「JAヨリアイin松本」と不思議な名前の付いた集まりがあった。正式名は「対話を通じてJAの未来を考える集まりin松本」。昨年開催の大阪に続いて2回目の開催である。昨年10月に開催されたJAヨリアイin大阪は、JA全青協、JAグループに所属する役職員の人たちが都道府県の枠を超え、ファシリテーション・スキルを活用した対話の場で「地域で存在感のある『価値あるJA』とはどのようなJAか」との問いに対話を重ねた。私も誘われるままに参加し、様々な立場の人があっという間に離れがたい関係性に陥る体験をし、勢いで今年の松本開催を引き受けたのである。日常は全く離れた場所で農業者であったりJA職員であったり県域あるいは全国連の職員であったりあるいは元職員であったりという立場の人が寒さひとしおの松本に集まってきた。

  ※  ※  ※

 ある意味理不尽な「農協改革」が正義の仮面をかぶって跋扈している現況に加え、先ごろの確信犯的な「全農解体の変」という乱気流が吹き荒れている中での開催であったが、遠くは北海道の中標津、西は鳥取まで男女合わせて30名が松本の地に自主的に集まってきた。
 現在のJAの状況を人間の顔にして絵を書いたり、「組合員や地域住民のつぶやきをJAに同期的につなげるためには何を大事にするべきか?」をワールドカフェ方式で模造紙に書き込んだり、この話し合いを通じた個人の気付きを共有したりと、自主的な集まりであるがゆえに一気に盛り上がったことは言うまでもない。
 この日のファシリテーター役は大阪経済大学のヨン様こと芳本講師。今回の会場は当組合の子会社である「山辺ワイナリー」のレストラン。誉れ高いぶどう産地で生まれた新たな関係性はワインとともに一層熟成されて行くものと信じている。

  ※  ※  ※

 JAにとって組合員が主役であることは当たり前のことであるが、主役をお客様扱いすることに慣れてきていないだろうか。お客に役割はないのであり、「組合員が動く」仕組みにしていかなければJAに未来はないとも言える。「官制農協改革」でも組合員との徹底した話し合いがされているのか疑問が投げかけられている最中でもあり、これまで通りの一方通行の情報伝達や単なる同意形成のための「アリバイ作り」では「自己改革」はおぼつかない。
 一つの答えは組合員の参加意識を「言葉」を通じて高めていくことだと思う。人の日常は家族や友人、働く仲間と「言葉」を通じて意思疎通を図ることで成り立っている。
 では、どうしたら主役である組合員が、組合員であることを意識し参加意欲を持つことができるのだろうか。そのためには従来型の話し合いを参加型、すなわち一方通行を双方向に変えていくしかないのである。組合員は「どうせ出席しても結果は決っている。ただ長々と説明を聞くだけ...」との思いを持つ人がほとんどではないだろうか。

  ※  ※  ※

 先日当組合の広報活動への提言等をいただく広報委員会を開催した。必要な情報伝達は行ったが、次年度以降の広報活動のあるべき姿はどうかとグループ討議を行った。これまでの委員会は固い雰囲気で意見も多く出ず、なんとなく消化不良の感があったが、今回は時間が足りないくらいに盛り上がりたくさんのアイデアも生まれた。
 何よりもこれだと確信したのは、特に組合員代表の委員が笑顔一杯に語ってくれたことである。会議前の「こんな忙しい時間に会議に呼んで...」といった不機嫌な顔は全く消えた。参加者全体が語り耳を澄ますことで共感が広がり「参加してよかった」と思ってくれたのではないだろうか。

 JAの会議文化を変えない限りJAは変わることができないとの思いを強くしている。一方通行から双方向へ変え「組合員が」動き回る協同組合にしていかなければとの思いがある。「俺が農協」意識を高め「合意形成」へ変えていくことでしか「大きなおせっかい」に対抗できないと思う。
 共感を「協感」へ、共鳴を「協鳴」へ変えていきたいものである。

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