【リレー談話室・JAの現場から】有事の協同組合間連携2017年9月14日
昨年3月、コープ共済連・佐藤利昭理事長へのインタビュー記事が『共済と保険』誌(日本共済協会発行)に掲載された。とくに、東日本大震災の際の協同組合間連携や地域社会の多様な機関の協働による被災者支援について詳述いただいた。一部改稿して紹介する。
◆東京・埼玉の生協で
当時、さいたまコープの理事長でした。私どもの物流施設も被害を受けました。それよりも生協に野菜や魚、加工品などを供給してくれる東北の産地や取引先が大きな被害を受けました。事業再開に努めるとともに、先ず取り組んだのは、被災地の産地の方に1日も早い復旧を願う私たちと組合員のメッセージを届けようと、被災後すぐに組合員の代表と東北に行きました。
被災地への支援では、東京と千葉と埼玉の生協(3コープは2013年に合併しコープみらいとなった)は、それぞれ分担して宮城県、岩手県、福島県を担当しました。埼玉の職員は、1年間毎週5~10人が交代で福島の南相馬に支援活動に行きました。そして、そこで見聞きした原子力発電所の事故の被害の状況を組合員に伝えることもしました。
◆温かい汁物を2年間
埼玉県知事が受け入れを表明した原発事故から避難された方の支援もしました。3月19日、避難先となった埼玉アリーナに、双葉町の皆さんが乗ったバス60台が入ってきました。職員と一緒におにぎりと水などを届けに行きました。次々とバスが入ってくるあの光景は目に焼きついています。2週間ほどで、1400人の双葉町の方が旧騎西高校の校舎に3度目の避難をされ、教室で生活するようになりました。
まだ寒い3月下旬で、教室の床に布団を敷いて寝ることができないので、JA埼玉県中央会が畳を用意し教室を整えてくれました。しかし、あまりに狭くてプライバシーがない空間、着替えは段ボールでつくった簡易着換所でするといった状況でした。また、食事は3食とも弁当で、朝から脂っこく、冷たいものばかりでした。
百数十人いた子どもたちは、野菜不足で真っ先に変調をきたしました。これは何とかしなくてはいけないと双葉町役場と相談し、ユニセフの協力を得て子どもたちへの朝食支援をしました。町民の方々から温かい汁物が食べたいとの声が聞かれ、1400人分もの汁物をどうやって作るかが問題でした。せめて週一度くらいは何とかしたいと思いました。様々な協力を得て、2011年5月から2013年3月まで、毎週温かい汁物をお届けすることができました。
提供する汁物には、JA埼玉県中央会の手配で新鮮な野菜の提供を受け、近くの提携先の調理施設のあるお店でパートさんに昼休みを削ってもらい野菜を一次加工しました。それを寸胴に入れ、スタッフが避難場所までもっていき調理する形で続けました。
◆多くの組織の支援で
JAグループや県生協連の女性協議会の協力、地元の女性会、社協、NPOなどの団体、パルシステム埼玉や医療生協、埼玉大の学生、ボランティアなど20を超える組織の方々の支援に支えられました。これらの協力は、以前から事業面での協同組合間協同、地域の課題は生協だけで何もかも解決できるわけではない、地域の様々な団体とのつながりを大事にしようとネットワークをつくっていて実現したことです。私どもは団体間のネットワークをつなぐゴムバンドのような黒子の役割でした。
行政との関係も、地域の困りごとへの私たちの協力について20年近く毎年懇談をするなど、生協の役割を理解してもらっており、避難された方への支援も行政の理解と支援がありました。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震のときなどで生協が培ってきた助け合いのネットワークや組合員同士のつながりは、想像している以上に大きくなっていると思いました。
◇ ◇
協同組合間連携というが、災害現場での人々の連携や助け合いこそが究極のかたちであり、このような有事を前提とした平時の連携こそが喫緊だと強調したい。
重要な記事
最新の記事
-
家族みんなで夏の農業体験はじめよう 食農体験イベント「土袋でデコきゅうり」開催 JA兵庫六甲2024年3月29日
-
(377)食中毒1万人は多いか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年3月29日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第96回2024年3月29日
-
【人事異動】全国農業会議所(4月1日付)2024年3月29日
-
品種で異なるメロンの味わいを体験 自由が丘「一果房」で29日から 青木商店2024年3月29日
-
第160回勉強会「レジリエントな植物工場運営・発展に向けて~災害からの復旧・復興事例から学ぶ」開催 植物工場研究会2024年3月29日
-
創立55周年記念 ガーデニング用 殺虫・殺菌スプレーなど発売 住友化学園芸2024年3月29日
-
「核兵器禁止条約」参加求める26万の署名 藤沢市議会が意見を採択 パルシステム神奈川2024年3月29日
-
尾鷲伝統の味「尾鷲甘夏」出荷開始 JA伊勢2024年3月29日
-
令和6年能登半島地震 被災地農家を応援 JA全農石川へ寄付 KOMPEITO2024年3月29日
-
林木育種センター九州育種場 九州育種基本区の「スギエリートツリー特性表」公表 森林総研2024年3月29日
-
農業フランチャイズのクールコネクト シードラウンドで3200万円を調達2024年3月29日
-
鳥インフル 米メイン州からの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年3月29日
-
畜産施設の糞尿処理で悪臭対策 良質な堆肥化を促進 微生物製剤を開発 B・Jコーポレーション2024年3月29日
-
水田のスマート水管理で東大大学院農学生命科学研究科と共同研究開始 ほくつう2024年3月29日
-
神明HDと資本業務提携 米・青果流通加工プラットフォームを強化 エア・ウォーター2024年3月29日
-
軽量・軽作業・耐暑性の甘長トウガラシの定植開始 JAくま2024年3月29日
-
植物由来ポリエチレン使用の学校給食用牛乳パック 採用拡大 日本テトラパック2024年3月29日
-
旬の「瀬戸内レモン」スイーツ6種 期間限定で登場 銀座コージーコーナー2024年3月29日
-
環境に優しく、ゴミも削減「洗濯用せっけん」新発売 グリーンコープ2024年3月29日