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【小松泰信・地方の眼力】民意は地方紙にあり2016年12月21日

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【小松泰信 / 岡山大学大学院教授】

 今回は、TPP承認を受けての社説の読み比べである。検索サイトを通じて確認できたのは、地方紙12紙(略称;北海道、東奥日報、秋田魁新報、岩手日報、茨城、東京・中日、信濃毎日、福井、中國、高知、佐賀、宮崎日日)、全国紙4紙(略称;毎日、読売、産経、日本経済)であった。

◆宮崎日日新聞が伝える、犠牲となる農業への深い憂慮 

 出色の内容は宮崎日日新聞(11日)である。「TPPは、農業を経済基盤とする宮崎にとってマイナスにしかならないのは明白だ。...直近の世界の潮流は、グローバル化に反発する動きとも受け止められている。...TPPが、日本全体だけでなく本県などの地方にどのような影響をもたらすのか明確な答えも出ていない。...『比較優位』の基本理論によれば、TPPの枠組みの中で、日本の得意分野である自動車を輸出する代わりに農業が犠牲になる図式は明らかなのだ。...農業を経済基盤とする宮崎はどうなるのか。その具体的な議論があまりにも不足したまま、TPPは承認されてしまった」と、〝犠牲となる農業〟への深い憂慮が示されている。
 そして、「発効を前提にした『攻めの農業』や『農協改革』に光が当たり、農業全体をどうするのかについて十分に語られることはなかった。考えてみれば、米国のTPP離脱は日本、そして宮崎の農業をもう一度見つめ直すいい機会」として、足元を座標軸に据えた議論の必要性を強調している。

◆通商政策の仕切り直しを求める地方紙多数

 地方紙において特徴的な傾向は、宮崎日日も指摘している通商政策の再検討である。
 中國新聞(10日)は、「現実問題として日本が取る道は一つだ。...TPPを棚上げし、本当の意味で国益に資するよう通商政策を仕切り直すこと」と、指摘する。そして、タフな交渉を求められそうな日米自由貿易協定(FTA)を意識し、「国会審議を通じ、首相がFTA交渉に対する考えを明言しなかったのは心もとない」と、準備不足を懸念する。さらに、「目先の利益ではなく中山間地域を含めた持続可能な地域づくりの視点」を強調するとともに、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)について、十分な情報開示を行い、「できる限りガラス張りで国内の合意形成へ議論すること」を求めている。
 東奥日報(14日)は、「...自由貿易の推進役だった米国が方向を転じようとしているこの機会に、TPPのように多国間でブロックを形成するFTAなどの功罪について考えるべきではないか。利点だけでなく弊害にも目を向け是正」することを求めている。
 秋田魁新報(13日)は、「これまでグローバル化一辺倒だった国際経済で、適切な競争や協調とはどうあるべきかについての議論でこそ、日米がリーダーシップを取ることが求められているのではないか」と、日米の姿勢を問うている。
 北海道新聞(11日)は、「協定には、グローバル企業に有利なルールなど数多くの問題がある。その内容を他国との交渉の出発点にして、日本の産業や国民の安全を守れるのか。政府は通商交渉に臨む姿勢を根本から練り直すべきだ」とする。
 高知新聞(10日)は、「自由貿易体制の拡大、強化を重視するのであれば、...情勢の変化に応じた通商政策を練り直すべきだろう。日本は、中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などと『東アジア地域包括的経済連携(RCEP)』の交渉を進めている。...2国間協定を推進する選択肢もある」と、TPPに代わる戦略の早急な提示を求めている。
 佐賀新聞(9日)も、「TPPを軸にしたシナリオが大きく崩れた以上、抜本的な立て直しを急ぐ必要がある。政府はTPPはいったん脇に置いて、経済、外交ともに新たな戦略へと踏み出すべき」としている。

◆世界貿易機関(WTO)への期待 

 現在やや影が薄くなっているWTOについて、地方2紙と全国1紙が言及している。
 茨城新聞(10日)は、「...TPPのように多国間でブロックを形成する自由貿易協定(FTA)や貿易自由化の功罪について考えるべきではないだろうか。...ブロック化の弊害に対する歴史的反省から世界貿易機関(WTO)が存在する。ここ数年停滞したままの新たな貿易ルール作りを再起動すべきときだろう」と、WTOの再起動を求めている。
 東京・中日新聞(10日)も、「...164カ国・地域が加盟する世界貿易機関(WTO)のルールがしっかり存在する。これを土台に、各国と協力して保護主義的な動きを押さえ込むことが重要」としている。
 日本経済新聞(11日)は、「WTOは世界共通の貿易ルールをつくるとともに、加盟国の貿易紛争を解決する機能を持つ『自由貿易の番人』だ。その価値は日本が率先して守らねばならない」と、日本の役割を指摘する。

