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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2017.08.18 
日欧EPA情報開示彼我の差、戦略の欠如一覧へ

 前回8月3日のコラムで、7月6日時点でのEUと日本の日欧EPAに関する情報開示の非対称性を記した。
 その後EUでは8月14日現在新たに3分野(章)の条文が公表され13の章の条文が公表されているが、日本は6日以降新たな情報公開はされていない。

◆情報開示の欠如は民主主義的手続きの欠如と裏腹:"大枠合意"前

colu1708181301.jpg EPA交渉期間中EUでは、理事会(多分上院にあたる閣僚理事会?)、欧州議会(下院に相当)、欧州議会の国際貿易委員会に交渉の進捗について報告をし、加えて交渉を監視する特別なグル-プを設置した。また470を超える市民団体とも情報交換、対話を重ねてきた。市民団体との対話の場にマルムストロ-ム委員が参加することもあった。ウェッブサイトにも影響試算、充分とは言えないものの、日本との交渉結果、日本に対する提案などを開示していた。
 日本では国会・議員にも正式な報告・情報共有はなく、新聞報道も6月半ばまでは散発的でしかなかった。また、毎回の交渉会合の報告は、外務省ウェッブサイトに箇条書き4行程度に過ぎなかった。年内合意を目指すというRCEPでも箇条書き3項目、全4行だ。
オープンな説明の場は、市民団体のネットワ-ク「TPPプラスを許さない!全国共同行動」の要請で初めて7月10日に開かれた有様だ。

◆"大枠合意"、合意署名後の手続きはどうなるのか?

 "大枠合意"後の状況は冒頭で触れたとおりだが、今後交渉が決着すれば、日欧とも、正文化、翻訳、そして議会審議など承認手続きに入る。EUは日本と違って、市民団体との対話集会も既に行われている。合意署名後の承認手続きは、EUでは、組織としてのEUの責任範囲である政策分野である"EU only"の協定か、EUとEU加盟国が共に責任を負う"Mixed agreement"か、により異なる。
 "EU only"の協定の場合は、加盟国政府と欧州議会の承認が必要である、一方"Mixed
agreement"の場合は加盟国政府、欧州議会、そして加盟国の議会(国によっては地方議会)の承認が必要となる。協定が上記のいずれに該当するかは欧州委員会として判断した上で承認を求める。昨年、カナダとのFTAもこのため合意署名が10月迄ずれ込み、更に暫定発効合意も7月8日まで掛り、協定署名から1年近く経ってやっと9月21日"暫定発効"の予定だ。欧州司法裁判所も5月16日に全加盟国議会の承認(一部は地方議会)が必要との意見書を出している。

 日欧EPAは依然最終合意されていない。今後、交渉官同士の秘密裏の交渉だけで正文化がされ、そのまま合意署名がされるようなことはあってはならない。

◆譲歩の連鎖と繰り返される「〇〇関連対策大綱」策定は基本戦略の欠如

 日欧EPA"大枠合意"後改めて思ったのは、物品市場アクセスについては政府と与党は毎回譲れない一線を声高に叫び、結果は日豪EPA⇒TPP⇒日欧EPAと交渉の度に直近の協定を上回る譲歩を重ねてきたことだ。全く同じ水準であっても、関税引き下げなどの影響は、相手国が増える都度拡大することになる。そして国内対策も今回、日欧EPA分が加わる訳だ。
 譲歩の連鎖が続くのは通商戦略の欠落ゆえであり、政策大綱を繰り返すのは、例えば農業政策の場合は、基本政策が欠落しているがゆえ、としか言いようがない。
 安倍政権は「2018年迄に貿易に占めるEPA締結国の割合を7割にする」としている。本来であれば、都度誤魔化しの影響試算をし、ツギハギだらけの政策大綱を作るのではなく、この7割を基礎に影響試算をし、EPAの是非を判断し、それを受けて基本政策を確立するのが筋だろう。更に言えば、その過程での国民・国会への透明性、民主的な手続きが担保されなければならない。

※ ※ ※

 市民団体も引き続き情報公開要求に取り組む予定だ。「TPPプラスを許さない!全国共同行動」のネットワ-クの呼びかけで、7月10日に続き、8月23日(火)に衆院第2議員会館・第一会議室で日欧EPA,9月13日(水)に参院議員会館でTPP11とRCEPについての政府説明会・意見交換会を予定、「市民と政府のTPP意見交換会・実行委員会」も情報公開を求めて9月6日(水)に内閣府・外務省との面談を予定している。

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