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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2017.01.23 
トランプ演説にみる国民統合と分断一覧へ

 トランプが1月20日、大統領に就任した。世界中が注目した就任演説は短いもので、彼の政策を直截に示すものだった(本文下のリンクを参照)。
 その内容をみると、これまでの政治は、一部の支配層(エスタブリッシュメント)のための政治だったが、これからは、国民の大多数の労働者のための政治に変える、というものである。
 この演説に対して、支配層の側に立つ多くのマスコミと評論家は、国民を支配層と労働者層に分断させるものだ、という非難を浴びせかけている。これまでの大統領のように、賛成派も反対派も心を合わせて、いいアメリカを作ろう、などという国民統合の奇麗ごとをいう、お上品な演説でなかったからだろう。
 このことを、どう考えればいいのだろうか。

 トランプは、これまでの政治は、一部の支配層だけを繁栄させるもので、それは多くの国民の代償によるものだった、と断じている。安いものを外国から輸入し、国内の工場を閉鎖して海外へ移転させ、アメリカの雇用を減らしてきた。そうして中間層は富を奪われ、格差を広げ、さらに教育を破壊し、犯罪と薬物を蔓延させてきた、というわけである。
 これからは、こうした政治から決別するという。今後は、アメリカ第1の政治に変えるという。これからの政治は、アメリカの労働者とアメリカの家族の利益のための政治にする、とまで言っている。

   ◇

 この演説は、多くの評論家がいうように、分断を煽るものだろうか。そうではない。分断をもたらした、これまでの政治を、真正面に据えて、容赦なく断罪したものである。
 だから、非難されるべきは、この演説ではなく、分断をもたらした、これまでの政治である。
 これまでの政治は、一部の支配層がより富裕になれば、その富が労働者に滴り落ちて、国民の全体が富裕になるという考えだった。しかし、この演説は、この考えを全面的に否定した。そして、これまでの政治が、一部の支配層をますます富裕にし、大部分の国民を貧困に陥らせたことを、やや粗野な表現で厳しく告発した。それゆえ、支配層から激しく非難されている。しかし、多くの国民からは熱烈に支持されている。
 だから、この演説は、労働者をはじめとする多くの国民から支持された、高らかな勝利宣言である。この演説に対する非難は、敗北した一部の支配層が、不貞腐れて強がりを歌う、曳かれ者の小唄である。

   ◇

 さて、日本にとってトランプはどうか。
 日本の重大な関心事はTPPである。トランプは、TPPについて、公約どおり就任初日に離脱を表明した。これでTPPは完全に消滅した。だが、安倍晋三首相は、この消えた幻想を追い続けている。滑稽としかいいようがない。
 だが、TPPが消滅したからといって安心してはいられない。トランプは日米二国間のFTA交渉を加速してくるだろう。そのとき、日本の政府は、トランプのように、日本の雇用を第一に考えて交渉するだろうか。それとも、一部の支配層の利益を優先して、農業者や労働者や中小企業者の利益を犠牲にするのだろうか。
 これからは、日本とアメリカとの間の、および両国の支配層と農業者、労働者、中小企業者との間の鋭い対立が予想される。その対立のなかで、それぞれの地力が厳しく問われることになるだろう。
 そうして、やがて日本もアメリカと同じように、農業者や労働者や中小企業者が、これまでの支配層のための政治を、覆すことになるだろう。
(2017.01.23)


就任演説の英語全文は ... ココ

就任演説の日本語の全文訳は ... ココ

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