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シリーズ:JAづくりは人づくり

2016.07.11 
サービス事業体に徹する 阿部雅良 宮城・JAみどりの代表理事専務一覧へ

 JA事業に欠かせないのは、それを遂行する「人」である。JAみどりのは、企業的感覚を取り入れた独特の人材育成方法を導入。法人を核としながらも、それぞれの階層に応じた営農指導体制の確立を目指している。阿部雅良専務に聞いた。

◆JA出資法人設立 モデル経営を示す

 ――水田地帯ですが、地域農業の将来ビジョンをどのように描いていますか。

阿部雅良 宮城・JAみどりの代表理事専務 6月に開いた総代会で平成28年度からスタートする第7次中期3か年計画の承認を得ました。この中にJA出資型法人(農地所有適格法人)の設立があります。資本金1500万円でJAが95%の出資です。
 ここで青ネギを栽培する予定です。露地で20ha、施設で2700平方メートルを計画しています。JA自らが農業経営に参画して地域の担い手となり、地域農業を守り、農業者と連携して農業の価値を生み出し、さらに新たな担い手の育成をめざします。
 管内には56の法人があり、米、大豆、麦を中心とした土地利用型の農業はある程度定着しているので、これからは園芸に力を入れる方針です。農地はこれから確保しますが、農地や空きハウス、レンタルハウスなども有効利用し、地域を引っ張り、元気にするモデル的、けん引的な法人として育てていきたいと思っています。

 ――ほかに中期計画ではどのような重点課題を挙げていますか。

 計画遂行には魂を入れることが必要です。農業、地域、組織・経営の3つを重点戦略課題として掲げました。農業は「農家の経営力強化と地域農業の活性化、マーケティング戦略の展開」、地域は「人々の暮らしに寄り添う事業展開と地域の活性化、協働の輪づくり」、そして組織・経営では「元気で、前向きで、健康的なJAの組織・経営をめざして」としています。
 総代会ではこの3つの重点戦略課題を、それぞれ色分けした分かりやすい冊子をつくりました。農協はサービス事業体です。
 具体的に目標を示して、組合員にわかりやすくすること、これが大切なことです。

◆研修で他企業調査 経営の本質を学ぶ

 ――事業を展開していくうえで大切なことはなんでしょうか。
 
 「組合づくりは人づくり」と言われます。それはサービス事業体として徹底して組合員の営農・生活を支援し、常に組合員とともにあることを忘れないことです。
 JAでは各部署から20、30歳代の職員15人ほどを選び、1年間の研修を行っています。内容にはドラッガーの経営論もあります。仕事上のノウハウだけでなく、経営の本質を理解しないと、これから何をやったらよいかわからなくなります。経営上の単なる部品でなく、全体を見る目を養うことで、自分の立ち位置や役割を理解することができます。
 こうした勉強を半年ほどこなし、3、4人がチームを組んで、郵便局や銀行、商工会、ホームセンターなど、地元の企業や団体の調査を行い、管理職や役員の前で報告させます。質問や意見交換することで問題が深堀りされ、情報の共有化、問題意識の広がりが期待できます。講義などのような一方的な研修では得られない効果があります。若い職員の活用は、職員全体の刺激にもなります。

 ――画期的な研修だと思います。取り入れたきっかけは。

 JAの役員になる前、農業法人、有限会社の社長として県の中小企業同友会や倫理法人会などとのつきあいがあり、その中で気付いたことです。そこで教えられたことは少なくありません。
 経営・組織を樹木に例えると「見えるもの」(幹・枝・実)と「見えないもの」(根)があります。その根は、経営・組織では「経営理念」です。「良樹細根」(りょうじゅさいこん)と言います。つまり大きな樹木は、その幹や枝に負けず劣らず、立派な「根っこ」を持っており、そのような木は、必ず良い木になるということです。人間も組織も同じです。
 有限会社では土木事業もやっていました。倫理法人会の活動で、他の企業の役員と一緒に便所掃除などを行うなかで、人間としての生き方に気づかされました。それまでは、社員は会社の部品としか考えていませんでしたが、社員あっての会社だと思うようになりました。
 社員をパートナーと認めると職場環境が変わり、社員から、事業や職場改善など積極的な提案が出るようになりました。そういうことがあって、JAでも人づくりの大切さを感じ、力を入れてきました。

◆感動・笑い・愛が「人」を豊かにする

 ――JAに求められる職員はどのような人材でしょうか。

研修成果を発表する若手職員 経営には人、物、金、情報、スキル、時間、ネットワークの7つの要素が必要だと言われます。この中で特に重要なのは人のつながり、ネットワークであり、コミュニケーションではないでしょうか。それによって「感動は人を変える・笑いは人を潤す・愛は人を豊かにする」ことができるのであり、これができるのは人間だけです。
 中期計画でアクション・キーワードを掲げました。感謝、信頼、革新、笑顔、協働、貢献の6つです。このなかでも、「革新」のために「役職員は読書し、情報を集め、議論し、学習する組織文化をつくろう。そしてイノベートする組織めざそう」とうたっています。全役職員がこれを常に心がけ、意識して行動するようになって欲しいと思っています。
 また朝のあいさつも、お互いがやりあえば話し合いであり、立派なコミュニケーションです。JAの経営はコミュニケーションそのものです。「声がけは、肥(こえ)がけ」です。

 ――これからJAが進むべき方向は。

 農業振興のための力をつけるときだと思います。サービスに徹するには内部留保も必要です。そしてJAの将来を担う人を育てるとともに、農家の所得増大、農業の生産拡大、そして地域の活性化に取り組まなくてはなりません。とくに食と農を基軸に地域の人々や消費者と連携し、地域になくてはならない組織をめざす必要があります。
 そして、一連のTPP(環太平洋連携協定)交渉でも明らかになったように、アメリカの狙いはJAが持つ共済・信用市場にあります。この企てを排除するためにも、JAや協同組合はもっと、その立場をPRするべきで、そのための広報活動を強化しなければなりません。

◆より高いスキルで法人ニーズに対応

 ――法人協会の代表でもあります。法人とJAの関係をどう考えますか。

 管内には56の法人と88集落営農がありますが。これから法人が販売高の相当部分を占めるようになります。そしてその社員が正組合員になります。それをJAがどう扱い、どんなサービスするかが問題です。
 農家によっては有機栽培や副業的経営もあるでしょう。しかし農業生産の核となる20~30haあるいは100haの農家も育っています。こうした法人は、いわばJAのパートナーです。これに対してJAがどのような支援・サービス提供ができるかがポイントだと思います。
 職員に対して、MBA(経営学修士)の資格をとれるようにしたいと思っています。それができると組合員に対して最高のサービスが提供できます。法人はこれからどんどん増え、経営面で支援を求めるニーズが高まります。ヒト・モノの支援が一層必要になります。農協の生きる道は農協の原点であるサービス事業、それに向かって前進することです。
 営農指導では、中期計画で個別対応を核とした指導体制への移行を掲げました。農業所得750万円以上・またはそれを目指す農家をA群として重点指導する。現状維持の農家・若しくは規模拡大を希望する農家をB群として個別・組織的指導する。そして直売所出荷農家をC群として、集団・集合指導するようにしました。
 農家の階層に合わせたサービスです。こうした組合員の実情に対応できる人材の育成の面で、最近、その成果が出てきたように感じています。

(写真)研修成果を発表する若手職員

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