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コラム:リレー談話室・JAの現場から

【伊藤澄一・JC総研客員研究員】

2017.11.16 
組合間連携 賀川豊彦を「要」に一覧へ

 総選挙の結果を踏まえた政治や経済の変化が人々の仕事や生活に与える影響が懸念されるなか、多様な協同組合間の連携、さらにはそのような協同組合と労働組合との連携がテーマとなっている。JC総研に加盟する生協、労協、漁協、農協などの全国17組織がそれぞれの地域、県域、全国域の段階で連携論議を進めている。

◆改革という名の改悪

 政治や経済での懸念は、例えば「農業改革」の名のもとに、地域の小規模の家族経営の農家が排除されつつある。外から、上からの力のかかったJA改革では、農協組織は競争・利益主義の企業組織への衣替えを迫られている。「漁業改革」では地域の漁業者が維持管理してきた「沿岸漁業」の漁業権を企業などに移そうとする動きがある。企業がメインの沖合漁業、遠洋漁業の構造的不振が背景にある。さらに、「働き方改革」では労働時間の制限をゆるめ残業代を抑えたいなどの労働強化の動きがある。高度プロフェッショナル制度の導入、裁量労働制の拡大などだ。
 政府の規制改革推進会議や審議会などは、これらの「規制緩和」のスピードアップを叫び、現場の実態を軽視したまま突き進んでいる。上記の諸改革による制度の改悪が、国民・消費者の太宗を占める協同組合や労働組合の組合員の生活や仕事を圧迫している。国連のSDGs(持続可能な開発目標)のテーマでもある「貧困と格差」は、組合員の日常生活にも及び、協同組合・労働組合などが新たな連携を模索する背景となっている。


◆賀川豊彦の再評価

 賀川豊彦は、労働運動、生協運動、農協運動に加え、貧民救済や地域医療にも足跡を残した社会思想家・運動家でもあり、キリスト者・文学者でもあった。ここにきて、賀川は労働組合と協同組合、さらには生活者である市民を結びつける思想的バックボーンになりつつある。
 11月には、賀川にまつわる二つのイベントが開催された。一つは「第3回賀川豊彦シンポジウム」。大学のキリスト教研究者、日本協同組合学会等が共催。連合、生協、農協、協同組合学会の専門家がパネラーで、毎月の勉強会を経てシンポジウムを迎えた。過度の市場原理主義、地域社会の再生、働き方改革、女性・高齢者の生き方など、日本社会の抱えた課題がテーマだ。ユネスコの無形文化遺産に登録された「協同組合の思想と実践」の国内での動きの一つとなり、協同組合と労働組合の新たな相互連携を模索する取り組みでもある。
 もう一つは、日本共済協会が毎年主催するセミナーだ。日本共済協会にはJA共済連、全労済、JF共水連、コープ共済連、中小企業者の共済連など17の団体が加盟。協同組合と労働組合などが実施する協同組合共済の連携を行って26年となる。今年度のセミナーは「協同組合・共済事業の原点を考える-賀川豊彦の思いと活動から」と題して11月22日開かれ、千葉大学・伊丹謙太郎特任助教が講演する。
 ちなみに、全労済協会の理事長であり、日本共済協会の理事も務める連合・神津里季生会長は、一般市民に向けた連合のアッピールについて、「世界」11月号で「NPOや協同組合との連携を進めていきたい。協同組合は昔から結びつきがあり、労働組合とは兄弟組織のようなものです。労働運動の草分けである賀川豊彦は、協同組合の創立に深く関わっています。農協、生協もそうです。そういうところとの連携、社会運動もアピールしていきたい」と語っている。
 なお、全労済協会では11月に「東京シンポジウム」を開催した。「転げ落ちない社会へ」をテーマに、中央大学・宮本太郎教授、法政大学・湯浅誠教授など多彩な識者による対談・シンポジウムが行なわれた。
 「改革という名の改悪」が懸念される今日、様々な協同組合・労働組合の誕生と発展の途を開いた賀川の思想・運動の再評価の試みが、組合員・労働者と地域社会を守る今後の多様な連携と取り組みの支えとなることが期待される。

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「転げ落ちない社会へ」困窮と孤立を防ぐ方策探る 全労済協会がシンポ(17.11.14)

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