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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2017.06.23 
(036)子供のフード・セキュリティ一覧へ

 以前(2016年12月9日:009:フード・セキュリティと「食の安心」:文末にリンク)について記したことがある。今回は「子供のフード・セキュリティ」について紹介する。食料安全保障というと何やら堅苦しいが、「子供がしっかりと食事を摂っているかどうか」、実はこれも立派なフード・セキュリティの問題であり、米国農務省が興味深い調査報告を出している(注1)。

 例えば、以下の質問についてあなたはどう答えるだろうか?(以下、英語の原文は少し回りくどいため、質問をわかりやすい形に修正している)
 
1. 「子供の食事には低価格の食品を中心に与えているが、それは食品を買うために十分なお金がないからだ」過去1年間にこうした事はありませんでしたか?
2. 「子供達にバランスのとれた食事を与えることが出来なかったが、それは余裕がなかったからだ」過去1年間にこうした事はありませんでしたか?
3. 「子供達に十分に食べ物を与えることができなかったため、子供達は十分に食べることができなかった」過去1年間にこうした事はありませんでしたか?
4. 過去1年間に、食事のために十分なお金が無かったため、あなたは子供の食事を切り詰めたことはありますか?(はい/いいえ)
5. 過去1年間に、あなたが食事を与えなかったため子供達が空腹になったことはありましたか?(はい/いいえ)
6. 過去1年間に、あなたが食品を買うお金がなかったため子供達の誰かが食事を抜いたことはありましたか?(はい/いいえ)
7. 上の質問に「はい」と答えた場合、それはどの位の頻度で発生しましたか? ほぼ毎月? 毎月ではないが何回か、あるいは1~2回?
8. 過去1年間に、あなたが食品を買うお金がなかったために、子供達の誰かが丸1日食事を抜いたことはありましたか?(はい/いいえ)

  ※  ※  ※

 質問は全部で18問あり、上で紹介したのは第11~18問である。第1~10問は世帯のフード・セキュリティ状態に関する質問であり、続く8問は0~17歳の子供がいる世帯に対して行われた「子供のフード・セキュリティ」の状態に関する質問である。
 この8問のうち、肯定的な答えが2つ以上あれば(1)「子供のフード・セキュリティは確保されていない状態(Food insecurity among children)」、つまり世帯において、1人あるいはそれ以上の子供が1年の間に何度か適切かつ栄養がある食品が欠けている状態とされる。
 5つ以上であれば(2)「子供のフード・セキュリティは極めて脆弱(Very low food security among children)」、つまり食品を購入するお金がないため、子供達は空腹で、食事抜き、場合によっては丸一日食事なしという状態であるとされている。

  ※  ※  ※

 今回の調査ではフード・セキュリティが確保されている世帯が全体の83.4%、そうでない世帯(フード・インセキュアー)が16.6%という結果が出ている。このうち、全体の8.8%が大人、子供のいる世帯は7.8%である。後者のうち、(1)の世帯が7.1%、(2)の世帯が0.7%である。
 全体割合の16.6%は2009年のピーク時(21.3%)からは低下したものの依然として高水準である。米国の世帯統計はそれ自体がかなり複雑なため興味深いが、それを紹介している余裕はないため、簡単に言うと、今回の調査から推定した場合、少なくとも全米の300万世帯以上で子供がフード・インセキュアーな状態にあるということになり、中でも約27万世帯では極めて深刻な状態にあるということが報告されている。

  ※  ※  ※

 家庭におけるフード・セキュリティは、日本では「買い物弱者」などの言葉でその一部が伝えられているが、それだけでは不十分である。農業・食品に関する人や組織は子供のフード・セキュリティについても積極的な関心を持つべきであろう。

注1:USDA-ERS,"Children's Food Security and USDA Child Nutrition Programs",June 2017.
https://www.ers.usda.gov/webdocs/publications/84003/eib-174.pdf?v=42905

(関連記事)
(009)フード・セキュリティと「食の安心」 (16.12.09)

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