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畜産:JA全農畜産生産部

【JA全農畜産生産部-JA全農の若い力】受精卵移植技術を着実に実践2017年9月29日

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・畜産生産基盤の強化に向けて
・上士幌町のET研究所本場

 JA全農ET研究所は、JAグループとしていち早く最先端のET(受精卵移植)技術の研究開発に取り組み、現在では年間約2万3000個のET受精卵と約1100頭のET妊娠牛を全国に供給し畜産生産基盤づくりに大きく貢献してきた。同研究所には今、先人たちが開発・実践してきた成果を引き継ぎ、これからの日本の畜産農家を支えていこうと若手職員が現場で奮闘している。今回はそんな「JA全農の若い力」を訪ねた。

◆牛の観察 もっとも重要

toku1709291002.jpg(写真)JA全農ET研究所の建物の前で

 北海道上士幌町にあるET研究所本場では、受精卵を採取するための供卵牛(黒毛和種)が約500頭、受卵牛(乳用育成牛)を約1100頭飼養している。
 和牛受精卵の供給事業は現在、場内採卵と農家採卵の2つのルートで採卵し、全国に供給している。そのうち場内採卵を行うのが本場で飼養している供卵牛で、採卵と日々の飼養管理をリーダーとして担当しているのが供卵牛チームリーダーの獣医師、大日方(おびなた)塁(32)さんだ。入会8年目。飼料畜産中央研究所から昨年4月にET研究所へ配属となった。
 大学では飼料の栄養学を専攻したという。
大日方塁さん 「獣医師といえば病気を治療するというイメージを持っていましたが、治すより病気にさせないことが大事ではないか。人間も健康維持は食事が鍵ですから、飼料の研究をしようと考えました」と大日方さんは話す。
 そうした経歴から飼料畜産中央研究所では子牛の代用乳の商品開発や給与体系に関する研究を行うほか、ET受精卵を使った和牛の双子生産技術の研究も行い、たとえば分娩2か月前から通常の単子よりもさらに飼料給与量を増やすと、分娩事故も減り双子が得られる確率が高まることなどを明らかにし、現場に役立つ成果をあげた。
 ET研究所に配属となってからの業務は、過剰排卵処置スケジュール作成と人工授精、週3回の採卵を行うほか、毎日の発情観察や牛の体調に異常がないかの見回りがもっとも重要な業務になっているという。というのも、ここでは供卵牛1頭につき年5回から6回、つまり2か月~2か月半に1回の割合で採卵するが、中には排卵ができない疾患にかかる牛が出るからだ。それを発情周期のズレや、直腸検査などで確認し、早期発見・早期治療を心がける。

(写真)大日方塁さん

 

◆地味だが大切な飼養管理

最先端のET技術で畜産生産を支える 今、受精卵へのニーズは全国で高まりET研究所への供給要望も増え続けている。そのためには要望に着実に応えられるよう牛をしっかり飼養管理し、定期的に採卵できる健康状態に保つことが必要だ。
 「そのためには異常を見逃さない毎日の観察が大切です。地味ですが大切な仕事だと思っています」。
 そのほか約500頭の飼養の仕方もこの2年の間に変えた。牛房内でしばしば牛同士衝突し争うことがある。そんな闘争を少なくするため、牛を体格の大小・月齢・性格などで分けて管理するようにした。
 牛にストレスがかかれば受精卵の品質と数量に影響することになるからで、そのほかにも、季節の変わり目の温度管理、冬期の換気の実践など、畜舎の飼養環境を1つ1つ改善してきた。
 こうした取り組みの結果、ET受精卵として供給できる個数が1頭あたり1採卵で平均1~1・5個上昇するという成果に結びついている。 大日方さんは「地道ですが日々牛を観察し細かく管理していけば成績は上がる。日本のトップを走っている機関であることに恥じないよう安定して受精卵を作り続けていきたい」と目標を掲げる。

(写真)最先端のET技術で畜産生産を支える

 

◆信頼される専門家めざし

村岡真也さん 農家に出向き受精卵移植をするチームに所属する村岡真也(23)さんは入会3年目。鹿児島県の繁殖農家の出身、道内の専門学校で畜産技術を学んだのち、この研究所のスタッフとなり受精卵移植師の資格を取得、昨年から農家を回る仕事の第一線に立っている。
 JA全農は移植事業と農家採卵、さらにプロの繁殖技術者養成の拠点として、昨年、士幌町内の廃校を活用し「全農繁殖義塾」を立ち上げた。現在、全農の受精卵の出荷拠点となっており、村岡さんはここが勤務先となった。チームリーダーとともに受精卵移植を希望する農家を回り、農場で一斉に移植するための発情同期化処置から始まり、一連の受精卵移植作業を行う。
 「畜産農家の経営を左右するような作業だと思うと、いつも緊張感があります。受胎率を上げることが大事ですから常に技術を向上させていかなければならず、現場で鍛えられています」。
 牛のなかには発情同期化処置を行っても排卵が確認されず、移植ができない牛も出る。そんなときこそ農家とのコミュニケーションが大事だという。気温の変化が原因となることもあり、飼養環境がどうあるべきかなど「農家と一緒になって考えアドバイスできることが大切だと思っています」という。
 農家に適切な対応をするためにも研究所内での情報交換や相談が重要になる。たとえば、供卵牛チームリーダーの大日方さんらによる日々の牛の飼養管理の中から、最近の疾病とその治療法など農家に伝えるべき貴重な情報を得ることもあるという。
 「やはりET技術全体を自分のものにし、農家の質問に的確に応えられるようにすることが目標です。現場では、『丁寧かつすばやく』を心がけ農家の信頼を得ていきたいと思っています」。

