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コラム:米マーケット情報

【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

2017.12.18 
29年産米の値上がりと30年産問題一覧へ

 12月15日に都内で開催された米穀業者の情報交換会。忘年会を兼ねていたこともあって関東の業者ばかりでなく、東北や関西からの参加者もいた。話題の中心は一向に沈静化しない29年産米の相場動向と30年産問題。
 29年産米の相場上昇で最もわかり易いのは日本コメ市場が先月末に開催した取引会での売り唱え価格である。主要銘柄の加重平均価格は北海道ななつぼし1万5840円(前回比427円高)、東北ひとめぼれ1万5342円(同492円高)、東北あきたこまち1万6064円(同725円高)、関東コシヒカリ1万5238円(同407円高)、新潟コシヒカリ1万6424円(同624円高)と軒並み大幅に値上がりしている。これほどまでに値上がりしている要因は29年産米の供給量が細っていることにある。

主要銘柄の検査実績 周知の通り農水省が発表した29年産水稲の作況指数は100の平年並み。ところが10月末現在の検査実績はうるち米合計326万8200tで前年同月に比べ29万5600t、率にして8.2%も少ない。検査数量が少ない理由について農水省の穀物課では、28年産米は作況が103であったことと29年産は10月に2つの台風が上陸、刈り取りが遅れたことをあげている。表1は主要銘柄の10月末現在の検査数量を29年産と28年産を比較したものである。表2は米穀機構が調査しているPOSデータから量販店等で販売されている家庭用精米の年間必要量を推計したもの。これで明らかなように量販店の定番精米の御三家新潟コシヒカリ、秋田あきたこまち、北海道ななつぼしはいずれも29年産米の検査数量が年間必要量を大幅に下回っている。もちろん穀物課が言うように検査の遅れで11月中にそれらの銘柄の検査数量が積み上げれば不足感は緩和されるだろうが、これほどの落ち込みを積み上げるのは容易ではない。表2は家庭用精米の販売量が多い産地銘柄ベスト10でこのなかにコシヒカリは新潟以外に茨城、栃木が入っている。新潟コシヒカリが不足気味なら代替品として茨城、栃木のコシヒカリを店頭に並べれば良いのではと思われるかもしれないが、そうそう簡単な話ではない。なぜなら新潟コシヒカリが店頭精米でナンバーワンの地位を築いたのは長年のブランド化戦略の結果であり、代替品を置いたからと言って売れるわけではない。もう1つの理由は、業務用米がひっ迫しているため割安感があった関東のコシヒカリがこれまで以上に業務用米にも供給され始め、浮動玉が薄くなっているのである。実際、15日の情報交換会の後に行われた席上取引会でも千葉、茨城のコシヒカリに買い声が先行したものの全く売り物が出ず成約しなかった。

家庭用精米の必要量(推計)

 30年産問題では、東西の業者から例年にも増して多収穫米の作付依頼が多いという情報が紹介された。中には具体的な生産者手取りを示して作付依頼をしてくる卸もいるとのことでその価格も示された。
 その一方で、自社で生産者にそうした品種の作付依頼をしようと思っても周りの稲作生産者の平均年齢は75才で、毎年3人から5人は辞めて行くので受け手がいないと頭を抱えている集荷業者もいる。この会合の出席者の中には業務用主体の大手小売りと地場のスーパーに白米を供給している若手の業者がおり、この2社は連れ立って東北の農協が主催した30年産米に向けた商談会に出席し、直接生産者に自社が求めているコメの作付を依頼したのだが、生産者からは「助成金と制度の話ばかり聞かされた」と落胆していた。

 

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