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2018.02.06 
中食・外食に大きな米消費拡大の可能性【藤尾益雄(株)神明代表取締役社長】一覧へ

・夢のある日本農業を実現するために
・米ビジネスからみた日本農業

 農協協会の2018新春特別講演会「農業を夢のある世界に変えるには―米ビジネスの最前線からみた日本農業―」で、(株)神明代表取締役社長・藤尾益雄氏は、米ビジネスからみた日本農業について、需要の変化に応じた売り方次第で、日本米には大きな可能性があるなど、日本農業への熱い思いを込めて語った。その講演の要旨を紹介する。

◆減少する総農業生産額 米が74%占め突出

藤尾益雄(株)神明代表取締役社長 神明は神戸に本社があり、明治35年に創業。11年前、42歳のとき4代目社長に就任しました。先代まで米中心の食品卸売業でしたが、私の代になって一番に感じたことは、米の消費がどんどん減っていることへの危機感でした。これは日本の米農業が衰退するということです。これを何とか食い止めるため、若い人に米をどんどん食べてもらい、農業を活性化したいという思いで、企業理念に「私たちはお米を通じて、素晴らしい日本の水田、文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献します」を掲げて10年取り組み、今の神明になりました。
 米マーケットの最近の状況ですが、平成28年の農業総産出額は約9兆2000万円で、2年連続増加しています。これは農畜産物の価格が全体に上がったためで、米もわずかに増加しています。しかしピーク時の平成2年の約11兆円から見ると、総産出額は2兆300億円の減少で、うち米の減少額1兆5000万円(減少額の74%)が突出しています。一方農業就業人口は減少が続き、平成29年約180万人で、高齢化も進み2050年には85歳以上の割合が3割に達する見通しで、われわれとしては、なんとか若い人が農業で頑張ってほしいと思っているところです。高齢化にともない、耕作放棄地も急速に増えています。

(写真)藤尾益雄(株)神明代表取締役社長

 

◆需給ミスマッチ130万t 縮小している家庭用ニーズ

 一方、米の需要量は毎年8万tずつ減り、国民一人あたりの米消費量は、平成28年で54.4kg。これは昭和37年のピーク自118.3kgに比べて半分以下です。このため、平成29/30年の主食用米需給見通しは744万tで、28/29年に比べ10万tの減少となっています。一方、価格は相対取引で平成20、23年度と同水準の60kg1万5000円超となっています。
 29年産は特に中食・外食用(業務用)に使われている銘柄の値上がり幅が目立ちます。さらに主食用米の生産量が減る半面、飼料用米の生産量は増えています。これは農家が高収入を得られるブランド米や補助金の入る飼料用米の生産にシフトし、中食・外食用米の不足感が強まったためです。つまり米は生産と需要のミスマッチが生じているのです。
 家庭用ニーズがシュリンク(縮小)しているため、各県は高価格帯新品種の拡大に力をいれ、中食・外食用ニーズが増加しているにもかかわらず、飼料用米への転作で低価格銘柄が減少するという現象が生じています。では中食・外食などの実需者はどのような米を求めているのでしょうか。
 現在、中食・中食は食材の原材料価格が上昇し、サービスに影響が出ています。このため、銘柄米と業務用のB銘柄の価格差が小さくなっており、平成29年産でみると、主に中食・外食用で使われている60kg1万3000円から1万4000円の米が値上がりし、高価格帯である新潟コシヒカリ、富山コシヒカリの価格ゾーンに近づいています。
 中食、外食が求める価格、品質は用途によって違います。おにぎりには「コシヒカリ」のように粘りがあって冷めても美味しい良食味米、寿司には「ひとめぼれ」、「日本晴」のような酢が入りやすく、粒がしっかりとした米、丼物には「きらら」、「ななつぼし」のように液通りがよく、やや硬い米が求められています。
 このような実需者のニーズがあり、消費面でも共働き世帯が増え、外食や中食の需要が増大しているにもかかわらず、これに生産・供給が追いつかない現状があります。農水省によると、家庭用・業務用で130万tの需給ミスマッチが生じています。

 

