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シリーズ:時の人 話題の組織

2015.07.31 
【時の人 話題の組織】伊藤 健一(日本穀物検定協会理事長)穀検の強み活かし 安全・安心に貢献一覧へ

・食料提供と円滑な流通
・マンパワー信頼性発揮
・国内生産と農地を維持

 一般財団法人日本穀物検定協会は6月の総会で代表理事理事長に伊藤健一氏を選任した。伊藤新理事長は農林水産省で米など食糧行政のほか、国際交渉を担当し初代報道官も務めた。改めて抱負などを聞いた。

◆食料提供と円滑な流通

 ――就任にあたっての抱負をお聞かせください。

seri1507311401.jpg 農水省で33年間仕事をしましたが、そのうち8年ほどは食糧関係でした。平成の大凶作と緊急輸入のときも食糧庁で仕事をし、その後、食糧庁が廃止され総合食料局食糧部に改編されたとき初代次長を務めました。
 その間、直接の関わりはなくても「穀検」の業務は見ていたわけですが、かつての食糧行政と一体となった安定した業務というイメージから、食管法も廃止され農産物検査が民営化されるという変化のなか、穀検の立ち位置も変わったのだろうと思っていました。
 今回、改めて業務内容を聞いてみると思った通り、がらっと変わっていて、米の食味ランキングといった公益事業は別としてそれ以外は普通の企業と同じように利益を上げて組織、人員を維持しなければなりません。
 ただ、厳しくはありますが、逆にやりがいがあると思っています。まさに穀検の強みを活かすことによって世の中の役に立つような仕事をし、なおかつこの組織もいい方向に向かうことができればと考えています。なにより検査・検定による安全・安心な食料の提供と、しかもその円滑な流通にも寄与できる。まさに必要とされる仕事だと思っています。


◆マンパワー信頼性発揮

 ――「穀検の強み」とは何でしょうか。

 普通の企業と変わらない業務運営が求められるとはいうものの、実は第三者機関という、公正な組織であったという信頼性を持っていることです。
そういう穀検ならではの強みを活かして世の中に貢献していく。それによってもっと役に立てる分野に仕事が拡大できるのではないか。ぜひやっていきたいと思っています。
 たとえば、農産物検査は民間でも検査員資格を取得すれば可能になっていますが、その検査技能をどうキープするのか。農協にしても、いつも農産物検査をしている専門職員を置くというわけにはいかないと思いますから。そうなると検査技能を保持することが課題になるわけですが、それを持っているのは穀検の人員であり、だからこそ、検査員の研修を行っているわけです。これは義務化されているものではありませんが、研修ができること自体、穀検にこそ技能が蓄積され維持されているということだと思います。
 これは穀物というものについての検査・検定の長年の蓄積があるからだと思います。当然、理化学分析、残留農薬、カビ毒、重金属などの分析機能もしっかり持っていることも強みです。そういう経験、マンパワーに基づく信頼性を発揮していきたいということです。


◆国内生産と農地を維持

 ――一方で「特A」という言葉が広く知られるようになった「米の 食味ランキング」は一般消費者の米への関心も高めています。

 「米の食味ランキング」など「米の食味評価に関する試験研究」は穀検が公益的事業として実施しているものです。26年産米も全国133産地品種の食味官能試験を行いました。穀検といえば米の食味ランキング、と考えられていると思いますし、われわれも米についてのさまざまなノウハウを持っている象徴として位置づけてアピールしたいと思っています。
 米の食味が総じて良くなってくるなかで、この食味ランキングは産地の励みにもなっていると思いますし、国民にとってもいいことだと思います。
 ただ、これは私の持論ですが、米の消費量が毎年減少していくなかで、政策全体として農家が意欲を持って食料を生産していこうというものになっているかということは考えていく必要があると思います。米や麦という、いわゆる主食は国が一定程度の関与を保つべきではないか。今は食料がふんだんにあるのが当たり前という前提で考えていて、実際、米が過剰で価格も下がっているという現実はあります。しかし、日本の国土は狭く農地も限られていて、目の前に豊富に食料はあるけれども実は食料自給率は40%を切っています。

◇    ◇

 最近はこうした食料の安定供給の重要性をあまり強調しなくなったのではないか。米は余っているけれども、実は国内供給力は非常に不十分なものしか持っていないというそのギャップをもっと国民に分かってもらうように努力をしていかなればいけないのではないか。
 どうもそこは遠慮しすぎて、輸出や6次産業化などで付加価値を高めて農業所得を増やすということばかりが強調されて、問題の本当の解決策ではないところで明るい未来を描いてみせているのではないかとも感じます。 国内生産をきちんと維持する、農地をきちんと維持することを何といっても基本に置く政策展開であるべきではないか。
 生産調整も見直していくということですが、生産過剰が生じて価格が下がり生産コストを割り込むことになっていき、意欲をなくした人がもう撤退だ、となったときに急に米が不足する......ということもあり得るわけです。
 輸出など元気が出る話も必要ですが、もっと食料安全保障や自給率向上につながる地道な政策を展開していく、そのうえで生産者も意欲を持って品質を良くしていこうとなることが求められていると思います。

伊藤 健一 (いとう・けんいち)
昭和25年生まれ。50年東大農学部卒、農林水産省入省。平成15年総合食料局次長、16年大臣官房総括審議官(国際)、18年関東農政局長、19年大臣官房総括審議官、20年退官、農業者年金基金理事長。

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