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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2017.12.21 
日EU・EPAの合意、合意内容は??一覧へ

 12月8日、双方の首脳の電話会談により日EU・EPAの合意が確認された。投資紛争解決制度は他の分野と切り離すこととなり、電子商取引などでの個人情報の持ち出しと共に、来年春までの決着を目指して協議を継続することとなっている。投資紛争解決制度については着地点は見えていない。その上で、来年夏までに合意署名(投資紛争解決制度を除く)、日本政府は秋の臨時国会での承認を目指している。しかしEUでは、関税以外は加盟国の承認が必要なため、かなり時間を要することが確実で、発効は暫定発効の場合でも19年を目指すことのようだ。

◆やはり!情報開示の姿勢を問わざるを得ない

 日EUが合意したその日に日本政府は双方の首脳の共同声明を公表しただけだったが、EUは、法的精査前であることを明記した上で、かなりの分野の協定条文と過去の文書を公表した。更に11日には、分野毎に整理した法的精査前の協定条文のほとんどを公表した。
 8日の合意後日本政府が追加した資料は、更新された48ペ-ジのファクトシ-トだけだった。
 
(12月19日現在)↓
日EU経済連携協定(EPA)交渉(=外務省ホームページ)より「日EU経済連携協定(EPA)に関するファクトシート(平成29年12月15日」(PDF)

 12月11日時点のEU公表テキスト一覧表は下記のリンクより。
 ⇒ EU-Japan trade agreement: texts of the agreement - Trade - European Commission

 

◆そして譲歩の連鎖が続く

 8月29日の政府説明と意見交換の際に、EU公表のファクトシ-トと漏えいされた協定条文の分析、政府との質疑を通じて、以下のことが見えて来た。
 ・チーズ類、構造用集成材(林産)、麦類の輸入差益(実質的に関税に相当)引き下げなど、農産物や林業分野の関税に関してはTPP以上の譲歩がされた。
 ・衛生植物防疫措置や貿易の技術的障害について、当日の政府説明では、基本的にWTO基準とするが、国内への適用についてはそれぞれの解釈を尊重する、国内法の変更は不要、ということだった。
 つまり、EUのGM表示や予防原則などマシな部分はブロックして、日本国内には適用しない、ということだ。
 ・そして公共調達については、TPPでは市場開放の対象ではなかった中核都市、地方自治体の病院・教育研究機関(公立大学などと推察)など独立行政法人が含まれることとなっている。
 ただ、国有企業については、16年9月29日の日付の入った漏えい資料では、日本政府はEUの主張に抗して地方政府の公有企業(鉄道など)、独立行政法人(病院・大学など)は規制の対象としない(≒国や地方自治体による優遇措置を認める)という立場で対立していた。

 

◆結局、国有企業分野でもTPP以上に譲歩したようだ

 通商協定決着の都度協定条文を読み解くことは我々にはとても出来ない。TPP協定の分析作業を手掛かりにザッとチェックすることになる。筆者自身はTPPも日EU・EPAも、地域の暮らしと経済循環を制約するものと捉え、規制の整合性、政府(公共)調達、国有(公有)企業、食・農に関する章に焦点を充ててきた。
 EU公表の日EU・EPAの国有企業章は、17年7月6日となっていて、6ペ-ジ、6条と小振りだ。附属書は公表されていない。TPPでは本文20ペ-ジで15条、本文から続く附属書が14ペ-ジで7種類、更に国別の例外対象企業の一覧が73ペ-ジ、とかなり様相が異なる。大きな違いは、TPPは国情の異なる途上国が参加しかつ国有企業が重要な位置を占める国も多いため、妥協と幅広さを避けられず、しかし厳密な規定が必要とされるという点が影響したと思われる。しかし1~6条を通読したが、国有企業の定義以下、TPPと日EU・EPAの本質に違いは無い、と思われた。
 目立った相違点は、TPPでは国有企業章で規制される企業名をその国が通告することになっているが、日EU・EPAでは言及が無く、どの企業が対象となるのかが明らかにされていない。またTPPで重要な意味を持った"非商業的援助"(特別な経営支援や優遇)の文字が無く、かつそのことによる(関係締約国への)"悪影響"の規定が大雑把だ。紛争解決章に委ねるのだろうか。
 そして最後の段階で、EUが論理の一貫性を通す一方、日本は当初の立場から後退し、TPP以上に譲歩した様子が窺える。対象企業の売上高ベ-スでの線引はTPPと同額だが、「政府・自治体の国有(公有)企業」とだけ記載されている。TPPでは追加交渉での見直しまでは対象除外とされていた地方自治体の公有企業が含まれていて、日本が拘っていた独立行政法人という言葉が消えている(第2条適用範囲)。独法が含まれるのかについては、念のため外務省に問い合わせている。規制される対象が何か、ということは重要な問題だ。

 

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