◆民意とはほど遠き全国紙

 全国4紙は極めて類似した内容で、〝国会決議への賛意〟〝トランプ氏への翻意要請〟〝自由貿易の加速〟からなる。
 産経新聞(10日)は、「保護主義に流れず、自由貿易の拡大を成長の礎にしようとする日本の意思を内外に示せた...。...残る11カ国が粘り強く翻意を促すべきことに変わりはない。...日本はTPPを通じて自由貿易や民主主義の価値観を共有する経済圏を確立し、これを世界に波及させる路線を崩す必要はない。同時に、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉を妥結させるなど、保護主義の否定を行動で示すことが重要」とする。
 日本経済新聞(11日)は、「ひとまず国会承認を歓迎したい。...TPPの価値をトランプ次期政権に粘り強く訴えてほしい。同時に、TPP以外の貿易自由化交渉を切れ目なく加速させなければならない。...日本は一定の質を伴うRCEP合意の道筋を整えつつ、TPP推進の機運も高めていく。...欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉でも、年内か来年早々の大筋合意を導いてほしい」と、自由貿易の推進役を期待する。
 毎日新聞(11日)は、「...日本として自由貿易を推進する姿勢が変わらないと示したことには意義がある。国会承認を踏まえて政府はトランプ氏に翻意を働きかけてほしい。...(RCEPの)自由化目標は低い。日本は水準を高める役割も担ってほしい。日本は欧州連合(EU)との経済連携協定も年内の大筋合意を目指している。日本の農産物関税などで対立点が残るが、大局的観点から前進させる必要がある」と、農業軽視の論調である。
 読売新聞(10日)は、「逆風にさらされる自由貿易協定を守ることが、日本の責務である。...米新政権が基本政策を固めていく過程で、TPPの意義を再認識するよう、日本が主導して働きかけを続けることが大切だ。...日本は、RCEPでも高水準の内容を目指すことが重要だ。...日本の通商戦略にとって喫緊の課題は、...EUとの経済連携協定である。...日本は自動車の関税撤廃を求め、EUからは農産物の市場開放を迫られる構図だ。早期合意に向け、最大限の努力が求められよう」と、同紙も農業軽視の論調である。
 政権与党の数と意地だけの国会決議を賞賛し、トランプ氏へのムダな説得を訴え、行き過ぎた資本主義の欠陥を反省することもなく農業に犠牲を強いる自由貿易の促進を求める。このような全国紙の姿勢には失望するばかりである。

◆評価すべき地方紙の見識

 全国紙の論調が決して民意ではないことを地方紙は、足元から突きつけている。
 岩手日報(11日)は、「グローバル化で富を得てきたはずの米英両国で、そこから取り残された大勢の人が『ノー』を発した。今後、世界はグローバル化の流れを修正せざるを得なくなろう。原則として関税をなくすTPPでは、日本も間違いなく取り残される人、地域が現れる。その対策が十分でないままの批准は、時代に逆行していると言わざるを得ない」と、人と地域からの目線を展開する。
 信濃毎日新聞(10日)は、「TPPの内容に関する審議でも、政府は現実を覆い隠した。...農業分野に与える影響の試算が代表的だ。...自由貿易には『痛み』が存在する。どんな影響を受けるのか詳細に分析して国民に全て公表し、可能な範囲で対策を打ち出すことが必要だ」と、影響に関する正確な情報公開と適切な対策を求める。
 福井新聞(10日)は、「安倍首相は、...『自由貿易こそが世界の平和と繁栄に不可欠』と力説してきた。ではどれだけのメリットがあるのか。(政府が公表した経済効果は)いずれも根拠が不十分で信憑性に欠ける」としたうえで、「そもそも『聖域』をつくること自体が保護主義ではないか」と、その矛盾に切り込んでいる。
 地域の産業と暮らしに立脚すればこその執筆姿勢と見識が、地方紙からは伝わってくる。まさに民意はここにあり。
 「地方の眼力」なめんなよ

(前回 白札とは白旗の意味ですね

(前々回 攻撃は続く。戦いは終わらない

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