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コラム:地方の眼力

【小松泰信 岡山大学大学院教授】

2017.02.22 
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 「将来の日本農業を支える人材は皆、グローバルGAP、国際認証の取得が当たり前だという発想で農業をやっていく、これが最大の農業改革だと思っている。全ての農業高校でグローバルGAPの取得を実現すべきだ」とは、2月15日の衆院農水委における小泉氏の言(日本農業新聞2月16日)。1月25日の当コラムで予言した通りのわかりやすさ。

◆オリンピックを出汁にしたオネガイはキカナイ

 また氏は同委員会で、東京五輪・パラリンピックの選手村などで使われる食材には、農業生産工程管理(GAP)の認証取得が要件となるため、「どの品目で(GAP認証が)必要なのか発表しないと、生産者が対応できない」と、早急な取りまとめを求めている。〝オリンピックのために〟と言えば、生産者やJAグループがヨッシャ! と動くと思っているとすれば、身勝手な誤解。すでに予言しているが、あんたの笛ではだれも踊りませんから。〝JA解体でチャンス到来! 儲かる農業2017〟と賑やかなタイトルの『週刊ダイヤモンド』(2月18日号)でさえも、〝政官笛吹けども農家は踊らずGAP認証が浸透しない訳〟を教える、進次郞必読のコーナーを設けている。
 すでに当コラムで指摘したように、五輪後に開催国の料理や食材が世界に普及したという話は聞かない。少なくとも近年の開催国(ブラジル、イギリス、ロシア、カナダなど)の料理や食材が、わが国の食生活に浸透してきたという話はまったくない。和食なら大丈夫、なんて思わない方が良い。驕りなさんな、煽りなさんな。
 生産者は日々の営農と生活で、JAグループは自己改革で多忙です。改革派のお気に入りの〝担い手農家〟に、GAP認証食材を発注されることをお勧めする。間に合わなかったら輸入すればよい。その時、自給率がどの程度になるのかが見物。39%未満になったら、近い将来のわが国の自給率が体験できて、いい勉強になるはず。
 JAグループの農家組合員も、農業やJAを蔑(ないがし)ろにしておきながら〝断れないよネ〟と言わんばかりの、現政権与党からのオネガイはキカナイこと。これも一つの兵糧攻めよ。
 そう言えば、長野市にある中央タクシーは、冬季長野オリンピックの特需景気に沸く業界の中、今儲かるからといって、病院への行き来など毎日利用しているご老人や常連さんを無視してはいけないという立場から、「お得意先優先」の決断をした。この決断が市民の信頼を高め、需要激減に苦しむ他社を尻目に高い売上を上げるようになった、そうである(当社のHP参考)。大切な人をもっと大切に。

◆駄本はドボン

 2月15日の日本農業新聞は、衆院TPP特別委員会における審議紛糾の一因となった訳あり本の出版記念パーティーについて紹介している。自分らでは突っ込めない状況にあるのか、だれか突っ込んでくれ、と言わんばかりの書きぶりに応えさせていただく。
 著者の西川氏は、「...日米の2国間交渉は避けるべきと強調」し、近く訪米してTPPの意義を伝えるとのこと。と言うことは、日米FTAには反対するのですね。それ以上に興味があるのは土産の品です。何を、いかほどお持ちになるのでしょうか。さらに氏は、「交渉のやり方と結果が書いてある。教科書的な使い方をしてほしい」そうだが、片腹痛い。国会決議の反故の仕方や、国民をあざむく手口についてでも書かれているのか。だとすれば、反面教科書? 的な使い方もありか。
 小泉氏は、「私のことを『族議員の仲間入り』と書いた本は初めてだ。大変光栄」と持ち上げたそうである。ところでその族とは、脳淋族のことですよね。
 中野全農会長が乾杯の音頭をとったそうだが、〝完敗〟〝献杯〟、それともトランプ氏への感謝の気持ちに満ち満ちた〝乾杯〟、心境や如何に。
 二階氏らが祝辞を述べ、金丸氏や奥原氏らも姿を見せたとのこと。百鬼夜行の夜会模様、くわばら、くわばら。
 いずれにしても、ウォシュレット派の筆者には落とし紙にもならない駄本であること、間違いなし。

◆詐術的パフォーマンスには眉に唾して臨むべし

 前掲『週刊ダイヤモンド』の〝「農政改革は死なず!」小泉進次郞の大反論〟において氏は、「農は国の本なりという言葉がありますが、今こそ、農政改革の歩みは、日本にとって必ずやプラスに働きます。土台を固める。国家の基礎をしっかり固める。その足腰になるのが農業です」と、大きく見せようと無理したのか、魂のこもらぬセリフを平気で吐いている。しかし、二次産業や三次産業の論理に基づく〝強い農業〟がわが国の土台になりきれないことにまだ気づけないのだろうか。土台、操り人形に期待しても詮無いことか。さらに「今や、農業は私のライフワークです。農林部会長という経験なく、政治家として歩む道があったとするならば、それは想像しただけでも恐ろしいですね」と続けている。しかし当コラムとしては、氏が農業問題をライフワークとしていることの方が、チョー恐ろしいですね。ここでもしつこく、くわばら、くわばら。
 日本農業新聞は2月17日のコラムにおいて、「言葉の魔術師」と呼ばれた北原白秋をマクラに使い、「今の魔術の使い手」に小泉氏をあげている。レベルも品格も違うだろう。一緒にするな。媚びを売っているとすれば、キタハラ痛い。それはさておき、「主張にはくみしないが、清新な青年将校然で発した言葉は記憶に残る。西日本の集会で話を聞いた組合長は『周りをのみ込む雰囲気だった』と脱帽した。目くらましは駄目だが、言葉の術は学びたい」とのオチ。
 幸いにも青年将校にお目にかかったことがないので想像できないが、〝清新〟〝周りをのみ込む〟そして〝脱帽〟とは、恐れ入谷の鬼子母神。
 でもね、詐術的パフォーマンスは小泉屋の御家芸。組合長はじめ、純朴な人ほどだまされる。聴衆は眉に唾をつけることをお忘れなく。そして、どんどんしゃべらせるべし。そのおしゃべりからは、奥行も深みもない浅薄な知識、意識、そして政治姿勢が浮かび上がってくるはず。僭越ながら、しゃべりに自信なさげなコラム子には、言葉の術など望まず、筆力をつけることをお勧めする。なぜなら、ペンは言より強し。
 「地方の眼力」なめんなよ

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