◆多収米で農家収入安定 精米販売から消費者の口元へ

藤尾益雄(株)神明代表取締役社長 今の産地政策は、産地ブランド銘柄が高価格米に集中している一方で、単に低価格では生産者にメリットが生まれにくいという状況にあり、生産者メリットをいかに創出するかが課題です。中食・外食用米に取り組む生産者メリットは、売り先が決まっていて確実に売れることです。中長期的に一定価格で販売が可能なため所得が計算できます。
 そこで注目しているのが10a700kgから800kgと多収の「みつひかり」と、中食・外食用米でも食味のよいブランド米である「ゆうだい21」です。農家の収入を安定させるには、1俵当たり何円から10aあたり何円への考えで、価格が安定し一定の収量のある品種が必要です。それがこの2品種です。
 次にこれからの米マーケットはどうなるでしょうか。まず食の外部化が進むでしょう。今後、シェアが高まる単身世帯で外食からの転換、生鮮食品からのシフトで手のかからない加工食品へのウエートが高まるでしょう。つまりシニア世帯の少食化、単身世帯の個食化、共働き世帯の簡便化が進みます。これで生じる新たなニーズへの順応が必要になります。
 現在、中食の総菜市場は約10兆円。業態別ではコンビニ、カテゴリー別では米飯がトップです。このことはつまり、米の消費を拡大するには、精米で販売するのではなく、炊飯・加工し、消費者の口元まで届ける取り組みが欠かせません。神明では平成28年に(株)イーグルデリカを子会社化して大阪2工場、京都2工場と4工場体制に拡大。さらに関東初進出の埼玉県に白岡工場を新設しました。

 

◆大きい海外潜在需要 世界の米消費は4億8000万t

 一方、国内の外食市場は約33兆円で、回転寿司の市場規模は約6250億円ですが、人口の減少から、寿司はそろそろ頭打ちだと考えています。そこで世界に目を向けると、輸出に大きな可能性があると見ています。世界の米の生産量は年間約4億8000万t(精米)で、中国、インド、インドネシア3国で約60%を占めますが、その大半はインディカ米です。
 しかし、日本食ブームが海外で高まっており、外国人観光客の6割強が訪日前に期待することとして食事をあげており、われわれにフォローの風が吹いています。海外での日本食レストランは、2015年の約8万9000店から、17年には3割増の約11万8000店になっています。
 これを反映して、2016年の米輸出量は9986tとなり、前年に比べ31%増えました。しかしこれをもって、伸びているとみると出遅れることになるでしょう。政府は2019年の農林水産物・食品の輸出1兆円を目標にしていますが、うち米と米の加工品600億円です。しかし、現在の輸出実績は200億円余りに過ぎません。
 だが米の潜在需要は大きく、神明では平成28年度1977t、4億6000万円と過去最高の輸出です。内訳は香港が28.2%を占め、オーストラリア、アメリカが続きます。平成31年、国の目標10万tに対し、3万tを目標に掲げています。
 一方、国内の米マーケットをみると、米飯市場規模は約2兆4000億円(冷凍米飯、無菌包装米飯を含む)で、毎年伸びているカテゴリーです。これに合わせて神明では富山県の入善町に無菌包装米飯の(株)ウーケを設立し、2ラインで一日、約28万食を製造しています。需要増から、来春にはもう1ライン増設する計画です。特に無菌包装米飯は中国で人気があり、2016年で6万食強の輸出でした。
 元気寿司の海外展開も167店に達していますが、コストの問題から日本米が使われているのは僅かで、日本米を使っている店舗は10%ほどです。価格の安定と安定供給が大きな課題です。日本米のおいしさ、品質はすでに認知されており、輸出数量拡大には、流通経費を含めたコスト改善が必要だと考えています。

 

◆夢を共有し力強い日本農業を実現

藤尾益雄(株)神明代表取締役社長 神明は米ビジネスを通じて、積極的に農業支援をしていきます。企業の農業参入が増えていますが、参入は農業に近い企業であるべきだと思います。単に企業イメージアップのための企業は、何年か後には撤退しています。われわれのように農業に近い企業は逃げることはできません。企業は農機などの設備投資、販売先の確保が可能であり、また企業の労働条件を適用できることから、われわれが農業に参入することで、マーケットインの発想で求められる農産物をつくり、消費拡大に向けた取り組みを積極的に実行することができると考えています。
 このように、先に挙げた企業理念のもと、神明は日本の農業を支援し、「農業を夢のある世界」にするため、パートナーのみなさんと協力し、全力を尽くします。現在約3000億円の売上高を10年後の2028年には1兆円を目標にしています。そのため2020年から21年に株式上場を目指す考えです。その時には生産者のみなさんにも株主になっていただき、どうすれば日本の農業を力強くするかを課題に議論し、夢を共有したいと思っています。
 (出席者から「農場経営を考えがあるのか」と聞かれて)
 一部、東日本大地震の被災地、福島県の相馬地区で進めていますが、少しでも農業の振興に役立つなら、と考えています。産地からのリクエストもあり、また最近、大学の新卒で、農学部からの応募者が増え、人の面でも協力できる条件が整ってきましたので、ケースバイケースですが積極的に取り組みたいと考えています。

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