コラム 詳細

コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2017.12.08 
(060)中国の牛肉マーケットをめぐる国際競争一覧へ

 世界最大の「豚」の飼養頭数を誇る国は中国である。米国農務省によると、2017年の中国の豚の飼養頭数は4億3504万頭で2位のEUの1億4724万頭の倍以上である。世界の豚の飼養頭数は7億6905万頭のため中国には世界の豚の6割弱がいることになる。ちなみに、日本の豚は今年の2月時点で935万頭、数は中国の47分の1に過ぎない。

 さて、豚と豚肉の印象が強い中国で、近年急速に牛肉需要が伸びている。よく考えてみれば当たり前だが、意外と知られていない。米国農務省によると、2011年から2016年の間に、中国の牛肉生産量は枝肉重量ベースで8%伸び、700万トン規模に拡大している。
 一方、牛肉消費量は同期間に20%伸び、780万トン規模に達したようだ。実際、2016年の中国の牛肉輸入数量は82万トン、金額にして26億ドルに達している。
 良く知られているように、中国の農業と食品関係のインフラには現在でも解決すべき課題が多い。経済発展に伴い急速に上昇した生産費、コールド・チェーンの不十分さ、不十分な設備投資、そして何よりも主要な牛肉消費地から遠く離れた内陸に存在する数多くの小規模生産者という構図がある。
 その結果、当局としては、増大する国内需要に対応するために、国内のフードシステムを近代化することを考慮しつつも、目前の対応策として、最終商品を国際市場で調達する方向へ目が向かざるを得ない。これは米国を始めとした牛肉輸出国には都合が良い構図である。
 国内的には、増加する中産階級と可処分所得、都市化、生活水準の向上に伴う外食の機会の増加、これら全ての背景にある人口増加(国連の2017年予測では人口ピークは2029年の14億4157万人、中位推計)がある。
 一方、牛肉の輸出国からの視点はどうか。海外には牛肉輸出を拡大したい各国がしのぎを削っている。2016年の中国向け牛肉輸出82万トンの国別内訳を見ると、ブラジル(29%)、ウルグアイ(27%)、アルゼンチン(9%)の南米3カ国で全体の65%、3分の2を占めている。これにオーストラリア(19%)とニュージーランド(12%)を加えれば96%と、昨年までの中国はほぼ全ての牛肉を南半球から調達している点が非常に興味深い。カナダのシェアは3%である。

*  *  *

 さて、今から15年ほど前の2003年には、中国の牛肉輸入マーケットは極めて小さく1500万ドル程度であった。これは金額にして2016年の173分の1の規模だが、そこで米国は3分の2のシェアを占めていた。その後、BSEにより現在まで米国は中国市場へのアクセスを喪失していたが、今年5月に再び中国向け輸出が可能となった。
 ここから先は、言うまでもない。米国の再参入に伴い、中国向け牛肉輸出の国際競争が一層激化し、全く新しい段階が日本のすぐ隣で始まっている。
 中国の牛肉輸入数量は2016年の82万トンを踏まえ、2017年93万トン、2018年には103万トンが見込まれている。以前述べたように、世界の牛肉輸出量は約1000万トンである。牛肉輸出上位国の2018年の見通しは、インド185万トン、ブラジル183万トン、オーストラリア153万トン、そして米国132万トンであり、これにニュージーランド、カナダ、EU、ウルグアイなどが40~60万トンで続いている。
 今後、米国は恐らく「本気で」中国マーケットを取りにくる可能性が高い。我々、日本人にとって輸入牛肉といえば、米国、オーストラリア、ブラジルなどがすぐに思い浮かぶが、中国向け牛肉輸出において過去5年間で最も伸びた国はウルグアイやアルゼンチンである。インド、アルゼンチン、ウルグアイなどは、牛肉の国際貿易を考える上で、多くの日本人には想定外の輸出国かもしれないが、ビジネスに厳しい中国がどこから牛肉を輸入しているか、その理由と方法を含め我々は充分に理解しておく必要がある。

 

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

三石誠司・宮城大学教授の【グローバルとローカル:世界は今】

 

(関連記事)
台湾向け日本産牛肉の輸出を再開(17.09.25)
米国が牛肉SG見直しに言及-ハガティ駐日大使(17.09.13)
〝人生三毛作〟中国で肉用牛 組合長を退任後挑戦-福島・JA東西しらかわの鈴木氏(17.09.05)
牛肉セーフガード 14年ぶり発動-農水省(17.07.31)
補給金1 あたり10.56円-29年度(16.12.19)

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