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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2017.01.05 
-年明けにあらためて"メガEPA"について-一覧へ

◆覇権主義としての自由(貿易)主義、排外主義になりかねない保護(貿易)主義

 TPPは、締約国同士が競争をし、貿易と投資の拡大を最優先することにより域外経済に対しては保護主義的になり、一方で門戸を広げるという形で勢力圏拡大を目指している。
 各国の規制を平準化し、そのもとで競争と成長を絶対視する原理にのみ頼ることは、各国の産業の発展段階・社会の成熟度を無視することであり、均衡ある社会を作る道を閉ざすことにつながる。"先進国"も国内産業育成の道を辿って成長してきたはずだ。自由貿易対保護貿易、規制緩和対規制の対立軸ではなく、共生の原理を大切にし、個々の地域の主権・それぞれの国々の主権を尊重することこそ大切にされるべきと考えたい。

◆TPPを貫くもの

 TPPを象徴する規定は、「透明性」(による政策決定過程へのグロ-バル企業の関与拡大)、「規制の整合性」(によるグロ-バルな事業環境整備)、そして(投資家を守る)「ISDS」(投資家対国家間紛争処理)だ。
 中でも「規制の整合性」はTPPで初めて登場した分野横断的な章であり、その規律は締約国の国内の地域や途上国など弱い存在を支えるための独自の規律を封じ込めて、貿易・投資の円滑な拡大を促進する方向に収斂させる。そして多くの章・分野に設置されている「小委員会」とそこにおける"見直し"規定が不断に各国の規制を緩和し整合的なものにするはずだ
 TPPは、このようにして、グロ-バル企業のために開かれた自由な事業空間を用意し、競争条件を整え、利益の最大化を可能にする

◆25章「規制の整合性」は何処から来たのか?

 「規制の整合性」にはTPPの"思想性"が如実に示されている。(章の全文⇒http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_25.pdf
 「規制の整合性」は米・豪・NZ主導で盛り込まれた規律だが、TPPのための米国ビジネス連合による「TPPの原則」(10年9月)、米日経済協議会による「TPPへの日本の参加の実現に向けて-"WTO+"の21世紀型FTAが求める条件-」(11年7月)などにその内容が端的に述べられている。「TPPは、責任と科学的根拠に裏打ちされ、国際的な最適な慣行に一致する、そしてTPP参加国政府・利害関係者の間での高水準の協力が確保される、透明性・実効性・拘束力のある、相互に整合する仕組みを保証することで、経済成長を促進できる。」
 
◆25章「規制の整合性」に書かれている内容は?

 25章の3条で「対象規制措置の範囲は、発効後1年以内に決定し、公表する」こととなっているため、どんな規制がこの章の規制対象となるのかも分からない。
 昨年TPP政府対策本部と意見交換した際には、「あくまで締約国各々に規制措置を定める主権的権利があり、公共政策を達成する上での規制の役割などの重要性を明確に確認し(条2項)、自国の規制に関する取り組み方法が個別的なものとなり得ることを認めている(5条2項)など、各国の規制の内容を同一・同水準にするものではない。」との説明だった。
 しかし、2条の一般規定の内容や目的(規制に対して包括的に対処し、貿易・投資拡大の円滑化を最優先)、6条の小委員会の機能(将来の規制の優先事項の特定、協定の利益拡大のための規定の改善勧告など)、8条の締約国利害関係者の関与、9条の実施の通報(情報開示、見直し、改善、小委員会での検討など)などを通じ、締約国全体の規制を出来るだけ同様の水準・内容に"収斂していく枠組み"であり、国内・締約国間・各締約国の規制措置の"整合性の拡大を追求"するもの、と理解せざるを得ない。
 12月1日掲載のコラムで紹介した「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」がまさにそのことを体現している。
 ⇒http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/side_letter_yaku/side_letter_yaku21.pdf

 安倍首相は、「TPPは世界が目指すべきル-ル」(12月9日国会答弁)であり、今後の自由貿易の基準はTPPだと信じているようだ。漂流しているTPPをあくまで成長戦略の柱とし、日欧EPA、RCEP、FTAAPに拡大しようとする強硬な姿勢が果たして戦略たり得るのか問いたいものだ。

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