トランプと金正恩に振り廻される世界と日本 安倍政権に求められる平和主義と自立性2017年4月25日
『戦争はその経験なき人々には甘美である。だが経験した者は、戦争が近づくと心底大いに恐れるのだ(ピンダロス)』
◆新たな戦争の危険
戦争の危機を騒ぎたてるポピュリズムの風潮に同調したくはありませんが、新たな戦争の危険が迫っていると私は感じています。
第一に、世界最大の軍事大国の大統領に、何をするか予測できない協調性なきトランプ氏が就任し、米国の軍事力を行使し始めています。トランプ大統領には何をしでかすかわからない不安がつきまとっています。
第二に、北朝鮮の動きが度を越す危険性があり、米国という虎の尾を踏む可能性があります。すでに虎の尾を踏んでしまっているという見方すらあります。
第三に、トランプ大統領と金正恩委員長の暴走を止め平和を守る力が、米国政府内にもなく、北朝鮮政府内にもなく、さらに国連にも他の国々の政府にもないことです。
この原因は、現在の世界の指導者のほとんどが世界戦争を経験しておらず、戦争の恐ろしさを知らないところからきていると私は思います。もちろん、戦争を経験していないすべての人々が戦争を好んでいるわけではありません。一般市民の大多数は平和主義者です。しかし現代の軍国主義国家指導者は平和主義者とはいえません。戦争をすることへの自制心を失っている政府権力者は少なくないのです。私は安倍総理にもあやうさを感じています。
第二次大戦後の72年間を振り返ってみますと、世界大戦の経験者が政府の中枢部にいる内は、各国政府の平和主義は堅持されていました。しかし戦争経験者が政界にいなくなると、戦争を恐れない世代が登場し、政権を担うようになりました。軍事力を振り回すトランプ大統領、金正恩委員長の冒険主義をまねしようとする政治家もいます。
日本政府の外交政策は、従来は、第一に日米協調(最近は日米同盟)堅持、第二にアジア諸国との友好推進、第三に国連中心主義の三本立てでしたが、今の安倍政権の外交政策は「日米同盟ファースト」です。アジアとの友好協力関係を軽視しているようにみえます。国連に対しても不熱心です。安倍政権はアジア重視、国連重視に立ち返るべきです。米国への従属政治からの脱却が必要です。
◆乱れ始めた日本の政治・行政
2017年4月現在、日本の国内政治で最も注目されているのは来る7月2日投開票の東京都議会議員選挙です。小池新党ともいうべき「都民ファーストの会」と自由民主党東京都連との対立は激化しています。最近まで東京都政で自民党と連立を組んでいた公明党は都議会自民党と訣別し、小池都知事を支える側に立ち、「都民ファーストの会」と選挙協力をすることにしました。国政においては自公連立体制は維持されていますが、東京においては連立は崩壊し自民党と公明党は対立関係になりました。国政と都政がねじれてしまったのです。自民党と公明党の間にすきま風が吹き始めています。都議選の結果によっては、中央政界に変動が起こる可能性があります。またこうした事態を避けるために、東京都議選前か当日に衆議院選挙を実施する可能性もないとはいえません。政治情勢は流動的です。
安倍総理周辺からは、「総理は早期の解散総選挙に消極的」との情報が流布されていますが、政界、一寸先は闇です。
◆安倍政権の二つの弱点
安倍内閣の支持率はいぜんとして高い数字を示していますが安倍政治に対する批判は徐々に広がっています。とくに目立つのが次の二つの批判です。
一つは、安倍総理のトランプ大統領に対する過度の従属的姿勢への批判です。たしかに北朝鮮の危険な動きを止めるためには米国の力が必要です。しかし米国の首にぶら下がるような安倍総理の姿勢には不満が高まっています。米国政府が求める二国間交渉でトランプ大統領に従属するようなことは許されません。とくに日本の農業を守るために奮闘すべきです。
東北アジアの平和構築のため日本と中国との強力が必要です。安倍総理は反中国の外交姿勢を転換し、中国政府との協力関係確立の努力をすべきです。
もう一つ問題があります。それは長期安定政権のおごりが目立つことです。自民党政治家の中に謙虚な政治家もいますが、大多数が傲慢な態度を示すようになりました。少なくとも国会において安倍総理や麻生副総理がみせる野党を見下すような高慢な態度は改めるべきです。
さらに深刻なのは、エリート官僚の堕落です。東京都庁の指導的官僚の無責任、文科省のエリート官僚の違法な天下りなどは、氷山の一角に過ぎないと思います。
東大エリート官僚の堕落と自民党政治家の傲慢を放置すれば、日本の政治は深刻な危機に陥ってしまいます。綱紀粛正が必要です。
安倍内閣の責任は大きいと思います。日本の国益ともに農業を守るため米国に対し毅然たる態度をとるべきです。
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