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2016.08.05 
【米生産・流通最前線2016】異論が相次ぐ新米価格 中食業界 安定取引を(下)一覧へ

米穀新聞社記者・熊野 孝文

◆安値に焦る集荷業者

 新米価格についての異論はこれだけではない。 7月15日に都内で業者間の席上取引会が開催されたが、この席で28年産茨城あきたこまち1等が先渡し条件で8月中渡し置場1万2200円、9月中渡し同1万1900円で成約したのだ。この成約価格を聞いた集荷団体は「ついこの間まで関東のあきたこまちは1万3000円と言われていた。いくら何でも安すぎるのではないか」と驚いている。
 この集荷団体は、組合員が集荷する予定の関東の早期米を卸に結び付ける作業を急いでおり、最大の要素になる価格の居所を探るために情報収集に余念がなかったのだが、当初目途にしていた置場1万2500円より安い価格で相場が形成され始めたことにショックを受けたのだ。
 とくにあきたこまちに関しては、飼料用米増産で主食用に出回るあきたこまちが大きく減少すると見ていただけにショックが大きい。集荷の現場は「100円玉1、2枚が勝負の分かれ目」と言われているだけあって500円も違うと集荷できるものも出来なくなってしまう。


◆中食業界 厳しい批判

 こうした産地側のポジッションに対して買い手の消費地側の卸や業者の対応は、厳しいというより冷めた態度に近い。その原因は量販店等で販売される白米の売れ行き不振。POSデータでは6月は前年同月に比べなんと15%も落ち込んでいる。この著しい落ち込みの原因に関してはふるさと納税制度が流通ルートを変化させたという見方もあるが、量販店の精米が売れなくなっているのは事実で、席上取引会に出席した卸は「新米の茨城あきたこまちが値上がりしたら売り棚から外される」と言っている。
 もっと厳しい見方をしているのが今やコメの最大規模の需要者となった中食業界である。
 業界代表が7月22日に農水省の柄澤政策統括官と面談した際には、「コンビニ等すべての中食市場は9兆5000億円で、外食を含めると33兆円と大きい。コメはストックが効く唯一の生産物で、今まで生産と実需者との間でマッチングがなく情報のギャップがあるのが現状で、このままではビジネスが出来ない。生産者もこれからどうしたらいいのか将来が描けない状況にある。将来を描けるためには、生産振興だけではなく産業振興が大事でぜひ推進してもらいたい」、「コメの価格は全農の価格が指標となり生まれている。これは全農のご都合価格。価格形成のしっかりした市場がなくてはならない。価格形成の在り方、仕組みも含め考えてもらえれば生産・流通・消費も分かりやすくなる」、「今年の年頭所感では農水大臣はじめ業界のトップは誰も『消費拡大』を言っていない。もう少し消費の方に目を向けてもらいたい。耕作放棄地をなくすという意味では飼料用米に賛成だが、餌米専用品種のコンタミはクレーム炎上を惹起し大問題」などと政策批判や要請を行った。 中食業界はコメの値段が安ければ良いと言っているわけではなく、安定的にコメが仕入れられる仕組みを求めている。中食業界で組織される国産米使用推進協議会では独自に生産者と安定的に取引できる仕組みの構築を急いでいる。


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