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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2018.03.02 
(072)10年後の貿易量見通しから見える世界一覧へ

 毎年2月になると米国農務省は今後10年間の農業見通し(注1)を公表する。今年も2027年までの見通しが公表されているので、少しコメントをしておきたい。
 切り口はいろいろあるが、今後10年間の穀物・油糧種子と食肉貿易という点に絞って簡単に述べる。

 まず、穀物と大豆であるが、現在年間約6億トンの貿易量があるが、これが10年後には7億トンを超える。米国農務省は大豆のみの貿易量を提示しているが、ナタネ等を含めた油糧種子全体として見れば、総貿易量は8億トンを超えることが十分に予想できる。
 貿易量の増加は小麦で約3000万トン、コメで約800万トン、粗粒穀物で約5000万トン、大豆でも約5000万トン、合計で1.5億トン程度になることが見込まれている。
 つまり、10年後の世界の貿易市場約8億トンをラフなイメージで言えば、小麦、トウモロコシ、大豆が各々2億トン、コメとその他穀物で各々約5,000万トン、残りがその他といったところか。

穀物・油糧種子の貿易見通し(単位:百万トン)、食肉の輸入量見通し(単位:千トン)

※  ※  ※

 それにしても、1990年代初頭、筆者が穀物取引を実施していた頃の世界のコメの貿易量は年間1200~1300万トン程度であった。玄米ベースで約5億トンの生産量に対し、貿易に回る量が2~3%と少なく、国際コメ市場は極めて「底が浅い」マーケットというのが現実の体感として残っているし、複数の学者も唱えていた記憶がある。
 現在のコメは玄米ベースの生産量で約7億トンだが、貿易量は当時の3倍に増加している。これが10年先には貿易商品としても5000万トンを超える商品になるということだ。どこでそのマーケットが伸びるかは本稿では繰り返さないが、市場開拓のチャンスはいくらでもあり、既に多くの国が虎視眈眈とそのマーケットを狙っているはずだ。
 日本がその気になるのであれば、モノとしてのコメの輸出だけでなく、現地の生活に合った「料理の仕方」や「食べ方」まで含めた包括的なアプローチが求められるであろう。ここは知恵の出しどころである。

※  ※  ※

 一方、食肉貿易の見通しも興味深い。牛・豚・鶏の順に言えば、絶対量で約200万トン、約140万トン、約340万トン、合計約700万トンの輸入増加が見込まれている。中でも注目すべきは、中国の牛肉輸入量である。2017年の約93万トンが、2027年には約160万トンと大きく増加する。
 2027年、つまり世界の牛肉輸入数量約940万トンの内訳は表には記していないが、中国が世界第1位、2位は「その他北アフリカおよび中東」である。わかりやすく言えば「エジプトを除く北アフリカと中東」だ。そして、誰が輸出するかは、ブラジルが約280万トンで第1位、次いでインドが230万トン、オーストラリアが160万トン、米国135万トン、という順位だ。ここでも以前指摘したように、インドの牛肉輸出における地位は高いことを覚えておくべきである。インドの牛肉は常に見落としがちだが、実は世界市場では大きな影響力を持っている。
 さて、豚肉の輸入が比較的緩やかなのに対し、鶏肉は10年後も堅調のようだ。こちらの輸入トップは「サウジ・アラビア以外の中東諸国」が約200万トンで第1位、メキシコが127万トンで第2位となっている。これに日本、カリブ海・中央アメリカ諸国、サウジ・アラビアなどがいずれも各100万トンレベルで続く。そして、約1400万トンのブロイラー輸出のうち、ブラジルが約600万トン、米国が約400万トン、タイとEU、旧ソ連邦諸国が残りを分け合う形となっている。
 最後に一言追加すれば、2027年のブラジルは、食肉輸出では、牛肉280万トン(世界1位)、豚肉100万トン(世界3位)、ブロイラー640万トン(世界1位)と世界のマーケットの中核になることが見込まれているという訳だ。
 筆者も錆びついたポルトガル語を少し磨き直した方が良いのかもしれないかと一瞬思ったが、今やブラジル人の方が英語を流暢に使いこなす時代である。その必要はなさそうだ。

 
注1:USDA, Long-term Projections, February 2018.

 

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(060)中国の牛肉マーケットをめぐる国際競争(17.12.08)

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