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コラム:植草一秀の「政治を斬る」

【植草一秀(政治経済学者)】

2017.02.28 
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◆スキャンダルの表面化
 
 大阪の学校法人森友学園に国有地が激安価格で払い下げられたことが明るみに出た。不動産鑑定評価額9億5600万円の国有地が、地下埋設物撤去及び処理費用として8億1974万円が差し引かれた1億3400万円払い下げられていた。埋設物撤去の実費として8億1974万円が計上されているのなら理解できるが、その事実が確認されていない。しかも、森友学園には、これとは別に土壌改良、埋設物撤去工事代金として、国から1億3176万円が支払われている。現金収支では9億5600万円の評価額の土地の所有権を渡しているのに、国の純収入は約200万円しかない。しかも、1億3400万円の購入は10回払いの分割払いで、まだ頭金しか納入されていない。
 この学校法人は幼稚園を運営しているが、その幼稚園は教育勅語を暗誦させることや外国人差別などの問題で話題になっている。さらに、件の国有地に建設中の小学校の名誉校長には安倍晋三首相夫人の安倍昭惠氏が就任しており、安倍秋絵恵氏は2015年9月に開かれた同学園の講演会で「こちらの教育方針は大変主人もすばらしいという風に思っていて」と発言している。
 安倍首相は国会質疑で、自分や妻が学校認可や土地取引に関わっていれば、総理も議員も辞めると明言した。学校認可や土地取引が不正なものであるとの認識を示したことになる。
 安倍政権は今国会に「家庭教育支援法案」なる法律案を提出する予定である。2006年の改正教育基本法第10条に、「国及び地方公共団体は家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」との条文があり、これを根拠に国家が家庭教育に介入するための具体的な法律が制定されるものと推察される。
 
◆水と種子と教育
 
 森友学園が運営する幼稚園や小学校での教育は軍国主義教育と評価せざるを得ないが、この学校を安倍政権が推進する教育のモデルケースにしようとの思惑が存在するのではないかと推察される。
 国民の命と未来を守る根幹は食糧、水、教育である。この三者は私たちの命と未来にとって、かけがえのない存在である。食糧においては、やはり主食、主要農作物が重要である。そして、水では、飲用可能な、安全でおいしい水こそ、究極の重要資源である。そして、未来を生き抜くことができる個人を生み出す教育こそ、国の根幹であると言える。
 主食である主要農作物の果実を獲得するために必要不可欠な存在が種苗である。種苗が存在しなければ果実を手にすることはできない。食糧の根幹に種苗が位置付けられる。
 安倍政権はこの国会に、この三つの主要事項に関わる重大法案を提出する。上記の「家庭教育支援法案」に加えて、「水道法改正案」、「主要農作物種子法廃止法案」が提出される。
 平成の治安維持法と呼ばれる「共謀罪創設法案」=「テロ等組織犯罪準備罪創設法案」に関心が寄せられているが、これに匹敵する重大な意味を持つ法案群が一気に提出される見通しなのである。すでに、その一部は法案として提出済みである。

◆悪徳の規制改革推進会議

 主要農作物種子法は、基礎食糧の稲、麦、大豆について、新種開発を国や都道府県などの公的機関に限定し、種子を生産し、普及することを義務付ける。これまで数回の改正を経て、民間企業の参入を認める規制緩和が講じられてきた。
 しかし、民間が開発する種子の流通が限定的であり、新規参入が阻害されているとして、種子法自体を廃止して品種開発を促進することが必要との理屈で、今回の廃止法案が提出されると説明されている。
 政府は「農業競争力強化支援法案」など7本の農業改革法案を提出したが、これと合わせて種子法廃止法案も提出されている。
 「農業競争力強化支援法案」が定める「国が講ずべき施策」として国や都道府県が持つ種苗素材や施設を民間に提供し、国が民間を手助けして新種開発を加速させることなどが目指されている。
 「障害者自立支援法」、「家庭教育支援法」、「農業競争力強化支援法」など、法律には「美名」が付けられるが、重要なのは内容である。誰のための制度なのか、何を目的とする制度なのかが重要なのだ。
 「農業改革法案」を策定しているのは「規制改革推進会議」である。TPP合意文書第25」章に「規制の整合性」なる章が置かれた。その第6条の規定に基づき、「規制の整合性に関する小委員会」が設置され、それぞれの国の代表者が参加し、各締約国の規制の見直しや簡素化または廃止の状況を監視することとされた。同時に、第4条で「各締約国は、この目的のため、国内または中央の調整機関を設立し、及び維持することを検討すべきである」としている。外務省は規制改革推進会議が日本における調整機関には該当するとしている。
 
◆ハゲタカから種子を守れ
 
 米国のトランプ大統領がTPP離脱の大統領令に署名したことから、TPPそのものの発効は不可能な状況にある。しかし、安倍政権はTPP承認案を強行可決した。そして、日本ではTPPの浮遊霊が大手を振って霞が関、永田町をさまよっているのである。
 TPP協議に参加する際に設置された日米並行協議にかかる交換文書において、「日本国政府は(中略)外国投資家その他の利害関係者から意見および提言を求める。意見および提言は、(中略)定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」と明記されている。
 要するに、外国資本の指令、命令に従って、規制改革推進会議が行動し、外国資本の利益のために、日本の諸制度、諸規制を改変することが、白昼堂々と展開されているのである。
 種子法の廃止は、ハゲタカ資本が日本の種子を支配し、日本農業のみならず、日本国民の食糧をハゲタカが支配することを目的とする背徳の立法行為であると断言してよいだろう。
 農業改革は、農家の農業を支援するものでない。農家の農業を排除して、巨大資本が支配する農業を日本に構築することを目指すものなのだ。法律の名称が「美名」で、条文の表現は理解しがたく、官僚の説明はみせかけのきれいごとに過ぎないために、私たちの暮らし、命、未来を破壊し尽くしてしまう悪徳の謀略を見抜くことは容易でない。しかし、本質を洞察して、悪徳の行動を体を張って阻止しなければ、この国の農業だけでなく、国そのものがハゲタカにかすめ取られてしまうことになる。

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