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JAの活動:歴史の転換期にみる人づくり

【歴史の転換期にみる人づくり・童門冬二氏】(3)「個人の力を協同パワーに」木下藤吉郎2014年12月17日

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【童門冬二氏 / 歴史作家、JA経営マスターコース塾長 】

・納得させて塀を修理
・長短槍の試合で証明
・三段構えで集団戦法

 一人でできることには限界がある。二人、三人と力を合わせると、足し算から、二乗、三乗の大きな力が期待できる。童門冬二氏は、そこに協同組合と通じるものをみる。木下藤吉郎(豊臣秀吉)は、織田信長に仕えた清州城時代にこのことを実践していた。

 豊臣秀吉は尾張(愛知県)の農村に生まれ、農民の子から関白太政大臣にまで出世した。日本でも珍しい立身ぷりだ。しかしかれは、決して自分の能力だけで出世したわけではない。かれの特性は、
「多くの協力者の能力を、組織的に協同させた」
という点にある。これは戦国時代では珍しいケースだ。戦国時代はだれもが“一国一城のあるじ”をめざした。したがって、あくまでも「自分自身の能力(個人の能力)」に頼り、それを発揮することで立身していった。かれは自分の能力の限界を知っていた。世の中では、多くの人が自分の能力を掛け算にして新しい力を生むことが大事だ、と思っていた。そういうエピソードが、まだ織田信長に仕えていたころの木下藤吉郎時代にたくさんある。

 

◆納得させて塀を修理

 いくつか紹介しよう。
 織田信長は当時、清洲城に住んでいた。あるとき、台風がこの地方を襲って清洲城を囲む塀が全部倒れてしまった。当時の信長は孤立無援の状態で敵が多かった。
 「このままにしておくと、敵に攻めこまれる」と不安を感じた。そこで普請奉行に修理を命じた。が、なかなか工事がはかどらない。気の短い信長は普請奉行をクビにし、代わりに木下藤吉郎に修理を命じた。藤吉郎は現場にやってきてつぶさに状況を検分した。労務者が百人ばかりいたが、一向にやる気がない。ただただ仕事をしている。秀吉は近くにいた労務者にきいてみた。
 「なぜ工事を急がないのだ?」。きかれた労務者がこう答えた。
 「いつまでに、またなんのために塀の修理を急がないかわからないからです」「……」。
 労務者の答えに藤吉郎は感じた。それは「普請奉行が仕事の目的をなにも説明していないからだ。ただ、急げ、急げと急き立てただけだ」と思った。そこで秀吉は改めて全員を集め説明した。
 ・なぜ塀の修理を急がなければならないかといえば、清洲城は敵に囲まれている
 ・その敵がいつ攻めてくるかわからない。そのとき被害を受けるのは武士だけではない。おまえたちの家族もみんな殺されてしまう
 ・だから、おまえたちは自分の心配だけでなく家族の心配もして塀の復旧を急げ
 これは現代でもおなじだ。働く人はまず、
 「なんのためにこの仕事をやらなければならないのか?」と思い、同時に「この仕事を仕上げると、自分はどういう得をするのか?」と考える。つまり、仕事をヒトゴトでなく自分のこととして考えるような説明をする必要があるのだ。そうしなければ、モラール(やる気)が起こらない。秀吉は貧しい農民の出身だから、小さいときからそのことをよく知っていた。同時に藤吉郎は、
 「働く者の立場に立ってものを考えなければダメだ」と考えていた。藤吉郎の「塀を早く修理しないとおまえたちの家族も殺されるぞ」という説明は労務者たちを納得させた。労務者たちははじめて、
「塀の修理が、自分の家族にもかかわりがある」ということを知ったのである。さらに秀吉は、壊れた塀の工事箇所を十か所に分けた。百人の労務者を十人ずつ割り当てた。だれとだれが組むかは自分たちで相談しろ、といった。嫌いな者同士がおなじ組に入っても、いがみ合っているばかりで工事が一向に進まなくなるからだ。そのへんの機微を、藤吉郎は人間通だったからよく知っていた。そして最後に藤吉郎はこう告げた。
 「十組のうちで、いちばん早く修理を仕上げた組には信長様から褒美をもらってやる」。これには労務者たちはおどろいた。信長は気が短く、上ばかりみているので身分の低い労務者たなどのことは気にしていないと思っていたからである。これが功を奏し、労務者たちは競い合って塀の修理に勤しんだ。塀は一晩で全部元に戻った。信長は感心した。「サル、なかなかやるな。おまえの希望どおりいちばん早く仕上げた組に褒美をやろう」といった。このとき藤吉郎は「いや、全員にお与えください」と告げた。

