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コラム:リレー談話室・JAの現場から

【伊藤澄一JC総研客員研究員】

2017.08.24 
【リレー談話室・JAの現場から】協同組合の包摂力一覧へ

 協同組合のもつ包摂力を高める議論が進んでいる。平成24年の国際協同組合年(IYC)を通じた協同活動の実践・学習と阪神・淡路大震災、東日本大震災さらには熊本地震などの有事の際の組織間や人々の助け合いが相乗しつつある。不可避とされる首都圏直下地震や南海トラフ地震、さらには毎年各地で発生する数十年に一度の大きな災害は、有事に備える人々の平時の交流と連携の密度を濃くしている。


 その具体的組織・システムのひとつが協同組合だ。東日本大震災では福島県から埼玉県に避難した双葉町の1400人の皆さんを生協、農協、社協、NPO、地元女性組織、学生など20を超える組織が協力して長期間の支援を続けた。規模の大小を問わず、そのような多数の組織や人々のネットワークが各地で機能した。協同組合間でも平時の諸事業でのつながりが縁となり、有事に機能した。


 行政との会話が成立している協同組合は、有事の対応力が強いこともわかった。都市部でも有事の際の農協・生協などの協同組合と自治体の防災協定等の締結が数多く報道されている。農畜産物の生産ばかりでなく生活事業など地域社会のインフラ機能を総合的に担う農協は、生協等の他の協同組合や自治体・社協などとの連携の紐帯役にもなっている。


 世界もそのような動きを強めている。昨年11月に協同組合の発祥の地でもあるドイツの申請により「協同組合の思想と実践」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された。協同組合の人々を結びつける「理念とシステム」が資本主義の諸システムの脆さをカバーするものとして期待されている。


 遺産なのではなく、未来を再構築する理念の培養だ。また、一昨年9月には国連サミットで世界193か国の首脳が集まり、SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)を採択した。地球規模で迎えた人間と環境の危機(貧困・飢餓、環境・気候変動、食料・エネルギー、経済の持続など)を各国がそれぞれの実情に照らして克服し、持続可能な世界を次世代にリレーしていこうとするものだ。


 地球上の「誰ひとり取り残さない」とするスローガンは、現実の世界の深刻な人間の生存と環境の危機を反映している。17の大きな目標は、2030年を達成目標のタイムリミットとしている。SDGsはまさに協同組合のテーマでもある。政府も首相官邸に「SDGs推進本部」を設置して推進しているが、経済最優先のアベノミクス遂行のための旗とされている感がある。


◇   ◆


 JC総研は、北海道から沖縄まで全国38県域で450の組織が協同組合間連携の協議会等に参加したと報告している。県域の生協・漁協・森連・農協を核として労協・中小企業・地域の単位組織・取引企業など実に多彩だ。地域ごとにみると数千に達するだろう。このような現場の協同組合組織の連携こそが基盤となっていく。


 全国域でも16の各全国団体が加盟する日本協同組合連絡協議会(JJC)とIYC記念全国協議会メンバー組織などで新たな協同組合連携の役割と機能について相互理解を旨に検討を進めている。それぞれの地域・県域・全国域の組織を包摂する6500万人に及ぶ組合員の生活や仕事を基盤とする協同組合組織、それはもはや国家の基盤でもある。


 日本国内の広範な協同組合組織の連携に向けた熱い論議を期待してやまない。さらに、超党派の国会議員による協同組合議員連盟が、協同組合全体を貫く法整備を目指して活動を再開したことも心強い。


 世界や日本での政治・経済・社会の現況は、金融に傾斜した資本主義がもたらした民主主義の荒廃を眼前にしている。その処方のひとつとして、協同組合の理念とシステムが急速に再評価されつつある。農協を始めとする協同組合に対する現政権の無理解と攻撃は、国の内外の動きと相反する方向にあり、違和感をぬぐえない。


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