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【小松泰信・地方の眼力】ゾッとする労働ホラー話2017年8月2日

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【小松 泰信 (岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 暑中お見舞い申し上げます。
 恐がりの筆者、夏の夜の定番ともいえる怪談話やホラー話は大の苦手。しかし、浜矩子氏による「この夏、労働ホラーが怖い」、で締めくくられる怪奇話にはつい引き込まれてしまった(「浜矩子の危機の真相」毎日新聞7月15日)。

◆労働者を脅かす三つの怪奇と迷走する労働組合

 浜氏によれば、ヒト・モノ・カネという生産の三要素の中でも最も重要なヒトの労働環境に、次のような怪奇現象が起きている。(1)賃金上昇無き雇用拡大、(2)幸福感無き雇用拡大、(3)労働者たちの渡り職人化現象、である。なかでも、渡り職人化現象は、「労働者が労働者でなくなる」こととして、看過できない重大さを強調している。渡り職人は個人事業主と位置づけられ、最低賃金、時間外労働、最高労働時間、これら労働者としての権利がまったく認められず、「その人権が労働法制によって守られることがない」。故に、フリーランスという耳障りの良い言葉に惑わされてはいけない、とのこと。さらに、〝高度プロフェッショナル制度〟(年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発などの専門職を対象に、労働時間規制の対象から外す、いわゆる「残業代ゼロ」制度。以下、高プロと略)についても、「これが動き出してしまえば、その適用対象となる人々も、限りなく準渡り職人的な位置づけをお仕着せられることになりそうだ」と警告を発し、「...グローバル時代の労働をのみ込もうとしている怪奇現象には要注意だ。柔軟な働き方は受難の働き方。新しい働き方は、古き搾取の世界への逆行の入り口」として、冒頭のゾッとするオチが続く。
 だからこそ、労働者の権利を守る労働組合の存在意義は大きくなっているはず。ところが、その労組の迷走振りが労働ホラーの怖さを増幅させているから始末が悪い。

 

◆連合執行部の確信犯的迷走劇と労働者の反撃

 

 迷走の始まりは、わが国最大の労働組合であり、民進党の最大支持基盤である連合の神津会長が、7月13日に安倍首相と官邸で会談し、労働者の健康を守る措置などを強化する修正を盛り込ませることを条件に、「高プロ」の創設を柱とする労働基準法改正案を事実上容認したことである。
 しかし、成果主義に基づく制度下で、いかに高プロと持ち上げられた対象者といえども、その多くは成果を出すまで過重労働を強いられること、一般の労働者へもいずれ広がる可能性は否定できないこと、さらに「組織的な意思決定の経緯及び手続きが非民主的で極めて問題」のある交渉劇であったこと等々から、厳しい批判が相次いだ。極めつけは、19日の夜に行われた連合本部への抗議デモである。「労働者の代表」を自任してきた連合が、労働者のデモに見舞われるという異例の事態。情けない話ではあるが、わが国の労働組合運動の現状を表しているようだ。「残業を勝手に売るな」「連合は勝手に労働者を代表するな」とのプラカードやコールにさらされる組織を労働組合と呼んで良いのだろうか。素朴な疑問が生じてくる。
 いやいや、世界一の発行部数を誇る御用新聞が幅をきかせるわが国において、最大の労組、やはり御用組合的な臭いが漂ってくる。ところが、厳しい批判を受け、27日の臨時中央執行委員会において、「満場一致」で反対を貫くことを決定した。
 しかし、政府はボス交で修正案を提示し容認の姿勢を示した事実を、無かったことにはしてくれない。提案された事項をありがたい「助け船」として政府案に盛り込み、労働者に配慮した姿勢を演じながら秋の臨時国会での成立を目論んでいる。

 

◆東京(中日)新聞と日本経済新聞との真逆の論調

 

 東京(中日)新聞(7月28日)は、「働く人の側に立たないのなら連合の存在意義はない。ぶれずに法案成立阻止に全力を挙げよ」としたうえで、「制度が問題なのは、成果を出すために働き続け、成果を出したらより高い成果を求められ、際限なく過重労働が続くおそれがあることだ。労働時間の規制対象外なので過労死が起きても会社の責任を問えない可能性も指摘される」とする。さらに、将来的には、「年収要件の引き下げや職種の拡大が進む」可能性を指摘する。そして、「(連合が悲願としてきた)『残業時間の上限規制』と高プロを一体で審議することを譲らず、いわば残業規制を『人質』に高プロ容認を連合に迫った」政府の強引さに憤る。最後に、連合の政治センスに疑問を呈しつつ、「...残業代ゼロというあしき法案は身を挺しても阻止すべきだ」と、檄を飛ばす。
 日本経済新聞(7月28日)は、「脱時間給は社会の変化に応じた制度なだけに、連合の執行部が組織をまとめきれなかったのは残念」とし、「(成長戦略の観点からも)秋の臨時国会で確実に成立させるべきだ」と、政府を後押しする。この制度の意義として、「経済のソフト化・サービス化が進み、成果が働いた時間に比例しない仕事が増えている現実がある。...(働く時間に応じて賃金を払うことは)企画力や独創性が問われるホワイトカラーにはそぐわない。成果重視を前面に出すことで、脱時間給は働く人の生産性向上を促せる」ことをあげる。そして、「いまの法案では対象者が高収入の一部の専門職に限られるが、今後広げていくのが望ましい。そのためにも健康確保の対策の充実は必要だ」と、心身が不調をきたすことを前提としているような見解には、驚きを禁じ得ない。労働ホラー話が脅しではなく、ますます現実味を帯びてきて身体の芯から寒気がしてくる。

 
 
◆ここでも安倍は法規範を破壊する

 

 しんぶん赤旗(7月20日安倍「成長戦略」批判(中))は、「もともと企業は労働者に対して圧倒的に優位な立場にあります。労働者の権利が憲法や労働基準法などで規定されているのも、法の規制がないと労働条件が限りなく切り下げられ、『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(日本国憲法第25条)を保障できない」こと、さらに「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」(憲法第27条)こと、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」(労働基準法第1条)ことを教えている。そして、安倍政権の「成長戦略はこうした法規範を全面的に破壊しようとしています」と、警鐘を鳴らしている。これらの法規範がどこまで認識され、尊重されての法案提出となるのか、そこからの丁寧な説明と熟議が不可欠である。

 

◆だれかそのヒトたちの声を聞かれましたか

 

 日本経済新聞(28日)は、1面にも「連合は本当に働く人のための組織なのか」で始まる記事を載せている。連合の撤回は、旧来の働き方を墨守する姿勢によるもので、「...日本が成長力を伸ばすには、もっと生産性を上げられる働き方を取り入れることは欠かせない」、「...成果や実績に応じた処遇制度が強い企業をつくることは明らかだ」と、断定調。そして「企業の競争力が落ちれば従業員全体も不幸になる」と、やや脅迫調。しかしこれだけ断定する割に根拠は明確ではない。そもそも、高プロの対象者とおぼしき人たちのどれくらいがこの制度を待ち望んでいるのであろうか。高プロに反対して連合に抗議した人たちの存在はメディアでも紹介されたが、待ち望んでいるヒトたちの声は聞こえてこない。ホラー聞いていないよね。これって、怖くないですか.........
 「地方の眼力」なめんなよ

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