 

◆長短槍の試合で証明

 またあるとき、信長が「槍というのは長いのが得か、短いのが得か」ときいたことがある。槍奉行の上島主水は「それは短い槍に限ります。長いと扱いにくく、まごまごしているうちに敵に殺されてしまいます」と答えた。信長は藤吉郎に向かい「サルはどう思う?」ときいた。藤吉郎は、「長い槍に限ります」と応じた。信長は議論が嫌いだ。そこでこういった。
「上島と木下にそれぞれ五十人ずつ足軽を預ける。上島のほうは短い槍、木下のほうは長い槍で三日間訓練をせよ。そして四日目にこの城の広場で試合をしろ。そうすれば結果が出る」クールで現実を重んじる信長らしい考え方であった。それぞれ訓練に入った。上島のほうはその日からいきなり槍の扱い方を教えた。しかし、槍を持ったことのない足軽たちはまごまごした。上島は怒る。そして片っ端から体罰を加えて訓練を急いだ。みんなやる気を失った。しまいには、
「槍の試合は木下さんに勝ちをゆずろう。うちのお館(上島)のような教え方では、まったくやる気がなくなるよ」と文句をいった。同調者がたくさん出た。こうして上島隊は、完全にやる気を失ってしまった。
 反対に藤吉郎のほうはいきなり訓練には入らなかった。塀の修理でもおなじだったが、かれは足軽たちが、
「いったい、いまなんのために槍の試合などをやるのか?」ということを納得しなければ行動に移らないことをよく知っていた。そこで藤吉郎は全員を自分の家に呼び、安い酒でもてなしながら説明をした。
・主人の信長様は、早く合戦をこの国からなくして平和な日本にしたいと思っておられること。
・そのためには、いまのような合戦方法では、いっまで経っても合戦が終わらないこと。
・そこで信長様は合戦の終結をスピードアップするために、いま上方から大量の鉄砲を買いこんでおられること。
・この鉄砲を扱うのはおまえたちで、我々幹部ではない。
・鉄砲は俗に“飛び道具”といわれるような危険な武器だ。したがって、扱い方を間違うと味方が味方を撃つようなことになってしまう。
・だから、槍の訓練はそういうことがないように、みんなが心をあわせて“協同の心 協同のきもち”になって、個人が技を兢うのではなく、全員が揃って撃てるような気持ちと技を身につけるためにおこなうのだと説明した。みんな納得した。

 

◆三段構えで集団戦法

 そして全員が、
「木下様はエラい。謙虚だし、われわれの力を大事にしてくれる。おれいに試合に必ず勝とう」と決意した。しかし、秀吉のいう“協同の心と技”をどうすれば身につけることができるかがまだわからない。代表がその技を教えて欲しいと申し出た。
藤吉郎は、
「それではみんな庭に出ろ」と命じた。藤吉郎は五十人の足軽を三列に編成し直した。十七人、十七人、十六人の列である。そしてこう命じた。
 「試合の日は、最前列の者は槍を振り回して敵の足を払って倒せ。それがすんだらすぐ一番後ろへ下がれ。二列目の者は、ひっくり返っている敵の頭をぶん殴れ。そして三列目は、念のため突き倒せ」。
 みんなは呆れた。代表が「そんなことをすれば敵も怒って突いてくるでしょう」といった。藤吉郎は笑った。
「おまえたちも知っているとおり、向こうの槍は短い。こちらまでとても届かない」
 これにはみんな大爆笑した。当日の試合で、木下勢が勝ったことはいうまでもない。そしてこのやり方は、その後の長篠の合戦で活用される。三千人の足軽隊が鉄砲を持ち、三列に分かれて一列ずつ射撃した。この当時の鉄砲はまだ1発しか撃てないので、弾ごめの時間が必要だったのである。そのために、藤吉郎は三段構えにしたのである。
 現代でも、アメリカのATTでおこなわれた“ホーソン・リサーチ”というのがあるが、これがまったく藤吉郎の槍の試合とおなじだ。ホーソン工場の工員がいっせいにモラール・ダウン(やる気失い)したときに、ハーバード大学から教授がきてその原因を調べた。調査結果、工員たちが、
「いまの仕事はいったいなんのためにやらなければいけないのか、そしてやった結果が会社にどう役立つのか」ということをまったく知らなかったからである。教授の助言によって、工場長はこの説明に重点をおくようになった。そのため、工員たちのやる気がいっせいに湧きあがったという。まったく、藤吉郎の槍の試合のケースとおなじで、働く者は常に、
「なんのために」ということを納得しなければ、この“協同の心”はなかなか持ちにくいのだ。

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