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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2018.06.26 
【近藤康男・TPPから見える風景】"やってる感"と"ご都合主義"一覧へ

 前回5月24日のコラムであまりにひどい国会審議について、“政府・与党の掛け合い漫才”と評した。この実態は、TPP11(CPTPP)審議が参院に移ってからも、また会期延長後も続いている。というより、“輸入も輸出も見通しの試算はしていない”、“米国復帰はTPP12なのかTPP11なのか、分からない”、“(実質的な農産物市場開放拡大に関する)協定6条での見直しについては時期・判断基準の明確な規定は設けないこととなった”など、一層ひどくなっている。

◆"やってる感(掛け声だけ)"と"ご都合主義"しかない安倍政治

 この原因は"構想力"のなさによるものだろう。構想力が無い故にご都合主義が必然となる。典型的なのは、国際貢献を目的としながらも自国の人手不足しか考えない、多くの実態が人権無視の奴隷労働に等しい技能実習生や、受け入れ国の支援は言うものの受け入れには口を噤む難民問題だ。外交交渉でも通商交渉でも共通している。
 通商交渉から少し離れるが、対北朝鮮外交はその最たるものだ。30年前に北朝鮮を観光旅行した立場から、この時期、この課題に少し触れることを容赦願いたい。
 "米国と完全に一致"、"最大限の圧力"、"拉致問題"以上のことを発しない安倍外交が、北朝鮮問題で置いてきぼりにされていることは周知の事実だろう。水面下で多角的な接触をしていると思いたいが、ここにきて"日朝首脳会談"の可能性を繰り返すだけで、この場に及んで、モンゴルでの国際会議で、参事官ごときがチョロチョロ会議場を行き来して、自信なさげに北朝鮮担当者に追いすがっているようでは、オイオイ大丈夫か言いたくなる。
 私自身、"圧力"、"拉致問題"は否定しない。しかし、この間明らかになったのは、各国の思惑はあるにしても、東アジアで日・中・韓・北・露が核と隣り合っているなかで、"戦争は出来ない"ということだろう。その場合、幸か不幸か日本の最大の優位性は"戦争をしない、出来ない"ということに最後の一線があるはずだ。
 当面対立・不信感・圧力が続くにしても、将来の東アジアの平和的な秩序のあり方を構想できるかどうかにしか日本の外交の出口は無い。遠い先かもしれないが、この地域での米・中・露による核不使用の保証、朝鮮半島南北での非核化、日本の核の傘からの離脱を構想しなければ、核の危機は繰り返されるだけだろう。

 

◆ノケもの日本外交の唯一の救いは、日朝平壌宣言だけかも知れない

 平壌宣言も裏切られてきた文書だが、その程度の合意であるだけに、首脳同士の文書署名が重要となるはずだ。米朝首脳会談・共同声明も、内容が乏しいだけに、首脳同士の会談であることと、文書署名がかろうじて力になるとも言える。そして日朝平壌宣言は核・ミサイル・拉致・植民地支配と戦後処理(平和)など、包括的な内容を含み、安倍首相の狭量な発言をかろうじてカバ-してくれている。
 安倍首相も"拉致は日本"と力むのでなく、韓国、東南アジア、中東、欧州にも(最も多い拉致被害者は北朝鮮国民)被害者のいる、普遍的な基本的人権侵害とし、共通の課題、多国間の課題として周辺国・関係国と共に取り組めば一人ぼっちになることもない。
 北朝鮮旅行をしても、やはり北朝鮮の政治・体制はひどすぎるという見方は変わらなかった。しかし、同時に"なんだ、70年前の日本でも結構同じだったじゃないか?"と思いもし、何よりも、"住んでいる人々は、我々と同じ普通の人間だ"と感じたことが忘れられない。

 

◆構想力の無さ=掛け声だけの"やってる感"とご都合主義=譲歩の連鎖の通商交渉

 "譲歩の連鎖"は何度もこのコラムで触れた。次の連鎖は誰もが認める日米経済対話の新たな枠組みFFRだ。そしてこのFFRについて国会答弁から察するに"何を議題とするかは今後調整"するらしい。米国にとっての議題は従来から誰もが知るところだ。これでは日本政府は譲歩から逃れられないだろう。具体性に乏しいと批判されている米朝首脳共同宣言でさえ、米国は会談後直ぐに次の交渉に踏み出そうとしている。つまり議題は明確なのだ。
 ISDSを例に取ろう。就任早々、NZのア-ダン首相はCPTPP交渉でISDS反対を掲げ、他国に呼び掛けると宣言、その結果4ヶ国とISDS除外あるいは慎重な取り扱いで合意し、同様の内容の共同宣言を4ヶ国とは別の2ヶ国と合意した。"外交の安倍"とは大変な違いだ。日EU・EPAでも最初から分かり切っていた筈なのにISDSに執着し、結果は投資紛争先送りだ。
 6月28~29日、10月29~11月2日と国連の国際貿易委員会で、今後のISDSや投資協定のあり方について日本を含む60ヶ国で議論されようとしている。日本政府はどんな戦略で臨むのだろうか?

 

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