【熊野孝文・米マーケット情報】東京コメ4月限納会 急落の意味するもの2018年4月24日
4月20日に行われた大阪堂島商品取引所東京コメ納会。受渡価格は前月納会価格に比べ玄米60kg当たり600円安の1万3790円になった。
4月限の取引が始まったのは6ヵ月前の昨年10月24日で初値は1万4800円であった。一時1万4900円まで上伸したが、年明け後、若干値下がり、3月には1万4600円になった。急激に下がったのは今月に入ってからで4月13日に1万4000円を割り込んで、そのままずるずると値下がり1万3790円にまで急落、そのままの価格で納会日に現物の受け渡しがなされてしまった。
東京コメは受渡品がコシヒカリに限定されている大阪コメや新潟県産コシヒカリに限定されている新潟コシと違い、国内産検査米であればどのような産地品種でも受渡が可能で、その時の現物市場で最も安い銘柄が渡されるという性質を持つ。
受渡しされた品種をみると栃木あさひの夢1等が3枚(600俵)、福島チヨニシキ1等が2枚(400俵)、栃木とちぎの星1等1枚(200俵)、埼玉あさひの夢1等1枚(200俵)、計7枚(1400俵)である。同じ日に新潟コシ4月限の納会が行われたが、こちらも値下がりしたとは言え、前月納会価格に比べると30円の値下がりに留まった。ちなみに受渡品は新潟コシヒカリ1等が34枚(850俵)と岩船コシヒカリ2等が12枚(300俵)である。
コメ政策の課題として良く取り上げられた表現として全体需給は均衡しているが業務用米が不足しているといういわゆる"ミスマッチ"がある。その通りであれば20日行われた新潟コシと東京コメの納会価格は真逆の結果になっている。上級銘柄が余って、いわゆる業務用米が不足しているのであれば、新潟コシが大幅に値下がりして東京コメは値上がりするというのが、そうした見方に適った値動きになるはずである。結果は真逆になってしまった。
◇ ◇
一体コメ業界で何が起きているのか? そうした結果を招いた要因として第一に考えられるのはいわゆる業務用米の需要が減少したことが上げられる。
表は米穀機構が毎月公表している1人1ヶ月当たりのコメ消費量である。これは家庭用と中食・外食で消費した内訳が掲載されている。注目してもらいたいのは中食・外食のコメ消費量で、昨年4月から今年2月まで毎月、前年同月の消費量を下回っており今年2月の消費量は1276kgで前年同月を9.2%も下回った。家庭用の消費量も落ち込んでいるが、中食・外食の落ち込み比率は大幅である。中食団体は再三にわたりコメの値上がりは消費減を招くと言ってきたのだが、まさにその通りになっている。これが東京コメ下落の第1要因である。
第2要因は外国産米の流入である。SBS入札は今年3月まで5回の入札が行われ予定枠10万tが埋まり、主食用としてカリフォルニア産カルローズに加え、豪州産のオープスやよりコシヒカリに近いとされる「うららか」が落札され、中食・外食業界だけでなく量販店でも販売されるようになっている。これら主食用途に向けられる外国産米の落札価格は1kg130円台から高いものでも190円で、市中では1kg200円~210円程度で取引された。これは精米価格であり国産米に比べ大幅に安く、様々な業態の外食、中食業者が使用している。その分、国産米の市場が奪われたことになる。
第3の要因は29年産米の需給がひっ迫するとの見通しから流通業者が産地に働きかけて、早期米の契約栽培や業務用向けの多収穫米の作付を依頼したことにある。これらの早期米や多収穫米の品種の中には種子が払底するという事態を招くほど需要が盛り上がり、その分30年産米の作付が拡大するものと予想される。このため流通業者が手持ちの29年産米の在庫調整に動いたことにもある。
こうした要因が指摘できるが、最も問題なのは将来的にコメの需要が伸びると期待されている中食・外食分野の消費量が落ち込んでいることである。農水省は30年産から国が生産調整の目標面積に配分を行わない代わりに需要に見合ったコメ作りを推奨しているが、肝心のその需要を減らしているという現象が起きている。米価を上げてコメの消費量を減らすという政策が正しいのか? 30年産米の作付けにあたっては根本的な意味を問い直さないと日本のコメ農業は真に危機的な状況に陥るのではないか。
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