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【小松泰信・地方の眼力】満足の出自と白装束の教え2017年9月6日

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【小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 「あなたは、全体として、現在の生活にどの程度満足していますか」への回答は、「満足している」が12.2%、「まあ満足している」が61.7%、「やや不満だ」が19.9%、「不満だ」が5.1%、「どちらともいえない」と「わからない」の計が1.2%。大別すれば、「満足」層が73.9%、「不満」層が25.0%。これが今年の6月から7月にかけて内閣府が行った『国民生活に関する世論調査』(有効回収数6,319人、回収率63.2%)の注目すべき結果の1つである。

◆「満足」感はどこから生まれるのか

 国民の4分の3が現在の生活に満足しているとは、正直驚いた。さらに、「満足」層が昨年の調査に比べ3.8ポイント増であるばかりか、1963年の調査開始以来最多となったことで驚きは倍加した。ちなみに、同種設問でこれまでの最多は'95年の72.7%である。他方、「不満」層についても昨年比3.5ポイント減で、'95年の24.6%に次ぐ低さである。


 山陽新聞(8月27日)によれば、内閣府の担当者は「景気の緩やかな回復基調が所得にも反映し、生活満足度が上がったのではないか」と分析している。しかし、1995年といえば、1月17日に阪神・淡路大震災、3月20日に地下鉄サリン事件と、わが国が未曾有の災禍に襲われた年である。社会心理学的な解析は専門家に委ねるとして、安倍政権が国民にもたらしている災禍の数々と考え合わせるとき、「満足」層の増加を手放しに喜んではいけないことだけは確かなようである。
 東京新聞(29日)は「4割近くが非正規労働、子どもの7人に1人が貧困とされる中、『4人に3人が満たされている』のは本当か」と、生活実感との乖離がうかがえるこの結果を「『あきらめ』の表れ?」という大見出しで取り上げている。


 識者の見解として、「あきらめが生む満足」という逆説を日々実感している竹信三恵子氏(和光大学)は、「学生に話を聞くと、恒常的なじり貧状態が当たり前。『努力すれば何とかなる』との期待が持てなければ現状を肯定するしかない」「政府が、高い満足度を『政権運営が成功している』という証明に利用すれば、あきらめはさらに広がり、国民は不満を口にしなくなるだろう」と、政権にも国民にも五寸釘を刺している。
 同じく、小田嶋隆氏(コラムニスト)は、「今の『満足』には、先行きに対するあきらめが含まれていると感じる」としたうえで、'95年における「満足」層の多さについて、「平穏に暮らせるだけで万々歳だといった気持ちが、被災当事者以外に広がった側面があったと思う」と、興味深いコメントを寄せている。


 安倍晋三個人への信頼の喪失や現政権の支持率低下と、「満足」層の多さとを考え合わせると、「現在の生活にほぼ満足している。だからあまりこの国を弄(いじ)らないでくれ」という、平穏な日常を希求する国民の無意識が表出したものと感じるのは、当コラムだけであろうか。

 

◆次は林業・漁業を弄ります

 しかしドリルをもてあそぶ現政権は、至る所を弄(いじ)りたがっている。もちろん、阿吽(あうん)の呼吸の官房長官と彼らが寵愛する官僚や規制虫たちが、官邸の最高レベルのご意向を忖度しながら一点の曇りもない方法で粛々と事を運んでいる。当コラムの主たる関心事である農業・農協改悪で学んだノウハウは、次なる獲物に向かっている。


 週刊文春(8月31日号)によれば、「農業が産業化し、農水省が要らなくなることが理想だ」と公言し「農水官僚の皮をかぶった経産官僚」と呼ばれる奥原農水次官が次に狙うのは、「林業と水産業の民間開放。舞台は政府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループ(座長・金丸恭文フューチャー会長)だ」そうだ。「林業は、林野庁が管理する国有林の民間開放、水産業は、漁協が管理する漁業権の民間開放、とくに養殖業への企業参入が焦点です」とは農水省関係者の言。
 たしかに、「規制改革推進に関する第1次答申~明日への扉を開く~」(平成29年5月23日、13頁)には、〝林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の推進〟が平成29年検討・結論。結論を得次第速やかに措置。〝漁業の成長産業化等の推進と水産資源の管理の充実〟が平成29年検討開始、平成30年結論。結論を得次第速やかに措置。と、スケジュールが明示されている。
 扉の向こうに待ち構えるのは、漁業権と国有林の民間開放を目玉に据えて、漁業と林業に襲いかからんとする嵐である。

 

◆協同組合間共闘で亡国かつ売国の漁業権開放阻止

 鈴木宣弘氏(東京大学)が浜育ちの生活体験に基づくリアリティあふれる論考「【漁業権問題】亡国・売国の漁業権開放」を当JAcom (29日)に寄稿している。その重要な論点は次の二つである。
 一つは、「漁業は、企業間の競争、対立ではなく、協調の精神、共同体の論理で成り立ち、貴重な資源を上手に利用している。その根幹が漁協による漁業権管理である。そこに水産特区のように漁協と別の主体にも漁業権が免許されたら、漁場の資源管理は瞬く間に混乱に陥ることは必定」という、資源管理上の論点である。
 もう一つは、「...農林水産業は国土・国境を守っているという感覚が世界では当たり前なのに、我が国では、そういう認識が欠如していることである。...ヨーロッパ各国は国境線の山間部にたくさんの農家が持続できるように所得のほぼ100%を税金で賄って支えている。彼らにとって農業振興は最大の安全保障政策である。日本にとっての国境線は海である。...漁業所得補填の補助金を安全保障予算として抜本的に増額すべき、というのが欧米の政策からの示唆」という、国防上の論点である。


 拙速に進められる漁業・漁協の改悪に危機感を募らせた、沿岸漁民でつくる「全国沿岸漁民連絡協議会」とNPO法人「21世紀の水産を考える会」は9月1日、参院議員会館で沿岸漁業フォーラムを開き、漁業権や漁業資源管理のあり方についての理論武装に着手している(しんぶん赤旗、9月2日)。「機械的なマグロ漁獲規制と、漁業権の民間開放の動きに現場では怒り爆発。自民党を離党する漁民が相次いでいるようです」とは、このフォーラム関係者からのメール。ここでも地殻変動が起きている。
 第一次産業に対するこのような改悪圧力に対して、JAグループは協同組合間共闘の先頭に立たねばならない。

 

◆持続的資源管理型漁業を担っているのは誰だ

 NHKのTV番組『小さな旅』(8月27日)が、1000年以上の歴史をもつ千葉県南房総市の海女漁を紹介していた。興味深かったのは潜る時の衣装。伝統の白装束であるが、この装束では身体が冷えて1日2時間から3時間が限度とのこと。にもかかわらず、保温性が高く長時間の漁が可能なウエットスーツを着用しないのはなぜか。その答えは、白装束をまとうことで漁の時間を短くし、乱獲を防ぎ、数少ない貴重なクロアワビを守るため。文字通りみずからの身を挺して、欲をかく人間の性にブレーキかけ、資源を守り続けている。まさに、持続的資源管理型漁業の実践である。


 わが国の第一次産業は、このような超長期的視点にたった抑制的かつ自己犠牲的精神によって、持続性を担保してきた。
 生産性、効率性、成長戦略、そのための規制緩和等々で思考停止状態の成長神話信奉者や規制虫には理解できない精神である。
 「地方の眼力」なめんなよ

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