(写真)村岡真也さん

 

◆全国にネットワークを

 全農繁殖義塾は前述したように牛繁殖技術の学びの場としてプロの繁殖技術者(人工授精師・受精卵移植師)を養成することも目標にしている。
 28年度から研修生の受け入れを始め、29年6月時点では2年生2名、1年生6名の計8名が研修を続けている。
 村岡さんは繁殖農家の出身であり、ET事業が牛の改良と子牛の増産、畜産農家の経営安定に意義があると考えている。
 全農繁殖義塾では、研修生が卒業後、全国の現場に広がりET研究所のスタッフと将来も連携していくことも目的にしている。「卒業生と全国的なネットワークをつくって事業を広げ、各地の生産基盤の底上げに貢献できれば」と村岡さんは話している。

 

◆生産性向上へ技術研究

真方文絵さん 将来とも畜産生産が持続するようET技術の革新をめざし、ET研究所の研究開発室では基礎的な研究も行われているが、その研究スタッフの1人は入会3年目の真方(まがた)文絵(35)さんだ。大学では農芸化学専攻だったが改めて獣医学を志し獣医師となった。
 大学院では牛の子宮内膜炎を研究していたという。これは分娩時の細菌感染が原因で、罹患すると次の妊娠の遅れにつながり畜産農家の経営に打撃となる疾患だ。
 真方さんは研究で感染した大腸菌が出す毒素が真の原因で、その影響が長引き排卵を阻害することを突き止めた。同時に栄養状態が悪いと発症しやすいことも分かり、予防にはやはり栄養管理が重要なことも明らかにした。
 こうした研究にさらに現場に役立つ機関で取り組みたいと全農ET研究所へ。
 研究の1つは体外受精卵を効率よく生産するための培養技術。受精卵を得るには人工授精によって牛の体内で受精卵を作る方法と、卵子を取り出し体外で受精させ、それを培養して受精卵とする方法がある。真方さんはこれまで育ちにくかったこの体外受精卵を安定して生産するための培養液や、培養条件などを研究してきた。
 体外受精卵は体内受精卵にくらべて価格が安いというメリットがある。体外受精技術を活用する経膣採卵では1頭の牛から2週間に1回という短いサイクルで卵子を得られることや、生後7か月の若い雌牛からも吸引できることから、短期間で大量の卵子を集めることができる。
 さらにそれらの受精卵を遺伝子検査することで、その結果を育種改良にも反映させやすいという。つまり、受精卵の「質も量も」確保できる技術であり、ここに来てその生産のための基礎づくりができたという。
 さらに乳牛の性選別精液受精卵の改良にも取り組んでいる。性選別精液は9割の確率で雌牛が生まれるとされる。しかし、性選別精液は雄あるいは雌精子を選別するため、そのダメージの影響で受精卵づくりはうまくいかないことがある。真方さんはこの課題に取り組み性選別精液受精卵づくりに特化した培養系を研究し、最近、その実用化にめどがついたという。

(写真)真方文絵さん

 

◆革新的な技術にも挑戦

 真方さんは、これまで同研究所で先人たちが立ち上げてきた技術の改良、向上に取り組んでいるが「今ある技術にとどまることなく10年、20年先を見て革新的な技術を生み出していくことが私たちに求められていると思います。生産者がわくわくし前向きになってもらえる技術を普及できれば」と話す。
 その試みの1つが受精卵の品質評価法である。先に触れた体外受精卵は単価が安いというメリットがあるが、いかに高い受胎率を実現するかが課題となる。
 現在は受精卵を顕微鏡で見て農家に供給できる受精卵かどうかを選別している。それでも受胎しない受精卵がある。そこで真方さんが試みたのは「受精卵が育った歴史を見てみよう」だった。体外受精はシャーレの中で受精させ培養するからその観察が可能だ。
 育て初めから7日間、一定時間ごとに写真を撮るタイムラプスという方法を使った。撮影した写真を分析すると初期に生育異常があっても、次の段階ではそのエラーを覆い隠すように修復され、7日目には「見た目はきれいな受精卵に育っていた」ことに気づいた。「今までは見た目だけで選別していたが、見た目はきれいな受精卵でも中には生育過程に問題があり、それが流産リスクを高めることなどにつながっていたということです。今後は、検査法を確立し、わずかなエラーも見逃さず、しっかり品質を保証した受精卵を供給したいと考えています」。
 日本の畜産生産基盤を支えるJA全農の若い力の地道な実践と研究を期待したい。

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