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コラム:地方の眼力

【小松 泰信 (岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

2017.07.05 
前川証言への期待一覧へ

 都議選における自民党の惨敗に溜飲を下げかけたのは事実。ただしそれは、安倍一狂体制に一泡吹かせたというレベルの話。良い受け皿ができたなどと呑気なことをいう気にはなれない。小池百合子、安倍晋三、橋下徹、この三人には同じ臭いが漂っている。三人とも同根の狢(むじな)。もっと伸びて良いはずの共産党には、自民が失った34議席のうち2議席しか流れていない。現在の政治状況にどこまでNOが突きつけられたのか、不安が増幅するばかりである。

◆佐川クン、長官になれて良かったね

 佐川宣寿氏、そうあの「森友学園」に国有地が格安で売却された問題に関して、たびたび国会答弁にたち、野党のさまざまな角度からの追及に対して、「確認は控えさせてほしい」「記録は残っていない」「適正な価格で売却した」という趣旨の説明をリピートし続けた、面従腹従、始終服従の官僚。バカ殿を守らんとする健気な家臣を演じきった努力のたまものか、めでたく国税庁長官にご栄転。麻生財務相は「佐川局長以下、国有財産の行政を担当する理財局は丁寧な説明に努めてきたと認識している。(佐川氏の国会答弁などに)瑕疵はない」(東京新聞7月4日夕刊)とのこと。カシはなくとも、カリは返した。あれはこれまでに聞いたこともない"ミゾウユウ(未曾有)"の"丁寧な説明"。この人事手法は、今後も"ふしゅう(踏襲)"されるのタロウ。
 当コラム、この処遇に納税意欲は減退。でも、森友は終わっていないから、喜びも中くらいだよね、晒されし佐川クン。

◆とにかく岩盤規制破壊にまっしぐら 4条件の行方は

 加計問題を有識者として支えてきた国家戦略特区諮問会議の民間議員が、6月13日に記者ブリーフィングを行った(以下で用いた資料は内閣府のHPより入手。記者の質問は要約)。
 そのポイントは、「岩盤規制改革がようやく実現した」「規制改革のプロセスに一点の曇りもない」「今治市が先行したことは妥当」「プロセスが歪められた事実はない」「岩盤規制改革の続行を」である。基本的には、政府与党の見解を民間議員として語っているだけであるが、安倍ドリルの刃となって、岩盤規制を破壊することに精励し、学部設置の意義などについての認識がいかに乏しいかを、"既存の獣医師養成ではない構想が具体化し、ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野の具体的な需要も明らかになり、既存の大学・学部では対応困難で、近年の獣医師需要動向も考慮し全国的見地からの検討を経てクリアー"したとき、新設を認めるという、いわゆる4条件に関する質疑応答が証明している。
記者;加計学園の計画は4条件を満たしていると思うか。
八田達夫;当然思いますし、それは3大臣が満たしていると納得されたわけですね。
記者;国会審議では明確なエビデンス(証拠)的なものが示されていないが、議員各位はどう考えているのか。
八田;まず、条件というのは元来つけるべきではないのですが、閣議決定でついたわけですね。それに対して3大臣が納得されたわけですね。私どもはもともと全部やりたいわけですから。
記者;そうではなくて、どういう形で4条件を満たしているのか、ご認識をお聞きしている。
八田;それは当然全部満たしているわけで、向こうが満たしていないのならば満たしていないと言うべきです。私どもはもともと全部やりたいわけですから。

◆竹中平蔵、あなたはもう終わっている

 このやりとりに、「4条件については具体的なことまでは覚えていない。説明が説得的であるとWGが判断。その報告を受けて諮問会議が、それではやりましょうとなった。具体的に大学設置のクオリティーのチェックは設置審がする」と竹中平蔵氏が助け船を出す。さらに獣医師の需給問題に関する"立証責任"について「...本来私たちの社会は原則自由なはずで、それを獣医学に関しては文科省が規制をしていた。規制をするのだから特別な理由があるのでしょうと。特別の理由として、実は需給の問題があるのだったら新しい問題を考慮していないのではないですかとか、その説明責任はあなたたちにあるのではないですかという交渉をWGは文科省としていた」と述べている。 
 新自由主義の権化には、規制や制度は自由な活動を阻害する邪魔な存在である。しかし、広く国民に安心社会を提供するためには、規制や制度の変更に際し、多くの国民が納得する論拠が求められる。ゆえに担当省庁の姿勢は慎重にならざるを得ない。当然、最初の立証責任は緩和や変更を求める側にある。竹中氏らは〝規制は悪〟と信じて疑わないから、そうでない理由を説明しろと強気であるが、その姿は時代遅れの思考停止状態。もう終わっている。

◆手垢で曇る諮問会議

 座右の銘が面従腹背から面背腹背へとバージョンアップした前川喜平前文科省事務次官の発言はシャープ。
 6月23日の日本記者クラブで行われた会見で、諮問会議の民間議員による「このプロセスには一点の曇りもない」という発言に対して、「...一点の曇りもないという客観的事実はなくて、この民間議員の方々から見て、曇りが見えていなかったのではないか、あるいは見ないようにしていたのではないか。あるいは見せられていなかったのではないか」(赤旗6月24日)と、痛快なコメント。
 本日(5日)の東京新聞一面に"前川氏10日参考人招致 首相外遊中 加計問題で閉会中審査"という見出しの記事が、あらたな展開を告げている。もちろん氏は、参考人招致に応じるとしたうえで、「尋ねられたことには、きちんと答えたい」とのこと。真相究明に期待大。首相不在ではあるが、逃げることなく次の席では同席すべきである。ところで、証人喚問に応じる意思を表明していたにもかかわらず、なぜ参考人招致なのか。菅らのこと、致命的な証言があっても参考までに聞き置くことに止めたいからであろう。しかし、その手口には誰も乗らない。そして、当コラムは、もう一人のキーマンである加計孝太郎氏の参考人招致、できれば証人喚問を期待する。これができなければ学部の設置は認めるべきではない。ここまでことを大きくさせた当事者がノーコメントを貫くような学園は教育機関として不適格だからだ。

◆二階先生の教えに従い、読売やめた

 前川氏は前述の会見で、「いまの日本の国家権力とメディアの関係に非常に不安を覚える」とも発言した。
 その後、自民党の二階幹事長が、都議選の応援演説で「落とすなら落としてみろ。マスコミの人たちが選挙を左右すると思ったら大間違いだ」「われわれはお金を払って(新聞を)買ってんだよ。買ってもらっているということを忘れては駄目じゃないか」(東京新聞7月1日)と、諭したそうだ。見出しには、メディア批判という文字が大書されているが、確かにわれわれは買ってやってるんですよね。だから、紙面いっぱいに面中服従の下卑た提灯記事しか書かないような御用新聞には御用心。
 そこで踏ん切りがついた。長年、購読してきた読売新聞をやめた。二階先生ありがとう。
 「地方の眼力」なめんなよ

(前回 GAP狂騒曲批判
(前々回 完敗安倍農政の悪あがき

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