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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2017.09.14 
続・日欧EPAはTPPよりマシだろか??一覧へ

 筆者も参加する「TPPに反対する人々の運動」も構成団体となっている、幅広い超党派のネットワ-ク「TPPプラスを許さない!全国共同行動」では7~9月初めに掛けて3回院内集会を呼び掛け、TPP-11、日欧EPA,RCEPについて学習会と外務省・農水省・内閣府の出席で政府説明会・対話集会実施し、政府の見解も質すという取り組みをしてきている。8月29日の院内集会をまとめることで、前回8月31日付のコラムで、次回にとした、日欧EPAの「公共調達と国有企業章」への言及としたい。

◆「公共調達・国有企業・規制に関する協力」の3分野が持つ意味合い

 TPPにおいても同様だが、この3分野はある意味で"地味"で分かり難い分野だ。しかし、共通するのは、いずれも地域の主権を制約する分野で、また暮らしや地域の産業と関係の深い分野であるという点だ。「公共調達」は、地域の公共事業・サ-ビス・教育に係る問題であり、「国有(公有)企業」は郵便・鉄道・病院などに代表される地域の基礎的な社会インフラだ。「規制の協力」は規則・制度・手続きなどに幅広く制約を及ぼす分野で、各国の規制を国際標準に収斂させる意図が流れている。透明性・規制の整合性・ISDSの3点セットとしてグロ-バル企業の利害を代表する協定の要でもある。

◆TPPと日欧EPAの違い、日本対EUの確執

 前回のコラムで、"マシ"という程度にTPPより"マシ"な部分、WTO基準について相互の解釈を認めるという形でいい意味での"EUらしさを日本がブロック"している部分、そしてTPP以上に譲歩した部分がある、と書いた。"日本がブロック"というのは、例えば食の安全に係る分野のEUの予防原則・GM表示、常設・2審制の投資裁判所など、日本政府が我々の懸念を無視してTPP規範に固執することなどが典型だ。

◆政府との意見交換での質問と政府見解について

1.公共調達

 日欧EPAの「公共調達」では、地方における地域振興政策や地域内経済循環をTPP以上に制約するだろう。日本はWTOの政府調達協定を主導して積極的に市場開放を進めてきており、TPPではこの協定に加盟している国を含め7ヶ国が地方政府を市場開放対象としていない(うち2ヶ国は都市国家)中で、今回更に開放度合いを高めている。
 〇TPPと比べ、市場開放の対象都市が政令指定都市から中核都市に、株式会社・独立行
  政法人について、地方段階まで対象機関の拡大を認めたのは何故か?

 ・外務省:EU各国はWTOの協定で地方政府も市場開放の対象としているため受け入れた。

  ※TPPでもWTO協定に参加している国々は、互いの開放度合いを認め合っていることと比べると明らかに無用の譲歩だ。

 〇対象分野について、TPP、WTOで除外されている鉄道分野の「安全注釈条項」、「送配電事業」を対象としたのは何故か? 安全は確保できるのか? 具体的にどんなものが対象とされているのか?

 ・外務省:「安全注釈条項」は国交省所管なので別途確認する。実施まで猶予期間を設けた。基準金額の40万SDR(約6600万円)はWTOの協定より高く、市場開放度は小さい。
 「送配電事業」は地方自治体のもののみ対象とした。

  ※ほぼ言い訳の範疇に属する回答だ。

2.国有企業

 昨年9月の交渉内容を反映した両論併記の協定草案が漏えいしている。これ以外に資料が無いので、これを基に分析と質問をした。TPPで安易な譲歩と思われた項目について日本側は一定の反省?をしているのか、TPPに比べ広範囲の適用除外を主張して、EU側と意見を異にしている。
 この点について、その後の交渉の進捗、現在どうなっているか質問した

〇日欧EPAでは、地方政府の公有企業、独立行政法人を章全体から適用除外とすることを主張、一方EUはいずれも国有企業章の規律を適用すると主張している。

〇TPPでは日本以外の全ての国が附属書Ⅳで70数ペ-ジに渡って主要な条項の適用除外対象企業を数多く掲載しているが、日欧EPAでもこのような規定があるのか?その場合日本はどうするのか?

 ・外務省:「(いずれも)交渉中の案件なので回答は差し控えたい」と逃げる。

3.規制に関する協力:時間の関係で質問は割愛

4.投資家対国家間紛争処理

 〇EUは常設裁判所・2審制・法曹資格などを持つ判事などを持つ仕組みとして「投資裁判所」を提案し譲る可能性は無いと思われる。一方、日本はTPP同様のISDSを主張、着地の見通しについてどう考えるか?
 ・外務省:交渉中の案件なので回答は差し控えたい。

◆「規制の協力」に見られるEUの覇権主義

 未だ条文が公表されておらず、また漏えいされた協定条文草案も古いため、個別内容の評価は割愛したい。
 しかし、ファクトシ-トから窺えるのは、本質的にはTPPと同様の内容であり、"Corporate Globalization"を表す、協定の幹である章の一つと考えられる。TPPでは米国の産業界の意向を押し出しているのに対し、EUは、自らが参加している国際基準を日本に認めさせている点が目立っている。

 〇規制の協力とは何か? EUの目標は何か? 何を獲得したのか?
 4項目を挙げ、その一つは「異なる国・地域の規制当局が国際基準を発展させることを目指して共同すること」としている。
 その上で、「特にEUが採用している国際基準をもっと採用すること」を獲得目標の一つとし、日本に認めさせている。
 例を挙げると、
 ・自動車:EUの採用しているUN-ECE国連欧州経済委員会規則による国際基準、
 ・医薬品:ICH医薬品規制調和国際会議の指針を法制化に当たっての基礎とする、
 ・織物・衣料品:選択表示ラベルについて、日本の仕組みを改正し、EUが使用しているISOに適合させる、等々だ。

 〇そして規制の協力委員会を設け、その役割の一つに「国際基準に関する協力を促進する」こととした。

 TPP同様、「各国の規制権限を制限しない」、「規制の協力は自発的なもの」、「公共政策における保護水準を規制する権利を妨げない」としているが、協定全体としての収斂の方向は明らかだ。

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