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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2017.07.07 
(038)経営戦略論とゴミの分別一覧へ

 大学では食品企業経営戦略論を学部の3年生向けに講じている。講義の基本は、経営戦略論の大家であるマイケル・ポーターとヘンリー・ミンツバーグの2人の戦略論を毎回対比しながらの自分の解説とコメントだが、先日の講義では少し気分を変えて、仙台市環境局の皆さんにご登場頂いた。今年のささやかな新しいチャレンジである。

 仙台市のゴミ分別と収集戦略、これは食品残渣の処理や食品ロス・廃棄を減少させるための具体的「戦略」という視点から考えれば、十分に当該科目の領域に含まれるという判断である。
 日頃、グローバルな戦略論を飽きるほど聞かされている学生達にとっては、目の前のスーパー・ローカルな話、それも自分の日常生活の中で生じるゴミの分別という行動が、いかに仙台市という100万都市のゴミ分別収集戦略に影響するかということを、身をもって体験してもらう良い機会であったかもしれない。
 授業は、最初に、環境局のスタッフによる簡単な分別の枠組みに関する講義の後、DVDで基本動作を学ぶ。ゴミの細かい分別については、自治体ごとにルールが微妙に異なるため、仙台市以外から来ている学生には意外な発見もかなり見受けられたようだ。
 さて、一旦ルールを学んだ後は実践である。約30名の学生達を数名のグループに分け、環境局のスタッフが教室に持ち込んだゴミ(といっても大型プラスチックのケースに入れた空き缶や空き瓶、空箱、ライター、トイレットペーパーの芯、その他諸々の家庭ゴミと産業廃棄物、ただし、水モノは除く)を5つのグループに配布し、実際に分別してもらった。これは非常に面白い。本来は黙って見ていなければいけない付き添いのスタッフが、多くの人が間違えるポイントになると、悩んでいる学生に思わず熱くアドバイス、あるいはかなり高度な質問を受けて少し(?)悩むなど、普段の授業ではなかなか拝見できない学生達の反応を見ることができただけでなく、普段は静かな教室にいつもとは異なる空気が流れた。
 この作業をひととおり終えたところで、スタッフによる確認作業と講評を受けた。結果は、驚くべき高評価であり、筆者もホッとした。学生達は実に正確にゴミを分別してくれたし、流石に意識が高いとのお褒めの言葉を頂戴した。お世辞半分でも正直嬉しい。授業終了後に、全員にコメントを記してもらい、それを全て当日来て頂いた環境局のスタッフにコピーしてお渡した次第である。

  *  *  *

 さて、フードシステム全体の中で食品残渣を含むゴミをいかに処理するかは極めて大きな問題である。学生達のコメントを見ると、「実際にやってみると、理解していたつもりでも間違え、意外に知らないことが沢山あった」「粗大ゴミの長さが(仙台市では)30cm以上ということを初めて知った」「雑紙やプラスチックをもっと細かく分けたい!」「ゴミ問題の対策に戦略論が役立つことを知り、驚きました」などのコメントが続出した。やってみるものである。
 教員は理論を理解してもらうために簡単な事例をよく使う。これは、ヴィーコ流に言えば、「トピカの知」であり、ハーバード流に言えば「ケース・メソッド」である。
 しかしながら、教員・学生双方にとって、講義で教員が話す「戦略」なるものの一部を、実際の自分の行動の中に落とし込む作業を通じて、頭と身体、意識と行動、そしてグローバルとローカルの距離を一気に縮めることが出来れば、それで十分である。
 今回の提案を申し出てくれただけでなく、貴重な機会を提供してくれた仙台市環境局のスタッフに深く感謝したい。

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