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コラム:地方の眼力

【小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

2017.08.30 
立つ鳥跡を濁すシンジロウとJY党一覧へ

 6月21日の当コラム、日本農業新聞の専業農家アンケート調査において、安倍農政を「評価する」が2割、「評価しない」が7割という結果を受け、専業農家にここまで評価されない安倍農政は完敗、と結論づけた。

◆自民党農政への失望と高まる共産党農政への期待

 

 8月24日の同紙が報じる農政モニター調査結果(8月、農政モニター511人を対象にファクスとメールで調査。回答者308人)は、安倍農政に駄目を押すとともに、生産現場における政治意識の極めて興味深い変動を伝えている。
 一面のリード文によれば、「安倍内閣の支持率は33%にとどまった一方、不支持率は67%で12年の政権発足以来最高になった。不支持の理由は『安倍首相を信頼していない』が6割弱で最多だった」。以下、もう少し詳しく見ることにする。
 〝安倍農政の評価〟については、「大いに評価する」が1.9%、「どちらかといえば評価する」が24.0%、「どちらかといえば評価しない」が37.3%、「まったく評価しない」が31.2%、「分からない」が5.2%。大別すれば、「評価する」が25.9%、「評価しない」が68.5%。ここでも、安倍農政は完敗している。
 〝支持する政党〟について、同紙が3月に行った農政モニター調査結果と比較してみると、自民党(44.2%から41.2%)、民進党(10.0%から10.4%)、共産党(5.2%から9.7%)。注目すべきは、共産党の伸びが顕著であることだ。
 〝農政で期待する政党〟については、自民党(40.7%から33.8%)、共産党(7.7%から13.6%)、民進党(12.1%から11.4%)。自民党農政への失望と共産党農政への期待の高まりが、明確になっている。
 〝もし衆議院の解散・総選挙が近く行われるとすれば、あなたは比例区でどの政党に投票しますか〟については、自民党(38.3%から33.8%)、民進党(14.3%から12.2%)、共産党(8.5%から11.0%)。自民党が4.5ポイント減であるが、民進党も2.1ポイント減となっており、「民進党が自民党農政に対立軸を打ち出せず、農政で存在感を示せていないこと」が改めて浮き彫りになっている。一方、共産党は2.5ポイント増で、いわゆる受け皿的な存在となりつつあることがうかがえる。
 また、〝斎藤健農相への期待〟については、「期待する」が24.0%、「期待しない」が34.7%。「どちらとも言えない」が40.6%。大臣が替わったからといって、期待を抱かせるような安倍農政ではないことがわかる。
 さらに同紙2面では、〝内閣支持率(33.4%)-自民党支持率(41.2%)=マイナス7.8%〟から、「農村部では無党派層だけでなく、自民支持層からも安倍政権離れが起きている」ことを指摘している。

 

◆シンジロウはん、それでも引き継げとは殺生でっせ

 

 このような調査結果から、同紙は25日の社説で、「内閣改造による押し上げ効果は、この結果を見る限り出ていない。農村地域で支持率を回復させるのは容易ではない。農政評価も辛い。...関係者に周知・説明すれば改善できるといったレベルの結果ではない」とする。さらに、農政で期待する政党の2位に共産党が民進党を追い抜いて立ったことを、「現状への強い不満の表れ」としたうえで、「自民党は農林部会長が小泉進次郎氏から野村哲郎氏に交代した。この機会に一度立ち止まり、農政の在り方を見詰め直してはどうか」と、提言している。
 ところが、当JAcom(22日)によれば、自民党農林関係合同会議において、小泉前農林部会長は「農政新時代の言葉どおり転換期だと思ってやってきた」と話し、野村新部会長にこれまでの同部会としては異例となる13頁にわたる引き継ぎ書を手渡した。彼が言う〝農政新時代〟なるものは、自画自賛して引き継がせるような代物ではない。そのことを前述の調査結果は伝えている。本当にJYな自信家シンジロウ。立つ鳥跡を濁しまくり。なおJYとは「状況が読めない」こと。ちなみにKYは「空気が読めない」こと。

 
 
◆驚いていいのでしょうか、日本経済新聞

 

 日本経済新聞(24日)の紙面から、〝野党共闘他に道ない 共産・不破前議長に聞く〟という見出しが飛び出してきた時には正直驚いた。農村部における地殻変動が象徴するような、政治の新たな動きへの素直な企画と評価したい。
 「共産党が国政選挙や東京都議選などで議席を伸ばしている。野党第1党の民進党の支持率が低迷するなか、自民党への批判票が共産党に流れる構図だ」という状況認識から、不破氏に民進党との野党共闘への向き合い方などを聞いている。
 まず資本主義については、「危機的な様相を強めている。社会的な矛盾が高まっている。一番大きいのは社会的格差の拡大だろう。...これほど極端になったことはない」と、危機意識を募らせている。
 野合批判については、「自民党と公明党こそ野合の典型だ。...我々は綱領や世界観が異なっても、国民が求めている当面の一致点を共同して実現する。これが独立した政党の間の共闘の姿だ」と、ぶれない姿勢。
 連合が共産党との協力を嫌がっていることについては、「そろそろ、政党と労組の双方が自主性を確立すべき時が来ているのではないか」と、さらり。
 野党共闘での経済運営について、「安倍晋三さんより、はるかにうまくいく」と、バッサリ。
 メインテーマの野党共闘や政権獲得については、「本当に日本の政治を変えるなら野党の連合戦線はさけられない。(政権獲得について)意欲は大いにあるが、慌てない」と、抑制の効いた野心が披瀝されている。

 

◆民進党はJY党から脱却せよ

 

 そして民進党。22日に開かれた、民進党代表戦立候補者の公開討論会で、前原、枝野両候補者から、農政や地域政策への言及がなかった。翌23日の日本農業新聞は社説で「アベノミクスの恩恵が届かない地方にこそ、反転のチャンスがある。両候補は農政を語り、対抗軸を打ち出す時だ」と主張した。そして「民進党の農政は旧民主党時代の戸別所得補償制度以外に農業者に浸透している政策が見当たらない。...『第二自民農政』では本家に勝てるわけがない」と叱咤する。
 それが功を奏したのか、遊説先がたまたま農業王国北海道の札幌市であったからか、両氏とも戸別所得補償制度を柱に据えることを明らかにした(日本農業新聞、26日)。しかしこのレベルでは農業関係者の期待にはこたえられない。
 TPPに意欲的だった前原氏は、あるシンポジウムで「GDPの1.5%の第1次産業を守るため、98.5%が犠牲になっている」という趣旨の聞き捨てならない発言をした。今も同じ考えなのか。変わったとすれば、どう変わったのかを明らかにすべきである。
 東京新聞(28日)によれば、27日のNHK番組で、野党連携に関して「他の野党が『自民党を倒すために(民進党に)協力する』というなら受ける」(前原氏)、「わが党が主体性を持ちながら、一人に絞るため最大限努力する」(枝野氏)と、語っている。この二人、シンジロウに負けず劣らずのJY。野党第1党といっても、一強多弱の政党関係。そこでのナンバー2を鼻にかけてもJY党と笑われるだけ。農業の世界では共産党の後塵を拝する何のセールスポイントもない政党であることを自覚すべきである。
 「地方の眼力」なめんなよ

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