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2015.03.17 
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組合員との対話強化
営農・経済事業改革推進
・田園回帰の若者に期待
・批判的農家遠ざけずに
・果樹作への参入を支援
・JA情報の提供不十分

 全国のJA役員の相互学習・研鑽を目的とする「JA人づくり研究会」(代表=今村奈良臣・東京大学名誉教授)は3月5日、東京都千代田区大手町のJAビルで第22回研究会を開き、JAが地域と組合員のための協同組合として存在するためには何が必要で、何をしなければならないか。そのための人づくりにどう取り組んでいくかについて、小田切徳美・明治大学教授らの問題提起に基づいて意見交換した。

 市場経済・株式会社を中心とする経済社会のグローバル化が進む中で、大規模農業が新しい時代を開くという考えが蔓延している。だが、日本の農業は、これまで家族・兼業経営が中心で、さらに集落営農、法人化など、多様な形態によって維持・展開されている。
 一方、人口の減少と東京一極集中が進み、2040年には、3分の1の市町村が消滅するといわれる。改めて持続可能な農業を維持・発展させ、組合員農家を支え、農業と地域社会に根差した組織としての役割を果たしていく使命が農協にはある。
 「真の地方創成を目指し、そして真の農業協同組合の再創成を考える」のテーマで開いた研究会では、小田切徳美・明治大学教授が、人口減による「地方消滅論」に対する批判論を展開。千葉県・JA安房の仲野隆三理事が地域におけるJAの存在意義と家族農業の価値について、JC総研の和泉真理客員研究員が新規就農者に対するJAの支援のあり方などで報告し、問題提起した。



◆田園回帰の若者に期待

 小田切教授は「農山村は消滅しない」のテーマで、日本創成会議の「地方消滅論」を徹底的に批判する。過疎化が進んだ中国・四国地方の取り組み事例を基に、若者やファミリー世代の「田園回帰」志向が強まっていると指摘。特に子どもの数が増えている町村が見られ、それも「田舎の田舎」で顕著な傾向がある。 年齢は20〜30歳代で、「団塊の世代」は少なく、夫婦の移住や単身女性、シングルマザーなどの女性割合が増えている。圧倒的に単身男性だった従来の傾向と異なる動きだ。小田切教授はこれを「一世代飛び越し型Uターンつまり孫ターンだ」と言う。
 その上で「移住者などごくわずかな数だという批判もあるが、移住者の質的な意味が忘れられている。昔の小学校校区、JAの範囲で何人家族が入れば、よくなるかを考える必要がある」と、移住者の実数よりも率を優先する創成会議の見方を批判する。
 また、農山村集落の消滅についての総務省の調査で、高齢者率(65歳以上の割合)100%の集落でも10年後の消滅可能性は28・3%に過ぎず、「欧米と違って、日本の集落は意外と強靭だ」と分析する。だが、ある臨界を超えると急激に集落機能が低下し、消滅へのスピードを早める傾向がある。
 このため小田切教授は、農山村地域のつくり直しとして、従来の集落とは異なるコミュニティづくりを提案する。それは、小学校を拠点とする自治組織、小学校児童数を確保するため住民出資の住宅会社、輸送サポートなどであり、さらに共同売店、ガソリンスタント、居酒屋、特産品開発など経済的側面も併せ持つコミュニティである。
 「過疎」(造語)という言葉が生まれた、その50年後に「地方創生」が始まった。田園回帰はこれまでのベクトルが逆向きに動き出したと同教授は見る。



◆批判的農家遠ざけずに

 JA安房の仲野氏は「改めてJAの存在意義と家族農業の価値を考える」のテーマで問題提起。
 同氏は、今後もJAの広域化が進むと分析し、組合員と役職員の関係の希薄化を懸念。組織運営で役職員に求められることは、「組合員との対話機会づくりの一層の努力だ」と言う。
 ただ、広域化とスタッフの不足によって、個々の対話には限界がある。農家組合や女性・青年部などの協力組織や生産部会、農業法人などの事業組織にとどまらず、集落全体を捉えた地域活性化の土台づくりに取り組む必要があると言う。
 また、組合員とJAのつながりでは、農産物の直売の強化をを挙げる。だが、JA安房のある房総半島は、「道の駅」などの農産物直売所が多いが、首都圏の観光客を見込んだ産直のためにマーケティング戦略がないという。このため「農家の経営を満たせず、20〜30%の売上げ増にとどまっているケースが多い」と指摘する。
 JAに対する組合員の信頼性を高めるには、情報の伝達が基本だが、総(代)会資料も集落組合に1冊回覧されるに過ぎないという実態を挙げ、「総代会前、組合員に議案書を配布して賛否をまとめ、JAの経営(事業)に反映させるのが当たり前だが、そうなっていない」と嘆く。その上で「今後、総代や地区説明会のあり方を再考すべきではないか」と問題提起した。
 次世代の組合員対策では、JAに対する批判も甘んじて受けるべきだという。「協力的でない農業後継者を通り過ぎて、実績の上がる組合員に視線が向くようでは困る。20年、30年後の組合員を育てるには、多少我慢することも必要。正確なJA情報を根気よく伝える覚悟がいる」と言う。
さらに家族農業の価値については有機栽培の農業出荷法人などを紹介し、JAは多様な販売に挑戦するべきだと指摘した。


◆果樹作への参入を支援

 JC総研の和泉客員研究員は農業への新規参入の現場の取り組み事例を基に、「農業の人材確保のためにJAは何をなすべきか」のテーマで報告した。いずれも新規参入者には、JAや地方自治体の支援が大きな役割を果たしているが、そのやり方はさまざま。
 岡山県の井原市では一定の技術が求められる果樹(ブドウ)の新規参入が多く、JAや市、部会が参入者に、実績があり、確実に収入が見込める小松菜の栽培を勧め、スタート時のつまずきを防ぎ、定着できるよう誘導している。また、山梨県では独自に果樹の就農支援している法人がある。支援をうけるのは農家の子弟で、生産を手伝いながら栽培の技術、ノウハウを取得し、就農の場合の農地は自ら開墾する。
 さらに、宮崎県JA宮崎中央の新規就農支援は7年間で67人の新規就農者を育成。野菜ハウス確保のため、入植ハウス団地を建設し、新規就農者にあてている。こうした取組みで管内の新規就農者の経営面積は17haに達し、遊休農地の解消に貢献しているという。
 JAのなすべきことについて和泉研究員は、「独立就農を志向する新規就農者が自立するまで10年はかかる。「営農、経済事業、信用・共済という総合力を駆使し、定着するまで支援が必要」と指摘する。  
 また「農村の女性は全員が新規参入。その支援がない」「有機農業新規参入希望者の受け入れ先(特に法人)がない」などの問題点を挙げた。


◆JA情報の提供不十分

 ディスカッションでは、組合数が増えた中で、JAの情報提供のあり方が取り上げられた。JA役員OBからは「役員を辞めて、これほどJAの情報が伝わらないか。愕然とした」という声もあった。さらに、「役員になっても定款が渡されていないケースがあるのはなぜか」など、JAの経営姿勢を疑問視する意見もあった。
 経済事業改革について、部門別の収支の均衡の是非や、実現方策の難しさが取り上げられた。さらに農業のあり方では、経済至上主義への疑問が投げかけられ、「日本伝来の家族経営を見直し、成り立つための研究が必要ではないか」という意見があった。また、JAの事業は組合員組織の人だけではなく、若手の農業者にもっと働きかける必要があり、そうした人を対象とした融資の返済方法など、状況に合せた細かい対応が必要だとする発言があった。

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