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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.02.23 
准組合員の位置付け明確に 新世紀JA研究会一覧へ

活動参加者ほど親しみ
基礎組織の再構築急げ
小山良太 福島大学経済経営学類教授

 新世紀JA研究会の「総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナーは、これまで公認会計士監査、信用事業譲渡等について議論してきたが、第4回セミナーでは准組合員問題をテーマに、京都府JA京都にのくにの「准組合員総代」についての報告と、JC総研のアンケート結果をもとに分析した組合員のJA事業利用の状況の報告を使って意見交換した。明田作氏、JA京都にのくにの迫沼満壽専務、福島大学教授の小山良太氏の報告と、それについての討議内容を紹介する。(明田氏報告とJA京都にのくにの取り組みは文末にリンク)

◆矛盾する2面性

小山良太 福島大学経済経営学類教授 農協の組織を改革するというのはどういうことなのでしょうか。田代洋一氏は『協同組合としての農協』(筑波書房、2009年)において、農協の協同組合としての特性を、エンタープライズ(enterprise=事業体)、アソシエーション(association=組織体)の2つの矛盾した構造を内包する点にあると指摘しています。しかし、株式会社等の営利企業とは異なり、協同組合の上位概念はアソシエーション(組織)であり、組合員組織の有無こそが農協、ひいては協同組合の最大の強みです。
 それゆえ、協同組合において組織基盤であり、事業基盤でもある組合員を農協の運営方針の中でどのように位置づけるかは常に重要な課題です。しかし、その内容は時代の変化の中で様変わりしてきました。現在、多くの農協で員外利用規制対策として准組合員が新規加入しています。しかし、その対応方向、組合員の位置づけを明確化するのに苦慮しているのが現状です。
 組合員メリットを経済的メリットに限定化すれば、ことは簡単ですが、経済的メリットの優位性が消失した瞬間に組合員である意味がなくなります。
 例えば、他の金融機関よりも農協組合員になって農協信用事業を利用すると金利が優遇されるというケースがあったとします。その場合、金利のメリットのあるうちは優位性を発揮できますが、他の金融機関が同水準(あるいはより有利な)の金利を設定してきた場合、経済的メリットのみの関係であれば、事業「利用」を切り替えることが可能です。
 事業を利用しないのであれば、その組織に「加入」している意味はありません。それでも加入を続けるとしたらそこに「参加」している意味を付与することが必要となります。増田佳昭氏が『JAは誰のものか』(家の光協会、2013年)で指摘したように、組合員と農協の関係は、(1)認知、(2)利用、(3)参加、(4)参画の段階があり、事業体として(2)利用促進のみを強化しようとしても、協同組合という企業形態の優位性を発揮することは将来的には困難となります。

◆「組織体」の意識も

JA組合員アンケート調査 2016年度にJC総研が実施した「JAの体系的な組合員政策に関する研究会(研究代表・増田佳昭)」では、水田、都市近郊、園芸産地の3つの農協を対象にJA組合員アンケート調査(正組合員、准組合員各2000戸調査)を行いました。
 この速報結果(西井賢悟)によると、農協の事業利用(特に複数利用)と相関が高いのは、「JAに親しみを感じている」「JAと一般企業の違いを理解している」という項目でした。つまり単なる事業利用者の域を超えて、農協の何らかの活動(生産部会や生活文化活動など)に参加することで得られる親しみや、株式会社など営利企業とは異なる協同組合としての理念を理解している本来的な組合員が、その自己の欲求を実現するために事業を利用するという協同組合の根源に立ち返る組織像がみえてくる。すなわち組織体としての農協の姿です。
 一方で、JA全中『平成28年度全JA一斉調査』(2016年4月、659農協)では、組合員組織に関する設問において、集落組織(基礎組織)を把握している農協数は63.8%(速報値)でした。逆にいうと36%の農協が基礎組織を把握していない、あるいは把握するすべを持たないという現状があります。これは広域合併とそれに伴う支所・支店の統廃合、組合員組織の大型化の中でより顕在化しうる課題です。

◆「資格」問題直視を

 農協は協同組合としての組織基盤を再構築できるのか、正准を含めた組合員とはどういう位置づけなのか、その欠落部分を外部から突かれているという現状に真正面から対峙する覚悟が必要です。組合員組織とその資格問題こそ直視しなければならない課題であり、その解決は外圧ではなく「自己」改革でのみ実現し得ます。
 「農業・農協改革」問題に関して、率直に言って、現状分析を少しでもしたのかと問いただしたい。政策とは何かと問われれば、徹底した現状観察と分析の結果、課題を析出し、現実の社会・経済に広く利益が還元される方法で、政策を立案し運用していく体制を構築することにほかなりません。都市農協は金融・不動産、農村部はコメ兼業農家の集荷農協などといったステレオタイプな農協像は既に過去のものです。

◆地域で存在感増す

 都市部でも直売所や組合員活動を通して地域との繋がり深めている農協が全国に存在しています(JAひまわり、JA兵庫六甲など)。農村部においてもいわゆる米肥農協から脱却し、果樹・園芸産地の形成や独自の農産加工などを行うマーケティング型農協の展開も盛んです。特に中山間地域では、担い手不足、農業労働力の高齢化に対応し農協が直接営農支援を行う取り組みや、時間をかけて本格的な集落営農を展開する地域など、むしろ農協組織の存在感が増しているのが現状ではないでしょうか。

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