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コラム:地方の眼力

【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

2018.04.25 
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 過日取り上げた岡山市内のバス問題。ついに、ストライキにまで発展した。両備HDのバス部門社員らでつくる両備バス労働組合は4月23日、新規参入業者と競合する路線の収益低下による、組合員の賃金低下や雇用不安の解消と、参入認可の取り消しを国に要請することを訴えて、同路線で午後1時から1時間のストライキを行った。決起集会において執行委員長は、「騒ぎを大きくしないと行政は分からないのかと思う。地域の皆さんにも理解いただきたい」「5月5日以降に全日ストを無期限で行うことを(県に)宣言する。中途半端なことはやりたくない。一時的な迷惑は分かっていただきたい」と、決意を述べた。

◆不祥事政権に国家的課題を委ねるんですか?!

小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) ストと言えば、こちらもストと言って良いだろう。野党の国会審議拒否。
 東京新聞(4月23日)には、"異常事態の安倍政権 疑惑・不祥事3か月で「13」 野党「まるでもぐらたたき」"という見出しの記事に、今国会(1月22日招集)で安倍政権が追及された主な問題を一覧表にして添えている。改めて、デタラメな政権与党であることが分かる。その一方で、安倍退陣、内閣総辞職、そこまで行けぬとも、無責任かつ人権意識のかけらもないアホウダロウの辞任にさえ持ち込めない野党のひ弱さが伝わってくる。そこに紹介されている、「安倍政権はもう末期状態だ」と言う、政権に距離を置く閣僚経験者の声すら出ているにもかかわらずである。
 日本経済新聞(24日)によれば、審議拒否している野党6党の要求は、(1)麻生氏の辞任(2)柳瀬氏らの証人喚問(3)財務省による文書改ざんの調査結果の月内公表(4)自衛隊の日報問題などの事実確認。25日午前の段階で、与党は4項目を受け入れていない。
 同紙は同日の社説において、「一連の不祥事は行政への信頼を揺るがしており、真相解明や責任追及は当然だ。だからといってそれが法案の審議などをすべて欠席し国会を長く空転させる理由にはなり得ない」と、"不祥事続出でも国会は審議するのが筋だ"と主張する。「一連の疑惑の解明と再発防止に向け、政府・与党が重い責任を負っているのは言うまでもない」とする一方で、働き方改革や規制改革関連法案などの重要法案の審議が軒並み遅れていることを問題視する。そして、「政府への信頼は民主主義国家の土台だ。だが大きく変化していく世界のなかで、内向きの論争ばかり続けている余裕はない。国家的な課題と不祥事への対応を、ある程度は切り分けて論議していく必要が、与野党にはある」とする。

 

◆「信なくば立たず」がお好きなようですが

 このような"いつまでモリ・カケやっている。もっと大事なことがあるだろう"とする論調に対して、真逆の主張を開陳するのが西日本新聞(22日)の論説副委員長。自らのコーナー"永田健の時代ななめ読み"で、安倍首相お気に入りの論語の一節「信なくば立たず」を取り上げ、それが導き出された過程から解きほぐす。
 孔子が弟子の子貢(しこう)から政治で大事なことは何かと問われ、「食を十分にして兵を十分にして、民衆に為政者を信頼させることだ」と答えた。さらに子貢が、食、兵、信頼、三者のうち捨てろと言われたら何から捨てるかを問うと、まず「兵を捨てる」、つぎに「食を捨てる」と答えて、「信なくば立たず(為政者が信頼を失えば民衆はやっていけない)」と答えた。
 孔子が、「兵より食より、信が一番大事だ」と言っている点に注目し、次のような結論に到達する。
 「政治家は時として、国民の痛みを伴う政治決断をする局面に立たされる。......最大の痛みは、最悪で武力衝突を伴う『兵』だろう。将来のために今の痛みを我慢してください、と為政者は国民に呼び掛けなければならない。しかし、もし為政者が『自分やその仲間が得するため"ズル"をする人だ』と思われていたら、国民はその呼び掛けに耳を傾けるだろうか。政治家は国民に痛みを求める一瞬のために『信頼に足る人間であること』を求められるのだ」とする。
 そして、「国会で論議されている森友、加計問題の本質は『為政者やその仲間がズルをしたか、しなかった』である。そこをはっきりさせないまま『北朝鮮の脅威』を論じてもむなしい。『もっと大事なこと』などないのだ」と、鋭く厳しく締める。

 

◆相変わらず安倍首相は信頼されていません

 毎日新聞(23日)は、同紙が4月21、22両日に実施した、全国世論調査の結果を発表した。回答者数1142人(回答率71%)。なお、カッコ内の数字は回答率で、小数点以下は四捨五入。
 「安倍内閣を支持しますか」という問いに対して、「支持する」(30%)、「支持しない」(49%)、「関心がない」(20%)。うち、「支持しない」とした人の不支持理由で最も多いのが、「安倍さんを評価していない」(50%)。
 「一連の問題で安倍首相に責任があると思いますか」という問いに対して、「責任がある」(64%)、責任はない(22%)。
 日本農業新聞(19日)は、同紙が農政モニター(1064人)を対象に4月上旬に行った意識調査の結果を掲載した。回答者数812人、回答率76.3%。なお、カッコ内の数字は回答率で、小数点第2位を四捨五入「安倍内閣を支持しますか」という問いに対して、「支持する」(34.4%)、支持しない(65.4%)。うち、「支持しない人」の不支持理由で最も多いのが、「安倍首相を信頼しない」(49.2%)、ちなみに次に多いのが「食料・農業重視の姿勢がみられない」(27.5%)。
 両調査から、安倍首相がいかに信頼されていないかが明らかである。

 

◆信なくば起て

 NHK政治マガジン(18日)に興味深い記事が載っている。
 「運転手さんがミラー越しに私の顔を見て、じろっとにらんで、『あんた政治家だろ。日本人は、日本の国民はおとなしいから、こんなもんで済んでるけど、普通の国なら暴動になってもおかしくないよ』いきなり、そうおっしゃるんです。国民の怒り、そして国民の政治に対する、あるいは行政に対する不信、本当に大きなものがある。改めて目の覚める思いであります」と、パーティーで殊勝に挨拶するのは自民党の逢沢一郎議員。目覚めが遅い。
 それでも、国政全般からだらだら出てくる"ウミ"の親である安倍晋三は、30%を超える岩盤支持層と無関心を決め込む消極的支持層の存在に期待を寄せているはず。なにせ、奴のじいさんは、安保改定の夜、「官邸のテレビで巨人対阪神戦を見て、『球場は満員の盛況だ』-つまり、声なき大多数の国民に自分は支持されているのだ...」(『週刊現代』2013年12月24日、「特別対談 田崎史郎×福田和也安倍晋三と岸信介 タカ派の血と、格の違いについて」での福田氏の発言http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37879)と言ったヒトですから。
 そして今日25日、林芳正文部科学相は平日昼間に公用車を使って東京都内のヨガ店を訪れていたことを謝罪した。公務と公務の谷間でヨガっていたとすれば、ハヤシ君ともども国民も舐められたものだ。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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一歩の格差(18.02.21)※リード文にある岡山市内のバス問題の記事です。

 

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