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コラム:地方の眼力

【小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

2017.09.27 
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 当コラム、しばしば「安倍1強」の〝強〟に代えて〝狂〟を用いてきた。狂とは、「常軌を逸していることを表す」の意味。9月25日の安倍首相の衆院解散正式表明を聞き、狂が適切であることを確認した。そして、権力を持った狂は〝恐〟と化すことも。

◆安倍政治こそが争点
 
 首相表明への評価を、帰省先からの帰路において買った九州の二紙から見ることにする。(以下、新聞はすべて26日の朝刊)
 長崎新聞の論説は、野党の憲法の規定に基づく臨時国会招集要求を3ヶ月たなざらしにした揚げ句の冒頭解散を、国会軽視とみる。そして、共同通信社の全国電話世論調査(9月23、24日実施)において、森友、加計、両学園の疑惑に関する政府の説明を78.8%が「納得できない」と回答していること。また、この時期の解散には64.3%が反対で、賛成の23.7%を大きく上回っていること。これらから、国民の多くが「疑惑隠し」解散として不信感を抱いている、と推察する。今解散は党利党略ではなく、首相の「個利個略」ともいうべき様相を呈しており、「『安倍1強』の下でさまざまな問題が噴出してきた。国民生活に関わる政策はもちろん、安倍政治のありようこそが選挙戦の争点」としている。
 またコラムでは、「『国論を二分する』という言葉があった。それを言うならこの3年、国民に信を問うべき場面は他にもあった。二分する論の片方には耳を貸さず、数の力で繰り返し封じてきたのは誰だったのか」と、声明の矛盾を突いている。

 
 
◆国難突破って!?
 
 西日本新聞の社説は、「何のために衆院を解散するのか。なぜ臨時国会の冒頭なのか-安倍晋三首相から納得できる説明は聞かれなかった」、そして「首相が挙げた理由はこじつけに近かった」と断じる。さらに、野党が求める加計学園問題などの疑惑解明について首相は、「丁寧に説明する努力を重ねる」と述べたが、「ならば、なぜ臨時国会の論戦を避けたのか」と問う。そして「首相会見で際立ったのは国会や議論を軽視し、国民の厳しい視線にはそっぽを向くような姿勢だった。これでは、首相が自ら『国難突破解散』と命名して意気込んでも、国民にはぴんとこない」と、「国難突破」が心にまったく届かないことを伝えている。
 関連記事では、「国会で袋だたきにされるより、『逃げた』と批判されるリスクの方を選んだ」という、首相周辺の談話を紹介している。また、識者のコメントにおいて中野晃一氏(上智大教授)は「一気にばら色にはならないが、少しでも『ましな政治』のために何ができるかを考えたい。立憲野党が連携して改憲勢力に対峙できるかが、鍵となる」ことを指摘し、政治を変えるための投票行動を有権者に求めている。

 

◆安倍1強体制の継続を許すのか
 
 「これが衆院を解散し、総選挙をするに足る理由なのだろうか。かえって疑問が深まる記者会見だった」で始まる毎日新聞の社説は、前出の国難突破を「むしろ自らを取り巻く現状を突破」するものと位置づける。臨時国会での質疑に応じないにもかかわらず、「選挙は民主主義における最大の論戦の場」とする〝論理のすり替え〟。緊張する北朝鮮情勢の中での解散・総選挙は〝危機の利用〟。不信を招いた諸問題への丁寧な説明を省略し、選挙で勝てば信任を得られる、というのは〝順番が逆〟とたしなめる。そして、「『安倍1強』のおごりやひずみが見えてきた中で、さらに4年続くことの是非が問われる衆院選」と、争点を示す。
 また、同紙一面では佐藤政治部長が、解散の本当の理由として「森友・加計問題に加え、民進党の新体制のつまずきや、小池新党の準備状況を見て、今のうちに選挙をすれば、大負けしないと判断した」ことや、「安全保障上の危機さえ選挙に利用しようとしている」ことを指摘したうえで、「首相が強引に解散に踏み切るなら、国民は冷静な目で判断するしかない。有権者一人一人が政治を読み解く確かな力を高めていく必要がある」としている。

 
 
◆安倍農政に対する審判のツボ
 
 中野、佐藤、両氏は有権者の姿勢が極めて重要であることを指摘している。農業・JA関係者はこの解散総選挙をどのように捉え、いかに行動すべきなのであろうか。
 日本農業新聞の論説は〝大義なき権力乱用憂う〟という見出しで、「政権延命の自己保身解散に大義はなく、解散権の乱用」とズバリの指摘。「農業者にとっては安倍農政への審判となろう。無関心と諦めは追認を意味する」として、農業者の積極的な関わりを求めている。そして「官邸農政」の是非を問う総選挙と位置づける。具体的な審判のツボとして、進行中の農協改革をはじめとする一連の急進的な農政改革、影響評価もない秘密交渉での日欧経済連携協定(EPA)の大枠合意、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP)再交渉、等々への評価をあげている。そして、「政権の延命を狙った大義なき解散なら、延命にふさわしいかどうかを審判するまでだ」と、鋭く締める。
 さあ、どうする農業・JA関係者各位。

 

◆落ちてもらいます。そして、加計孝太郎がいた!
 
 その農業・JA関係者から「選挙への関わり方。特に、これまで支持してきた自由民主党および議員との関係のあり方」についての質問が増えている。要は、「支持して応援して投票しても、裏切られ続けている。今回はどうしたらいいのでしょうか」と、いうことである。
 「今回の解散はもとより、これまでの言動をちょっと振り返るだけで、安倍晋三のやり方が民意を無視したデタラメなものであることは明白です。このような状況をそのまま次代に渡すわけにはいきません。最低でも安倍政権には終止符を打つべきです。だとすれば、自民党を支援したり、自民党議員に投票する選択肢はありません。自民党以外の政党における農業政策や農村政策を検討し自主投票にすべきです」というのが、回答の骨子である。「以前から、〝人〟で選んできた。たまたまその人が自民党だっただけ」という意見を聞くことも少なくない。これにも落とし穴が待っている。その人への評価が自民党、そして安倍政権への信認として読み替えられる、ということである。駄目なものは駄目。アベシンゾウはじめ自民党議員には落ちていただきましょう。
 ところで、帰路の新幹線車中でこの原稿の構想を練っていたら、何と広島から加計孝太郎が家族と乗り込んできた。人目を避けることも、ひそひそ話をすることもなく、普通の乗客然としていた。一つ予想と違っていたのは、口髭を落としていたことである。奴のせいで、どれだけの人が言いたくもない嘘を言い続けたのか。痛くもない腹を探られ人間不信になっていったのか。どれだけしなくてもいい仕事をやらされたのか。横着なのか脳天気なのか、そのようなことは歯牙にも掛けない雰囲気が伝わってきた。すこぶる快調、元気そのもの。何があっても証人喚問に招致すべし。
 もちろん、もう一人のブァーストレディも忘れずに。
 「地方の眼力」なめんなよ

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