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【小松泰信・地方の眼力】土の綻びは国の綻び ―条件不利地への政策の強化を―2017年4月6日

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【加藤一郎(前全農代表理事専務)】

 岡山大学大学院小松教授は、JAcomのコラム「地方の眼力」で「わが国において産業問題と地域問題が渾然一体となっている農業・農村問題を、新自由主義政策で解決しようとした時の代償がいかに大きいか」と指摘した(文末にリンク)。今後の農業行政は、産業としての農業と地域社会政策としての農業とに区分して考える必要があると考える。我が国は国家戦略として農業を基幹産業として位置づけてきたのだろうか。

 国家戦略として農業を位置づけた国フランスでは「農業を強くしなければならない。食糧は自給」との強い政治的意思があった。また米国では「食糧生産は国の存立条件」として、F.D.ルーズベルト大統領はニューディール政策において「土の綻びは国の綻び」として土壌侵食問題に挑戦・土壌保護局を新設し、その後、土壌保全から環境保全政策につながる諸政策を実施してきた。
 両国とも産業としての農業の確立を確固とする政策である。

◆フランス農業の栄光の50年

 フランスは農業基本法(LOA)(1960年) 制定から、農業の構造改革政策にとりくみ、経営規模は約70haと60年間で約7倍に拡大し、平均年齢も40歳半ばに10歳若返り、食料自給率120%の農業大国に生まれ変わった。
 わが国も同様の課題から農業基本法を1961年に制定し、1999年食料・農業・農村基本法に改定、2010年新たな食料・農業・農村基本計画を策定したが、自給率は40%に低迷し、構造改革が進んでいない。
 フランスの構造改革が成功した要因は、(1)農地売買を仲介する「農村土地整備公社」(サフェール)の農地の先買権と規模拡大の意欲をもつ農家に選択販売権を持たせたことにより、規模拡大と宅地化や商業地の転用を防げた。(2)農地賃貸借改革は40%を占める小作地の存在を前提に貸借権の強化安定をはかった。(3)当初から家族経営の借地型経営の発展モデルを追求してきた。(4)離農終身補償金制度は経営主の世代交代と、農地流動化を促進するため引退年齢の農業者が経営移譲をした場合、全額国庫拠出の基金で負担している。
 また、国民の食文化の執着、マルシェの活況、条件不利地域対策(直接支払い)の強化、農用地の多面的価値、機能の承認、新規就農者支援制度など、があげられる。

◆必要とされる日本版連邦倒産法12章

 米国では国家戦略として食料生産は国の存立条件と位置づけ、企業の民事再生(11章)と区分した連邦倒産法(12章)として、農業経営の再生・債務整理の条項がある。
 我が国は「農地中間管理機構」による農地集積による経営規模拡大をめざした政策が行われ始めたが、2009年富山県黒部市の農業有限会社「リーフ」が倒産した事例をどう考えるかの視点が欠如している。
 同社は、高齢化した農家の稲作生産を受託する形で経営規模を約70haまで拡大したが、米価の下落と大型農機などへの過大投資で経営破綻した。周辺の農家が急遽委託農地を請け戻して約50haの耕作が継続されたが、残り約20haの農地は耕作放棄地となった。産業としての農業政策には出口対策が欠如している。
 米国の農業は、(1)国家として食糧供給という公益的側面がある。(2)農業経営は、他の業種より不安定な基盤のうえで経営されている。(3)農業経営者はまとめて収入をえる形態をとることが多く、農産物の相場、気象条件等による生産の不安定性という特殊性がある。(4)主たる財産は農地、農業機械であり、担保権が実行されると再起更生が不可能になること等、 農業経営者は債権者からの申し立てによって強制的に清算手続きが開始されることからの保護がはかられている。そして手続きが開始されても、債務者が財産(農地、農機等)の占有を継続できるのである。また 弁済計画が天候等の不可抗力によって頓挫しても免責、弁済期間の延期等の制度がある。
 しかるに我が国では規模拡大にともなう経営破綻対策が法制度として確立されていない。

◆循環型で持続可能な地域社会政策としての農業

 国土の70%を中山間地が占める我が国の農業は、農家一戸あたりの農地面積は約2ha(米国約200 ha、豪州約3030 ha)にすぎず、販売農家163万戸のうち専業農家45万戸、兼業農家118万戸(72%)で、専業農家のうち65歳未満の男子世帯員(生産年齢人口)のいる農家は18万戸の状況となっている。2011年の個別経営の農業所得は120万円、農外所得160万円、年金等収入180万円を合算して総所得として460万円で家計を維持しているのが現状である。我が国の稲作は関税を撤廃すれば、兼業農家は国際競争の場では生き残れない。兼業農家が成り立たなくなると、地方経済も成り立たなくなり、ますます過疎化が進む。
 故宇沢弘文氏は「魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にする社会的装置として、自然環境、社会的インフラ(道路、水道、電力等)、制度資本(教育、医療、司法、金融)を社会的共通資本とした」(『宇沢先生と私の対談』農業協同組合新聞2010年10月10日号)では「世の中には市場に委ねてはならないものが存在する。農業もその一つであり、農村という社会的な場を中心として、自然と人間との調和的な関わり方を可能にしてきた。人口の一定の割合が農村で生活しているということが、社会的安定性を維持するために不可欠なものとなっている」と言われた。
 食料・環境問題は全国民の課題であり、都市と地方の格差拡大は放置できない。環境の維持なくして健全な農業・経済・国家はありえない。モノは輸入できても、景観・環境は輸入できないことを思いおこすべきである。社会的共通資本と市場経済を、いかにバランスをとって展開するかが求められている。
 兼業農家の農業や棚田などでの農業は、産業として農業とは言い難い時代に入った。しかしながら、兼業農業は他産業からの収入と年金収入と合算して家計を維持し、地方経済を支えているのは厳然たる事実である。また大都会に移住することなく、生まれた故郷に住み続けたいと考える地域住民がその地域を支えていることを忘れてはいけない。経済成長戦略だけで、日本の将来方向を考えて良いのだろうか。
 村上龍氏は「日本の伝統的行事」で「グローバリズムによる国家の枠の弱体化と地域社会の疲弊、共同体意識の喪失、無形財産である伝統的行事が廃れることで、日本人の精神文化が危機的状況」と指摘している。
 いまこそ条件不利地に対する直接支払い制度などを強化する政策が必要である。

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