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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2017.09.22 
(049)ハリケーン・サイクロン・台風と農林水産物一覧へ

 今年の日本は大型台風による被害が続いている。
 9月19日は台風一過の良く晴れた朝を迎えた。高校時代に読んだ枕草子、「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ」という一節が頭に浮かんだが、直撃を受けた現場では、趣どころではない。心からお見舞い申し上げたいし、同時に復旧作業が早く進むことを祈る次第である。

 さて、個人的な体験としては2005年8月29日に米国南部に上陸したハリケーン・カトリーナの印象が最も強い。当時、JA全農の海外子会社の1つである米国全農組貿株式会社の副社長としてルイジアナ州に駐在していた筆者にとって、家族や同僚とともにカトリーナからは多くの被害だけでなく、危機管理そのものの実践という試練を受けたからだ。
 上陸前日からの避難、避難先での3週間に及ぶ暮らし、その後、約2か月にわたる遠距離通勤...いろいろと思い出すことが多い。私自身のカトリーナ体験記はまた別の機会として、今回は、ハリケーン・サイクロン・台風の簡単な違いに関連した話を記す。
 気象庁のHP(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq14.html)によると、以下の説明がある。

  「台風は、東経180度より西の北西太平洋および南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上になったものを指します。ハリケーンは、北大西洋、カリブ海、メキシコ湾および西経180度より東の北東太平洋に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約33m/sになったものを指します。サイクロンは、ベンガル湾やアラビア海などの北インド洋に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上になったものを指します。
 このようにそれぞれの名称を付している最大風速の基準には違いがありますが、台風もハリケーンもサイクロンもそれぞれの地域に存在する熱帯低気圧を強さによって分類している用語の1つということになります。なお、サイクロンは熱帯低気圧と温帯低気圧の区別をせず、広く低気圧一般をさす用語としても用いられることがあります。」

 高校時代に使用した地図帳を片手にこれをよく読むと、面白いことに気が付く。東経180度の線は、北は北極海ウランゲル島からベーリング海、アリューシャン列島の真ん中を通り、有名なミッドウェー諸島のすぐ西を経て、南はツバルからフィージー、そしてニュージーランドの東側を南北に通る大半が海上のラインである。このラインは"ほぼ"日付変更線(International Date Line)に一致している。この日付変更線をめぐる話も面白いがさらに脱線するのでここでは省く。
 さて、人生は過去に戻ることは出来ないが、この日付変更線を西から東へ超えると日付が1日だけ戻る。有名な『80日間世界一周』ではないが、出発地と発着地によっては過去に戻ることができる。日本から米国本土へ行くような場合にはフライト時間そのものが長いため、同じ日が長く続く感じがあるが、例えば、太平洋諸島上での移動数時間のフライトで日付変更線を西から東に越えると前日に戻ることになる。

※  ※  ※

 話をハリケーンに戻すと、過去にも何度か東経180度線以東、つまり西経域で発生したハリケーンがこのラインを越えて台風になった例があるようだ。いろいろ調べてみたところ、日本に来る台風の多くは発生場所が先に述べた海域のため台風のままだが、まれに西経域で発生したハリケーンが日付変更線を越えて台風になるケースがある。こうした場合には人為的な境界など関係なく、米国流のハリケーン・○○が突然台風△△号になるという。実態は全く同じ暴風雨でもだ。
 当たり前の事だが太平洋を自由に泳ぐ魚には日付変更線など関係ない。ハリケーンと台風のような例が農林水産物にも当てはまるかもしれない。全く同じものを地域により異なる名称で売るマーケティングの技術、それはそれでなかなかのものだ。

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